2015年09月30日

アベノミクス第2ステージというけれど...

 世界経済の減速が日本経済にも暗い影を落としています。この影はどんどん大きくなっていて、いつ終息するともしれません。最も影響を受けているのが、株式相場です。

『株価1万7000円割れ 700円超下落』(9月29日 NHK)http://goo.gl/W1rvBi
<日経平均株価、29日の終値は、28日より714円27銭安い1万6930円84銭で、終値としては、ことし1月以来、およそ8か月ぶりに1万7000円を割り込みました。>
<市場関係者は、「(中略)背景には中国をはじめ世界経済の先行きに対する警戒感があり、当面、日銀の短観やアメリカの雇用統計などの経済指標をにらみながらの神経質な動きが続きそうだ」と話しています。>

 アベノミクスが指導してからここ3年、消費増税で多少の停滞はあったものの、海外市場で下落した時には東京市場がストッパーとなって株安の連鎖を止めていました。しかし、ここへ来て日本の経済も変調をきたし、ストッパーの役割を果たせなくなってしまいました。消費増税以後、個人消費が落ち込んだまま思ったほど回復せず、家計部門の冷え込みが目立つ一方、企業の設備投資等は堅調と言われてきましたが、ここへ来て企業セクターにも陰りが見えてきています。

『鉱工業(生産・出荷・在庫)指数速報(平成27年8月分)』(経済産業省HP)http://goo.gl/KP7S5S

 生産・出荷は前月比マイナス0.5%。一方在庫は0.4%の上昇となりました。
まさに内憂外患。中国ショックやドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンの不正問題に端を発したVWショックなど、外的要因は突然やって来ますし我が国のコントロール下にはありません。それだけに、我々としてはせめて国内経済を持ち上げておいてショックに備えることが重要です。安保法制が成立し、次は経済と明言している安倍政権。一体どんな経済対策を打ち出すのかと注目されてきましたが、先日会見で「新三本の矢」が発表されました。

『安倍晋三総裁記者会見(両院議員総会後)』(9月24日 自民党HP)https://goo.gl/7ZdY5U
<第一の矢、『希望を生み出す強い経済』。
第二の矢、『夢をつむぐ子育て支援』。
第三の矢、『安心につながる社会保障』。
希望と、夢と、安心のための、「新・三本の矢」であります。
アベノミクスによる成長のエンジンを更にふかし、その果実を、国民一人ひとりの安心、将来の夢や希望に、大胆に投資していく考えであります。>

 旧三本の矢は3つすべてがデフレ脱却・経済再生をターゲットにしていました。今回の三本の矢は、いわば旧三本の矢を第1の矢「強い経済」にまとめてしまったようです。具体的には、

<GDP600兆円の達成を、明確な目標として掲げたいと思います。
そのために、雇用を更に増やし、給料を更に上げて、消費を拡大してまいります。>

と、数字を挙げて力説しています。このGDP600兆円を2020年までに達成するには、内閣府がはじいている財政健全化目標の名目成長率3%増を毎年達成し続ければ可能です。しかし、目下はむしろ4半期ごとの数字ではマイナスに落ち込むタームもある始末。まず足元の2015年度を底上げするために、今年度補正予算を早急に組む必要があります。通常国会が先日閉会したばかりですから、次に行われるのは秋に予定されている臨時国会。こで大規模な補正予算を早急に成立させ、景気後退は許さないという政権の姿勢を内外にアピールすることが重要です。その時に、タイミングを一にして追加緩和も行えればさらに効果的なんですが、この臨時国会が果たして11月に開かれるかどうかも微妙なようです。ある政界関係者が解説してくれました。

「そもそも秋の臨時国会は、夏に妥結するはずだったTPPに関する審議が中心だったんだ。それが今になっても妥結に至っていない。10月に妥結したとして、11月の臨時国会でそれをいきなり審議するというのは日程的に非常に窮屈だ。その上、安保法制で与党内はもう疲れ切っていて、またすぐに国会を開くのは勘弁してくれっているムードがあふれている。安保法制審議の記憶が生々しいうちに国会を開いたら、内閣改造の直後でもあるし、新任大臣を中心にまた野党からいろいろ追及されて痛くない腹を探られるのも避けたい」

 TPPが漂流した場合、臨時国会自体を開かずに年を越し、1月の通常国会の開会を早めるというプランも浮上しているそうです。となると、補正予算の成立は来年2月...。経済がグローバルにつながり、瞬時に事態が変動する現代。この半年の遅れが致命傷につながらなければいいんですが...。経済政策も国内政局に翻弄されています。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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