2015年09月07日

防災取材メモ

 先週の土曜日、恵比寿ガーデンプレイスで行われた公開生放送の特別番組、『ラジオで安心 みんなの防災2015』。お越しいただいた方、聞いてくださった方、どうもありがとうございました。

 私は番組内で中継レポートと、取材レポートを担当しました。取材レポートで取り上げたのは、警視庁の警備犬についてと、小さな子供を抱えるご家族がどういう防災をすべきなのかという2つ。警備犬については、都内多摩地域某所にある訓練施設に伺って、訓練指導を行っている警備部の山川警部の説明を受けながら見学してきました。

 警察には大きく分けて2つのジャンルの警察犬がいます。現場の遺留物の匂いを嗅いでそれを追跡する「捜査犬」と、犯人の制圧や爆発物の捜索などを行う「警備犬」です。それぞれ向いている性格が違うそうで、細かな匂いを嗅ぎ分ける捜査犬は細かい性格の方が向き、犯人に向かっていくこともある警備犬は明るい性格、やんちゃな性格の方が合うそうです。今回はその中でも、「警備犬」を取材してきました。

 警備犬の役割は大きく3つあって、先ほど挙げた「爆発物の捜索」「犯人の制圧」に加えて、「災害救助」も入ります。これら3つの異なる任務をこなすことができるということを勘案し、犬種は「ジャーマンシェパード」と「ラブラドールレトリバー」が選ばれています。基本的には一頭の警備犬に対し、その訓練士であり相棒にあたる「ハンドラー」が一人、就くそうで、このペアは警備犬が引退するまで解消されることはないとのこと。まさに一蓮托生の関係ということで、それゆえ最初は泊まり込んで24時間一緒にいて関係を作るそうです。

 私も犬を飼っていますので、訓練の様子を見ていて感嘆しました。常に訓練士の左側を歩くだけでも「ウチのとは違うな~」と思いながら見ていたんですが、訓練士と犬の間が開いてもリモートコントロールが効くというのに驚きました。
 20~30m先にいる犬に「待て!」と声を掛けるとじっとしています。そして、指示を与えると犬は右に左に走りだし、一本橋を渡ったり、戻り、訓練士の前を通ってそのまま反対側に行き...。まさに自由自在。
 さらに、爆発物の捜索訓練、災害救助で要救助者をがれきの中から探す訓練なども見せてもらいましたが、それらの任務を首輪を変えることで認識すると聞いてまたビックリ!災害救助の時には鈴のついた首輪をつけるんですが、つけるともうスイッチが変わるんだそうです。
 匂いを頼りに人を探す。そのため、風を読んで風下から犬を放つ。すると、ものの20秒くらいで見つけ出します。犬の嗅覚は人間の5000倍。その能力をまざまざと見せつけられました。

 この取材では警備犬の能力に驚きまくりだったんですが、最も驚いたのがこちらの写真です。
警備犬取材.jpg

 まず犬はハシゴを上りません!こういった下が中空で見えるようなものは嫌いなはずなんです。ウチの犬なんて、側溝のグレーチングやスノコも苦手で飛び越えますからね。その上さらに、猫のように幅5センチほどの塀の上を歩いてUターンまでしてくるんですね。
 これ、一つ一つ訓練士がここに足を置くんだよ、次はここだよと教え込んであげるそうです。時々失敗して塀から落ちてしまうこともあるそうなんですが、大事なのはその時に失敗したまま終わらせないこと。必ず成功するまで続けて、成功体験を持たせるんだそうです。でないと、塀を見ると苦手意識で逃げてしまうようになる。災害救助の現場では不得意な分野があってはならない。ん~、なんだか子育てにも通じる話だなぁと感心してしまいました。

 もう一つ取材したのが、「子連れ防災」。NPO法人「ママ・プラグ」が企画した「子連れ防災手帖」という本をもとにレポートしました。この本は、東日本大震災が発生した時に、小学生以下の子を持つお母さんが、どう過ごし、何に悩み、何に苦しんだか。
812人のいわゆる「被災ママ」の体験と教訓をまとめた本なんですが、私にとっては目からうろこの話ばかり。というのも、自分が現在乳飲み子を育てているということが大きいんですが、特に発災後数日の体験は非常に勉強になりました。たとえば、

・二歳の子供が乾パンを食べてくれない。緊急時で気が動転していて、「ふやかして食べさせる」という事すら思いつかない。
・粉ミルクを溶かそうにも、お湯が無いから、常温の水でなんとか溶かした。
・母乳で育てていたが、ストレスで母乳が出なくなった
・避難所で、小さい子供が泣いたりすると、居づらくなる。結局、半壊状態でも自宅に戻らざるをえない。
・子供が、人形を使って「地震ごっこ」をしているのを見て、こっちがパニックになり、どうしていいか分からなかった。

 この最後の例では、子供にとっては「地震ごっこ」をするというのも気持ちの整理をつけていく上である程度自然なこと。「やめなさい!」と怒ることなく、そういうものなんだと受け入れられる気持ちの余裕が必要だということです。問題は、それを被災直後の精神状態の中でできるかということ。突然そういった事態に直面しても対応できない。そこで「こうしたことがあるよ」というのを本で読んで追体験しておくことが重要なんだそうです。

ママ防災写真.jpg
これらの本は、アクティブ防災のHP(http://www.active-bousai.com/)で購入可能です。

 たしかに、普段の生活では気づかないことばかりでした。歩けない乳飲み子を抱えていてはっと気づかされたのは、被災直後はベビーカーNGということ。少し考えればガレキが散乱していて使えないというのは考え付くんですが、普段使っているとその便利さを優先してしまいますよね。子供を連れていると荷物が増える。避難するときも重い子供や荷物を乗せたくなります。ところが、震災の現場では出したはいいけれどすぐ使えないことに気付いたという声が多かったそうです。だから、防災キットの中に抱っこひもは必ず入れておいた方がいい。少し歩ける2歳児3歳児でも、足場が悪いことが多いから結局抱っこすることが多い。油断せずに、多少子供が大きくても抱っこひもは必要なんだそうです。

 以上、犬と子供、ほとんど自分の興味で取材に行ったかのような防災レポートでしたが、やっぱり感じたのは「考えておくこと」の大切さです。番組の中でも辛坊治郎さんが強調していらっしゃいましたが、シミュレーションをしておくかしないかで身の振り方が全く違う。大げさに言えば、生死を分ける可能性すらある。身を守るために、一人一人がシミュレーションをしておかなくてはいけませんね。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

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