2015年08月25日

災い転じて福となす

 中国発の世界恐慌か?上海市場の急落に端を発した株安が止まりません。世界中の株式市場が開くたびに下落を繰り返しています。もちろん、日本もこの株安の連鎖から逃れることができず、日経平均株価は6日続落となっています。

『株価乱高下 世界的株安の連鎖に歯止めかからず』(8月25日 NHK)http://goo.gl/qiXsCo
<世界的に株価の急落が続くなか、25日の東京株式市場では、日経平均の1日の値動きの幅が1000円を超えて激しく乱高下し、結局、終値は700円以上の大幅な下落となって1万8000円を割り込みました。世界的な株安の連鎖には東京市場でも歯止めがかかりませんでした。>
<日経平均株価の終値は24日より733円98銭安い1万7806円70銭でした。日経平均株価の値下がりは6日連続で、この間の値下がりの幅は2800円を超えました。また、1日の下落率はおよそ4%となり、値動きの幅は1000円を超えました。>

 こうした事態を受けて、「アベノミクスは失敗だった」といった批判が相次いでいます。

『世界同時株安:与党に補正待望論 アベノミクス失速警戒』(8月25日 毎日新聞)http://goo.gl/cLfEsE
<野党は批判を強める。民主党の細野豪志政調会長は記者会見で「日本経済はこれまで言われていたよりも厳しい状況だとマーケットが示した。アベノミクスの限界を露呈している」と指摘した。生活の党の小沢一郎共同代表も会見で「一時の安倍人気のメッキがはがれた。そろそろ先が見えた感じではないか」と述べた。>

 しかしながら、この株安・円高はかえってチャンスなのではないかと思っています。4~6月のGDPもマイナスで、この相場の危機。破れかぶれのように見える日本経済ですが、その分平時では大胆と批判されるような施策を取ることが容易になります。具体的には、アベノミクスの再起動をかける大義名分が出来たということです。

 何度も言われている通り、アベノミクスとは第1の矢・金融緩和、第2の矢・財政出動を通じて世の中の「期待」に働きかけて景気を浮揚させ、その間に第3の矢・成長戦略を実行してデフレ脱却を確実にするもの。ところが、このシナリオにはなかった消費増税の影響で景気は低迷。いまだ踊り場にいるというのが、株価下落前の景気に対する見方でした。景気を表す数値はいい・悪いがマチマチ。それだけに、大きな補正予算を組もうものなら「必要以上の過剰な補正だ!バラマキだ!」といった批判を受ける可能性がありました。また、金融緩和をすると円安が必要以上に進んでしまう可能性がかなり高く、日銀当局は躊躇していました。

 今回の株安・円高はそうした懸念を吹き飛ばすだけのインパクトがあるわけですね。今日、ザ・ボイスに出演した内閣官房参与の本田悦朗氏は、
「金融緩和は日銀も考えていると思うが、(物価の上昇の鈍化やGDPギャップの拡大を考えると)真剣に考えなくてはならない時期に来ていると思う」
「補正は中・低所得者向けの定額給付、あるいは子ども手当などの所得手当を行うべき」
「規模は、税収の上振れ、予備費を考えれば3.5兆円程度。ただ、この中国ショックを見ながら積み増すこともあり得る」
と述べています。

 できれば、政府と日銀が協調して、補正予算の編成と追加緩和を同じタイミングで発表し、マインドを一気に変えることが望ましいと思います。というのも、現状では家計の貯蓄性向が高まり、かつエンゲル係数が上昇基調にあって、家計は特に生活防衛、消費切り詰めの方向に流れています。このマイナスのマインドをプラスに反転させなくてはいけません。そのためには、政府・日銀一体でデフレに再転落はしない、させないという不退転の決意を見せる必要があります。円高、原油安に加えて、アメリカの利上げ予想が遠のいた今、追加の金融緩和を行う絶好機。ここに補正予算を加え、第1の矢、第2の矢を連発するべきだと思います。

 さらに言えば、先月ザ・ボイスに出演した安倍総理は消費税の10%への増税について、
「2017年4月の増税を目指すが、リーマンショックのような外的な要因がある場合にはその限りではない」
と述べています。まさにこの世界同時株安は、日本政府の政策の及ぶ範囲を超えている外的要因。本田参与も、
「今回のようなチャイナショック、ギリシャショックなどの外的要因に関しては日本政府としてはいかんともしがたい。もしそういうことが起こってしまえば、再延期はあり得る」
と明言しています。

 補正予算と追加緩和で景気を下支えし、それでもダメなら消費増税の再延期のカードを切ってマインドを変える。この危機を逆手にとって、アベノミクスの再起動。ピンチの後にはチャンスがあるのではないでしょうか?
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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