2015年08月18日

戦後70年談話と日韓関係

 戦後70年談話が発表されました。

『平成27年8月14日 内閣総理大臣談話』(首相官邸HP)http://goo.gl/GMMoXt

 賛否様々言われておりますが、私が興味深かったのは女性に対する言及ですね。

<戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。>
と、戦争の惨禍の下りで言及し、

<私たちは、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、そうした女性たちの心に、常に寄り添う国でありたい。二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。>
と、未来に向けても1項目を割いて言及しました。ここまで時間を割いて言及しているということは、具体的に何らかの動きを世界に示さないと様になりません。特に、未来に向けての項目では女性の社会進出ではなく女性の人権についての言及が中心ですから、当然慰安婦問題が中心となるでしょう。ひょっとすると、自分の手で慰安婦問題も全面解決を目指しているのでは?と思ったわけです。というのも、右派政権だからこそ思い切った譲歩が出来るというのは、アメリカのニクソン共和党政権下での米中国交正常化、元参謀総長であったラビン政権下での中東和平など歴史が証明しています。

 一方で、韓国側にも一部動きがあるようです。韓国政府の対応に大きな影響を与えている、旧日本軍の慰安婦問題を巡る韓国最大の支援団体・韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)という団体が4月に日本でシンポジウムを行いました。4月23日に参議院議員会館で開かれた「『慰安婦』問題、解決は可能だ!」というシンポジウムで、ここに挺対協の尹美香代表らが出席して慰安婦問題解決策について見解を発表したんですが、これを報じた北海道新聞が後に誤報であると認めた騒動がありました。

『慰安婦問題 韓国挺対協「日本に法的責任求めず」は誤報』(GoHoo|マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト)http://goo.gl/u1KkxU

 ただ、これは北海道新聞の当初報道が全面的に誤報であったというわけではありません。このGoHooサイトにも記述がある通り、
<尹代表が賛意を示した2014年6月の提言には、従来要求していた「責任者処罰」は盛り込まれていないが、「国内法・国際法に違反する重大な人権侵害」の認定は盛り込まれており、「犯罪としての扱いは求めず」という記述は不正確といえる。他方、7項目要求にはもともと「立法措置」は明記されていないが、「立法措置も除外した」という表現については誤りと指摘していないことから、国会での立法措置にこだわらない姿勢を示したと解釈することもできる。>
と、一部方針を変更したとも取れる発言をシンポジウムの中でもしていたことが伺えます。

 日韓外交関係者は一連の報道の経緯について、
「現挺対協首脳部にとって本音に近いものだったが、道新の報道直後、挺対協OBから激しい突き上げを食らって誤報と抗議するに至った。本来ならオープンの場での発言を基にした記事なんだから本人が撤回するのが筋だし、道新も即座に白旗を上げなくてもいいと思うんだけど...」
と説明してくれました。

 一部に歩み寄ろうという努力があっても、それが持続しない。日韓間では様々な人たちが解決に向けてあと一歩まで迫りながら、主に韓国国内の反対に遭ってちゃぶ台返しのようにすべてが水泡に帰するということが繰り返されてきました。今回も、仮に日本政府が解決に向けて前向きであっても、韓国側がどこまで国内を抑えることが出来るのか?ここがキーになります。

 私は8月15日に韓国・ソウルに取材に行きましたが、その懸念を新たにしました。日本大使館前での抗議の模様を取材し、市民団体の演説を聞いていたんですが、それを要約すると、
「日本政府はもちろん悪いんだが、そんな日本政府に対して弱腰が過ぎる朴政権も大問題だ」
と主張しているんですね。

IMG_20150815_105156426.jpg
8月15日、ソウルの日本大使館前で抗議活動を行う市民団体

 韓国では、司法・立法・行政・マスコミと並ぶ「第5権力」と言われ、世論や政策決定に対する影響力が非常に強い市民団体がこうも強硬だと、朴政権としても無視するわけにいきません。日本政府が河野談話やそれに伴うアジア女性基金でこの問題の解決を図った当時、革新政権である金泳三大統領であっても市民団体の突き上げを抑えられませんでした。結果、アジア女性基金は機能不全に陥り、当初の目的を遂げることのないまま解散となりました。

 現在の朴政権は保守派なだけに、形勢はさらに不利かもしれません。あるいは、市民団体は当初から反政権なのだから無視して突っ走るという決断がなされれば解決するのかもしれませんが...。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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