2015年07月07日

大延長国会の行方

 安全保障関連法案は衆議院の特別委員会採決が来週行われるのではないか?と野党が疑心暗鬼になっています。今週各地で行われている公聴会でも慎重な審議を求める声が相次ぎ、審議スケジュールが話題の中心になってきています。

 審議入りしてから間もなく2か月。

 その間、話題の中心はめまぐるしく入れ替わってきました。審議の初めは個々のケースを取り上げての議論が行われていましたが、6月の初め、衆院憲法審査会で3人の憲法学者が3人とも今回の法案が違憲であると答弁したことで一気に空気が変わります。

 本来、日本を取り巻く安全保障環境が変化してきたことに対応するために出された今法案。それゆえ議論は、各党派ごとに日本周辺の安全保障環境をどう見ているのか、具体的には中国や朝鮮半島情勢、東シナ海情勢をどう見るのか、そして平和を維持するために現行法で十分なのか不十分なのかということが中心になるべきでした。

 ところが、憲法審査会の一件があってからはそうした具体的な安全保障論はほとんど影をひそめています。特に安保法制に反対を掲げるリベラル陣営は、政党もメディアも「違憲だから廃案」一辺倒。ほとんど議論の余地がなくなってしまいました。対案を出した維新の党も、安全保障環境ももちろん考えているとは思いますが、発表会見の中で強調していたのは、わが党の対案は合憲という部分でした。

『7月3日平和安全特別委員会の質疑で使用した維新の党独自案などのパネルについて』(維新の党HP)https://goo.gl/1KxHqy

 会見の中では、維新の党の対案にある武力攻撃危機事態に伴う武力の行使が集団的自衛権によるものか個別的自衛権によるものかという質問に対して、明確な答えはありませんでした。小野次郎安全保障調査会会長は記者の質問に対し、
「個別的自衛権の範囲内なのか、集団的自衛権に一部入っているのか、学者によっても見解は異なるだろう。ただ、意思決定のプロセスが時の内閣によって恣意的に判断できる点で政府案は違憲で、われわれの案は外形的理由によって判断されるので合憲なのである」
という趣旨の答えでした。また、今井政調会長は与党との修正協議について否定し、
「政府の案はやり過ぎだから、そこは考え直しなさいということで我々の案を出している。修正の協議をしようということではない。哲学は違うが、我々の言っていることに気が付いて政府案をしっかり直してほしい。あるいは我々の案をそのまま飲んでほしい」
と答えています。

 最大の問題は、日本の安全保障環境の変化を出発点にどう対応していくかということで曲がりなりにも法案を提出した政府側に対し、維新はまず現憲法の範囲内であるかということから出発してしまっているということ。これで果たして、現在の中国の膨張に正しく対応できるでしょうか?現憲法が制定された当時とは安全保障環境は様変わりしているのに、憲法の範囲内という枠を先に嵌めてしまっていいのでしょうか?これでは対案が出てきても議論はすれ違うばかりで硬直してしまうでしょう。困ったものです。

 そんな審議状況を見て、今永田町の一部である風が吹きつつあります。そう、解散風。

ある野党議員に聞くと、この国会の雰囲気が郵政解散の時に似ているというのです。このまま審議を続けば続くほど内閣支持率は低下する。9月に入り参院審議がこう着すると、仮に内閣支持率が低下しても政党支持率が高止まりしていれば、つまり自民党への消極的支持があれば、「安保」を大義名分に解散するのではないか?と疑心暗鬼になっているのです。たしかに、前回の衆院選後、野党再編をすべしという声が有権者からも国会議員の側からもずいぶん上がっていましたが、いまだに緒にも就かない有様。候補者調整も全く進んでいない今のうちに、一気に解散に出れば負けはしないだろうと総理が判断しても不思議ではないとその議員は言います。そして、選挙後の国会で廃案になった安保法案を一気に成立させてしまうと言うのです。ま、野党の議員ですから、こうした風を梃子にして野党再編を動かそうという思惑を感じなくもないんですが...。

 大延長国会、これから真夏のドラマがいろいろありそうです。
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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