日本国債の金利が低下しています(価格は上昇)。今日(1月26日)の相場では一時10年債の利回りが0.220%まで下がりました。
<<11:10> 国債先物が続伸で前引け、長期金利0.220%に低下>
このところ、先進各国の国債が軒並み上昇しているわけですが、とりわけ日本の国債については日銀が大量に国債を買い入れる量的緩和を実施しているためだと説明されています。日銀の狙いとしては、国債を買い取ってその分の日本円を市中銀行に供給することで、そのお金を貸し出して、広くお金が世の中に回ることです。銀行は日銀から受け取ったお金を企業や個人に貸し出し、企業が設備投資をしたり、個人が住宅ローンを組んだりして大きくお金を使えば、企業の従業員の給料がアップしたり、住宅建設なら建築会社にお金が回ったりしてどんどん景気が良くなる。ざっくり言えばこうしたお金の流れを狙って、日銀は金融緩和をしているわけです。
しかし、実際はそうはなっていません。どうなっているかというと、たとえばこの記事。
<企業への融資にお金を回すのが狙いだが、デフレ懸念が強まるなかで金融機関は貸し出しに慎重な姿勢を崩していない。そのため行き場を失ったお金が「安全資産」の国債に流れ込んでいる。そこに量的緩和の国債購入が加わる。>
先行きの心配が高まっている=将来的に景気が良くなる見通しがないので、企業へ融資するよりも金利はほとんどなくても国債を買っておけばとりあえず損をすることはないという考え方が市場を支配しているようです。民間に資金需要があれば、日銀が国債を買い入れても銀行は他に投資する先がたくさんあるのでここまで国債の金利が下がることはありませんが、他に行き先がないのでこれだけ金利が下がっている。そう考えると、日銀の量的緩和は金利低下の理由の一つではありますが、市中の資金需要が足らないところが問題の根本なわけです。では、その市中の資金需要がどうなっているのか?ロイター通信が興味深い記事を配信していました。
この記事の後ろの方に、
<設備投資が回復傾向を強めるかどうかを占う上で、投資計画において最重視する点を聞いたところ、「国内需要動向」が最も多く、非製造業では73%、製造業でも47%を占めた。「いずれにしても需要が先決」(化学)「将来の生産量に確約がほしい」(非鉄金属)など、投資判断は需要動向で決まるとの回答が多い。
(中略)
他方で、円相場や法人税、投資税制、実質金利の低下はほとんど重要視されていない。中には為替相場について「原料費に与えるインパクトが大きい」(食品)として重視する企業もある。>
設備投資をする際に何が重要かという問いに対して、国内の需要動向がキーになってくるということ。すなわち、景気の先行きです。
経済学では、経済主体をざっくりと3つに分けていて、それが、家計・企業・政府。そのうち、家計、つまり個人消費は消費税増税の影響を受けてすっかり冷え込んでしまいました。そして、その冷え込みを見て現在は企業セクターもしり込みしているという状況です。ならば、ここは政府の出番。アベノミクス第2の矢であるところの「機動的な財政出動」が今こそ必要ということです。
さらにこの記事では、<円相場や法人税、投資税制、実質金利の低下はほとんど重要視されていない。>という指摘もされています。法人税や投資税制といったアベノミクス第3の矢は長期的に企業活動をサポートすることはあっても、速効性は期待できない。少なくとも企業経営者はそう思っているというのがデータに表れています。
ということで、ここまでの話をつなげると、金融緩和の効果を最大化するためには、政府による需要の創出が必要になるという話になります。今、新聞の経済欄は「景気回復のためには賃上げが重要だ」という話一辺倒になっています。賃上げにより個人消費が活発化すれば、住宅ローンなどの資金需要が生まれ、「国内需要動向」に作用すれば、確かに景気回復に向かっていくかもしれません。ただ、そんな悠長なことを言っていられるのか?2017年4月に迫る消費税の再増税が不可避だと考えれば、あと2年で何としても景気を底上げしなくてはいけません。そのためには手段を選んではいられないのではないか?今なら、10年で0.2%ほどの利息でお金を調達できるんですから、そういう意味でもリーズナブルだと考えるんですが...。