2014年12月31日

今年多かったニュースは?

 今年一年間も、『ザ・ボイス』をお聞きいただきありがとうございました。昨日放送しました『ザ・ボイス スペシャル』2部作をもって、2014年の放送を終えることができました。

 さて、毎日7本のニュースを選んでコメンテーターの皆さんに解説をお願いする番組のメインコーナー『ニュース・ピックアップセブン』。この見出しを見返してみると何となくの今年の特徴が見えてきます。今年の見出しをチラチラと見ていたら、
「あれ?今年は航空事故ニュースが多くないか?」
と気づきました。
 3月のマレーシア航空370便の消息不明にまず驚きましたが、その後7月には立て続けに3件が連続します。17日にマレーシア航空17便がウクライナ東部上空で撃墜され、23日夜には台湾・復興航空(トランスアジア航空)222便が着陸に失敗。翌24日にはアルジェリア航空5017便がマリ上空で墜落。そして、暮れも押し迫った今月28日、エアアジア8501便がカリマンタン島沖で消息を絶ちました。

 どうやら、海に墜落したことが確定的のようです。

『機体残骸、エアアジア機一部と断定...3遺体収容』(12月31日 読売新聞)http://goo.gl/5P2Xlz
<インドネシア捜索救助庁は30日、カリマンタン島南西沖の海上で、飛行機の機体の残骸を発見し、28日に消息を絶った同国スラバヤ発シンガポール行きのエアアジア機の一部と断定した。>

 この時期の東南アジア赤道付近は気候が非常に不安定なようで、パイロット泣かせの難所だそうです。

『不明エアアジア機が直面した悪天候リスク-冬場に嵐多い地域』(12月30日 ウォールストリートジャーナル日本語版)http://goo.gl/Ie7kfy
<航空や天候の専門家によると、インドネシアでは12月と1月は1年で最も雨量の多い時期に当たり、操縦士にとっては常にリスクがあるという。
 このルートを飛行する航空機が直面するリスクには、激しい乱気流や稲光、ウインドシア(急激な風速・風向の変動)や氷結などがある。>

 遭難機も、前方の積乱雲を避けようと、高度上昇と左旋回を管制に要請し、その直後に消息を絶っています。それほどまでに、積乱雲に突っ込んでいくことは航空機にとってリスクなわけです。積乱雲は、中心に急激な上昇気流、周囲には急激な下降気流が存在しています。さらに、ソフトボール大ともいわれる雹(ひょう)や落雷で航空機が翻弄されるだけでなく、上下左右から様々な力が断続的にかかることで最悪空中分解まで引き起こされます。また、そこまでは行かずとも、積乱雲の上部は氷点下。過去には、積乱雲の中で速度を計測するセンサーが凍ってしまって自動操縦が解除され、副操縦士が手動で飛行しましたが失敗。赤道付近の大西洋に墜落してしまうという事故もありました。積乱雲は、まさしくパイロットにとっては鬼門中の鬼門なのです。

 それゆえ、様々な方法でその存在が予測されていて、上記WSJの記事にある通り、インドネシアの気象当局も積乱雲情報を出して注意を促していたようです。さらに、遭難機の機長は飛行時間2万を超えるベテラン。元インドネシア空軍のパイロットであったといいますから、このあたりの積乱雲の怖さなど釈迦に説法だったことでしょう。

 では、なぜ避けられなかったのか?もちろん、これらは今後機体が引き上げられ、フライトレコーダーが回収され解析されれば判明してくるでしょうが、ここで航空会社の体質にまでメスが入ることを私は願うのです。クルーの判断ミスだったのか、それとも会社の空気としてギリギリまで真っすぐ飛ぶ航路を選択せざるを得なかったのか。

 というのも、このところ航空事故をめぐっては安全と経済性を天秤にかけるような傾向も指摘されているからです。マレーシア航空17便のウクライナ東部での撃墜も、一説には経済的に最短距離を通ったらウクライナ東部を通過せざるを得なかった。他社は迂回していたが、経営的に厳しいマレーシア航空にはそうしたことはできなかったということが指摘されています。経済性を追求するLCC(ローコスト・キャリア)のエアアジアの企業体質は果たしてどうだったのでしょうか?

 『ニュース・ピックアップセブン』の見出しを眺めていると、こうした重大事故でなくとも、「ピーチ・アビエーション機異常降下(那覇空港)」や、先日このブログでも指摘した「ナッツ・リターン(大韓航空)」といった安全軽視の事件・事故が相次ぎました。事故がある度に指摘されることですが、利益のために安全が犠牲になることはあってはならない。年末年始のお目出度いニュースに埋もれることなく、しっかりと追及していかなくてはいけません。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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