2014年08月13日

GDP激減も想定内?

 4月~6月期のGDP速報値が発表され、今日の夕刊各紙は1面で大きく伝えています。

『4~6月期GDP年率6.8%減 駆け込みの反動大きく 7~9月期は回復か』(日本経済新聞)http://goo.gl/WKJPOC
『4~6月GDP、年6・8%減...震災以来の低迷』(読売新聞)http://goo.gl/RsbFxX
『GDP、年率6.8%減 4~6月期 震災以来の下げ幅』(朝日新聞)http://goo.gl/PZLExe
『GDP:消費増税の反動 年率6.8%減 4〜6月期』(毎日新聞)http://goo.gl/BiPU2K

 各紙の見出しを並べてみました。見出しに載せる載せないは各紙の判断でしたが、4月の消費増税前に駆け込み需要があって、その反動で下がったにすぎないというのが各紙共通の分析。そして、日経の見出しが極め付けですが、この後「7月~9月期は回復」ということも各紙揃って書いています。
 外交・安全保障に関しては水と油のような4紙ですが、なぜか経済に関してはすべて一致。
 まったく、不思議ですねぇ~。
 さらに疑問なのが、これらの分析が全て政府見解と一致するということ。甘利経済財政担当大臣の談話を見てみましょう。

『2014年4-6月期四半期別GDP速報(1次QE)公表に際しての甘利経済財政政策担当大臣談話』http://goo.gl/j8JkgX

 まずは、数字の落ち込みの原因について、
<1-3月期における消費税率引上げ前の駆け込み需要や、PCソフトのサポート切れ等に伴う更新投資増からの反動により、個人消費、住宅投資、設備投資が前期に比べマイナスとなったこと>
 違うところと言えば、ウィンドウズXPをPCソフトと言い換えているあたりのみ。しかしそれとて、たかだか1つのパソコンソフトに一国の経済を左右するほどの力があるのか疑問です。乱暴な計算ですが、我が国のGDPは500兆円。4分の1で125兆円。一方、仮に国民全員がウィンドウズXPを別のソフトに買い換えたとしても1億3000万人×1万円で1兆3000億円。4半期GDPの1%にもなりません。これを疑問なく全紙が記事にするというのは、どう考えてもおかしいと思います。

 続いて、個人消費について、
<個人消費に関連する、家電販売や百貨店売上等は、4月に大きく減少した後、持ち直しの動きがみられる。(中略)景気は緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつあると考えられる。>
 そして、先行きについても、
<景気動向指数の先行指数、消費者マインド、設備投資計画が改善してきていること等も踏まえれば、当面、反動減等により、一部に弱さが残るものの、次第にその影響が薄れ、各種政策効果が発現する中で、緩やかな景気回復が進むと見込まれるが、海外経済の動きを含め、引き続き今後の動向を注視してまいりたい。>
と、非常に楽観的な言葉が並んでいます。これも、各紙の記事と全く同じ。7~9月期は駆け込み需要の反動が和らいで個人消費が回復。設備投資も伸びて、景気は回復するであろう。そして、ここから先は新聞にしか書いていませんが、12月と言われている総理の消費税再増税の決断も予定通りしてくれるだろうという流れになっています。

 10%への消費増税へのシナリオが大詰めを迎えているわけですが、ここでキーとなるのが、個人消費。足元の個人消費がどうなっているのか、実は内閣府は毎週毎週細かくチェックして、発表しています。

『消費税率引上げ後の消費動向等について』(内閣府ホームページ)http://goo.gl/bpVrbo

 現時点で最新の8月8日分には、
<主要5品目の家電販売は、8月第1週では、前年に比べて気温が高かったことなどから、引き続き前年比プラスとなった。なお、前年の影響を排除するため前々年と比較すると、マイナスとなっている。>
<(百貨店)大手各社の7月売上の前年比は、前月よりもマイナス幅が小幅に縮小したとみられる。ただし、昨年は、7月に売上が前月比大きく減少していたことに留意が必要。>
<飲食料品は、8月第1週では、前年比マイナスとなっている。>
 あれ?甘利大臣の談話とも、新聞の記事とも逆の内容が、足元の内閣府から出されていませんか?
 家電販売は去年と比べれば良くなっているけれど、去年は冷夏。同じ条件の一昨年と比べるとマイナス。一昨年はまだ民主党政権で、デフレまっただ中だったわけですから、その時よりも悪い。百貨店の売り上げも去年と比べればわずかにいい数字ですが、こちらも去年は冷夏だったので割引が必要と認めています。

これで本当に駆け込み需要の反動減が和らいだといえるのか?むしろ、8%への消費増税がダイレクトに景気にマイナスの影響を与えているのではないか?そんな中で消費税を10%に再増税して本当にいいのか?せめて延期すべきではないのか?そうしたことを考えるのに、新聞各紙が揃いも揃って同じ論調では何の参考にもなりません。総理演説のコピペを辛辣に批判するのに紙面を割くのであれば、自分たちのコピペ記事についてもきちんと見解を明らかにすべきではないんでしょうか?
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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