2014年04月14日

マンデラ~自由への長い道~

 毎回堅い話が多いと妻に怒られましたので、たまには映画の話でも。5月24日全国ロードショーの『マンデラ~自由への長い道~』を試写で見てきました。かつて南アフリカで行われた悪名高き人種隔離政策、アパルトヘイトに反対し、27年におよぶ投獄生活に屈せずにこの撤廃を勝ち取った、ネルソン・マンデラの生涯を描いた映画です。後に南アフリカ大統領に就任し、ノーベル平和賞も受賞した偉人。その生涯を描き切るには、やはり長尺が必要でした。

 2時間27分という、最近の映画ではかなり長いと言えるわけですが、製作者はあえてこれだけの長さを残したのだと思いました。言うまでもなく、27年に及ぶ非人道的な投獄生活。この絶望的な長さを感じるために必要な時間が、この2時間半という長さだったのではないかと思います。

 

 この2時間半の中には、様々に印象に残るシーンがちりばめられているんですが、私が一番印象に残ったのは、使われている車たち。海外を舞台にした映画では珍しく、クラシックな日本車が出てくるのです。アパルトヘイトの時代を通じて欧米の車が出てくる中で、日本車が出てくるのはマンデラ釈放のシーン。ゲートまで彼の身柄を運んでくるのはドイツのベンツなんですが、ゲートまで支持者が迎えに寄越した車が、トヨタ車だったのです。白人の強圧的な支配から、黒人と白人が平等に統治する社会へ。新しい社会の象徴として乗り換えたのが日本車というところに、アフリカと日本のつながりを感じます。非白人の先進国としての日本。アフリカでは中国の存在感が増しているという話もありますが、非白人系の民主主義国家としての日本と南アフリカは連携しうる、いや連携していかなくてはならない。そんなことを感じさせるワンシーンでありました。

 

 そしてもう一つ、政治家ネルソン・マンデラの真骨頂を見せるシーンがあります。政権交代前夜、政治状況が煮詰まっていく中で、若者を中心とした一部は武装闘争を過激化させていきます。繰り返される憎しみの連鎖。このままでは仮に政権交代が実現しても、攻守が逆転するだけで憎悪の応酬は止まらない。しかし、非暴力を訴えれば味方であろうとも命を狙われかねない。それゆえ誰も何も言えなくなってしまい、黒人サイドも白人サイドもマンデラの言動を注目していました。
 そして、マンデラはついに国営放送局へ出向き、自らの考えを生放送で訴えます。不人気は覚悟の上で、文字通り命がけの訴えは観る者の心を打つ。ポピュリズムとは正反対の、政治家の凄みを感じる映画でもありました。

 

 さて、支持率は上々の安倍政権にも、不人気を承知で政策を進めなくてはならなくなる時が来るのか?こう書くと、まさしく消費税増税こそ不人気を承知で進めなくてはならない政策!という向きもありますが、私はもっと国内に反対が強い、日中関係での決断もあるのではないか?と思いました。今まで安倍政権を支持していた人たちをある意味で裏切り、今まで政権に批判的な人々に近い立場をとることになる日中接近。しかしながら、ひょっとすると今年中に日中首脳会談が行われるかもしれません。その時に、なぜ首脳会談が必要なのか、理性的に説くことができるのか?総理の胆力が問われる瞬間がやってくるかもしれません。

 映画監督のロバート・ストーンは言いました。
「政治家が不人気なことを言うとき、聞く価値がある」
 映画のお好きな安倍総理といえど2時間半の捻出は難しいかもしれませんが、ぜひご覧いただきたい映画です。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
「飯田浩司そこまで言うか!ONLINE」

最新の記事
アーカイブ

トップページ