2014年04月07日

「最近の若いモンは」の根っこには

 4月になって、新入社員が入ってきました。毎年この時期に話題になるのが、「最近の若いもんは...」系の話題。「指示待ちなんだよな...」なんてことを、飽きもせずここ何十年も繰り返しています。ま、年中行事のようなものなので大して気にすることはないかもしれませんが、ちょっと分析してみました。テーマとしては、「最近の若いもんは...」「指示待ち」というのが、果たして若い人だけのせいなのか?ということです。

 

 まず、上司たちにとっての理想の部下像を考えてみると、
・主体的に仕事に取り組む意欲がある
・創意工夫して仕事をする
・創造性に富む
といったところが上がります。『自分から率先して仕事に取組み、試行錯誤しながら環境をどんどん良くし、業績を上げていく人物』というところでしょうか?こういった人物がそこここにいて、会社がうまく回っていたということを言いたいようです。

 この、ボトムアップで会社を動かしていく様というのはかつては日本の伝統でした。ケンブリッジ大学の経済学者ハジュン・チャン氏はこれを「起業家精神の組織化・集団化」と言い、日本の製造業のお家芸、「カイゼン」を代表的な例に挙げています。作業効率の向上や品質管理、安全性の確保などで、現場レベルで徹底的に話し合い、解決策を見出していくという、この「カイゼン」。現場の一人一人がいわば経営者の視点で動くというのは、当時1980年代の欧米先進国にとっては驚くべき社会のありようで、経営学だけでなく社会学の分野などでも盛んに研究の対象となりました。要するに、かつての日本は知らず知らずのうちに『起業家精神』に富んだ国であったわけです。

 

 さて、その後の日本はどうなったでしょうか?最近の安倍政権の雇用政策はというと...。
『日本再興戦略-JAPAN is BACK-』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf
この30ページにこんな記述があります。
<リーマンショック以降の急激な雇用情勢の悪化に対応するために拡大した雇用維持型の政策を改め、個人が円滑に転職等を行い、能力を発揮し、経済成長の担い手として活躍できるよう、能力開発支援を含めた労働移動支援型の政策に大胆に転換する。これらにより、今後5年間で、失業期間6か月以上の者の数を2割減少させ、転職入職率(※)(パートタイムを除く一般労働者)を9%とすることを目標とする。
※転職入職率とは、在籍者に対する転職入職者(入職者のうち、入職前1年間に就業経験のある者)の割合のことをいう(2011 年7.4%。1975 年以降の最高値9.2%。)。>
雇用の流動化を目指していこうということを高らかに歌い上げています。

 企業にとっては、人を雇う、人を辞めさせるというのが自由な方が経営しやすくなります。固定費を削減できれば、身軽な経営が可能だからです。「被雇用者は将棋の駒のようなもの。歯車のようなもの。必要なときには集め、不要になったら外す。しかし、企業は無数にあるから、技術さえあれば仕事にあぶれることはなかろう」というのが、経済界の要請であり、政府の方針であり、両社が考える雇用者の理想像ということになります。しかし、果たしてそんな人材が、『主体的に仕事に取り組む意欲がある』でしょうか?『創意工夫して仕事をする』でしょうか?『創造性に富む』でしょうか?
将棋の駒たれというのであれば、かつての日本にあったような起業家精神は必要ありません。一人一人が経営者の視点などを持っても、為替が少し動いて赤字になればクビになります。

 経済界の要請が結果として若者の去勢化をもたらしているとすれば、それを若者の資質のせいにするのはお門違いもいいところ。むしろこんな社会を作り出した自分たちを遠回しに批判しているという、天に唾するような行為と言えるのではないでしょうか?

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

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