2014年03月31日

消費税10%に上げないと、日本国債は破たんするのか?

 いよいよ明日、消費税が増税されます。私は、そして『ザ・ボイス』番組としてもこの時期に消費増税するのは景気に対して厳しい。できれば止めるべきだと言い募ってきました。しかしながら、8%への増税はもう行われる。これについては言うのはやめましょう。ただし、来年10月の10%への増税は、やはり止めるべきだとこれからも言い続けたいと思います。

 

 来年10月の10%への再増税については、今年の年末に総理が最終的に判断すると言われています。財務省曰く、10%への準備期間を作るためには今年末には判断が必要だというのです。そして、そのタイミングで一番新しい経済指標というのが、7月~9月のGDP。それゆえ政府は、7月~9月に向けてあらゆる財政出動を駆使して景気を下支えしようとしているわけです。最近では前倒し執行、数値目標設定、年度またぎ予算と、とにかく予算を使え使えと大号令を発しています。


『9月末までに6割以上=14年度予算で執行目標-政府』(時事通信 3月26日)http://bit.ly/1iRnEIf
『2014年度予算執行に数値目標 公共事業中心に前倒し』(テレビ朝日 3月28日)http://bit.ly/1iRnIHN

 

 年度またぎ予算なんて今までの財務省だったらテコでも許さないものだったわけですが、10%への再増税のためならば何でもアリになっています。そうした下支えの一方で、増税の大義、増税の必要性についても12月に向けてメディア各方面から繰り返されることになるでしょう。一番オーソドックスなのが、このブログでも何度か取り上げている「国債の信認が~!」というもの。人によってさまざまなシナリオを駆使しますが、おおむね言われるのが、
「予定通り増税しなければ積みあがった国債の返済のメドが立たず、日本国債に投資した金が返ってこないと危惧した外国人投資家に売り浴びせられ、国債価格が暴落。金利は上昇し、日本は破たんする~!」
というもの。「日本は海外から危険視されているんです!」なんて言われると、外面を気にする日本人は「そうか、やはり増税は必要だな」と思ってしまいます。あるいは、「国の借金1000兆円超えて、GDPの2倍以上!年収の2倍以上借金があるんだから、少しでも返さなくては!さらに借金を重ねるなんてとんでもない!」
という情緒的な主張も出てくるでしょう。

 

 では、まず国債の発行残高がどれだけあるのか?財務省のホームページには、きちんとデータをアップしています。
『国債発行額の推移(実績ベース)』
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/hakkou01.pdf
 ここに、平成25年度の普通国債発行残高が書いてありますが、その額749兆5846億円。少ない額ではありませんが、1000兆までは積みあがっていません。実は、1000兆という数字には、政府短期証券や借入金まで一緒くたになった金額なのです。したがって、GDPの2倍ではなく、1.75倍。もちろん、大きな数字ではありますが、問題は家計のように借金を可及的速やかに返す必要があるのか?というところ。前にも書きましたが、政府というところはいわばNPO。利益を出すのが目的の集団ではありません。さらに言うと、人間と違って寿命がありません。100年、200年、日本国政府は存在することが前提であり、したがって国の借金も超長期で返済していけばいいわけです。実際、国債も借り換え借り換えで60年を一つの区切りにして消化しています。

 

 では続いて、外国人が売り浴びせる!という話。売り浴びせられて値が上下するなら、それだけのまとまった額の国債を外国人が保有していることが前提となります。では実際にどれだけ保有しているのか?先日、日銀が発表した最新の資金循環統計によると...、

『資金循環』(日本銀行ホームページ)http://bit.ly/1fdWSsT

この中の「年係数」というデータを呼び出し、「金融資産・負債残高表」の「海外」の部分を見てみると、「国債・財融債」の残高が32兆5652億円。先程の財務省の普通国債発行残高と比較すると、海外保有比率はたったの4.3%にすぎません。海外勢はむしろ、政府短期証券の方を志向していて、こちらは50兆円近くを保有しています。
4.3%で値崩れするほど、国債市場は脆弱なんでしょうか?しかしながら、これが新聞のフィルターを通すとこんな記事になってしまいます。

 

『12年の海外勢、日本国債の保有残高は過去最高 3年連続で増加』(日本経済新聞 3月25日)http://s.nikkei.com/1fe0aw9
<海外投資家による日本国債の保有残高は12月末時点で11年と比べると7.4%増の84兆30億円だった。四半期で過去最高だった9月末時点(86兆528億円)に次ぐ大きさ。暦年比較では10年以降、3年連続でプラスとなり、残高は過去最高となった。
 国債の保有者別構成比率で海外勢は8.7%。過去最高だった9月末時点(9.1%)からは低下したが、依然高水準にとどまっている。>

 

 どうして8.7%になるんだろう...?おそらく、国庫短期証券と国債・財融債の合計なんでしょうが、それにしたって全体の1割に満たないわけですね。これでもやはり、日本国は債務危機だと言い募るのか?そして再増税に突っ走るのか?デフレ脱却への道のりは遠いようです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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