2014年03月26日

まだある!世論調査のミスリード

 消費税増税までいよいよあと一週間切りました。これがアベノミクスで上向きつつある日本経済が腰折れするのか乗り越えて伸びていくのか、エコノミストの間でも議論のあるところですが、今週月曜に日本経済新聞が直前の世論調査として、消費増税の家計への影響を一面に載せていました。

 

『家計支出、消費増税後も「維持」51% 本社世論調査』(日本経済新聞 3月24日)http://s.nikkei.com/1izvA0l
<4月の消費税率の8%への引き上げ後、家計の支出をどうするか聞いたところ「変わらない」との回答が51%と半数を占め「減らす」の44%を上回った。>

 

 これだけ読むと、我が国のGDPの6割を占める個人消費は増税後も堅調だから心配ないという印象を与えます。さらに深読みすれば、4月を過ぎても経済は伸びていくから年末の10%へのさらなる増税も決断できるというメッセージにもとることが出来ます。

 しかしながら、本当にそうでしょうか?この、『消費増税後も「維持」』というのを少し考えてみると、全く正反対の結論が出てきます。
 増税後も同じ金額を支出すれば、税率の分だけ買える点数が減るはずです。あるいは、同じ点数を買おうとすれば単価は当然下がるはずです。たとえば、一か月にA(@税込10500円)という商品を10個、10万5千円支出していたとすると、増税後にAという商品(@税込10800円)を10個買おうとすると10万8千円になります。しかし支出は維持ですから10万5千円の支出で、Aを9個と7800円のおつりとなります。あるいは、10個を維持となるとB(@税込10500円)というやや安い別の商品を買うということになるわけですね。

 これは、購買力の低下を意味しているのではないでしょうか?要するに、この世論調査、4月以降の物価上昇を全く考慮していないのです。

 

 この記事、見出しは事実のみを書いていますから間違いとまでは言えません。しかし、『増税後に購買力が低下する』というのではニューズバリューはありません。あえて見出しにとるということは、増税の影響軽微という明るいニュースだ!と誤認識を誘う見出しです。これをミスリードと言わずして何がミスリードでしょうか?

 

 ただ、アベノミクスが始まってから1年。この増税直前でひょっとすると本当に消費が底堅く伸びてきているのかもしれませんので、他の調査も調べてみました。
『消費増税で、家計の支出「減らす」55%』(読売新聞 3月17日)http://bit.ly/1eOCJJN
<読売新聞社の全国世論調査で、来月の消費税率8%への引き上げ以降、家計の支出を今よりも「減らそうと思う」と答えた人は55%で、前回2月調査の54%とほぼ同じだった。>

 

 ちょっと古いんですが、毎日新聞も...、
『本社世論調査:「家計支出抑制」65%...4月消費増税で』(毎日新聞 2月17日)http://bit.ly/1izCjYj
<今年4月に消費税率が8%へ引き上げられた場合に家計の支出を抑えるかどうかについて尋ねたところ、抑えようと「思う」と答えた人が65%に上り、「思わない」の31%を大きく上回った。>

 

 何をかいわんや。いまだに、世論調査の解釈をミスリードしているんですね。いい加減こういった報道から卒業しないと、国民的議論が生まれず、結果として国を誤るのではないかと危機感を感じています。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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