2014年03月19日

維新の窮地

 憲法改正手続きを確定させる国民投票法改正をめぐって、日本維新の会が怒っています。そもそも、この法改正の先頭を走っていたのが維新の会でした。何しろ、去年の通常国会中の5月の半ばに維新の会単独で改正案を提出していましたから、足かけ10か月もこの問題に取り組んできたことになります。

 

『維新が単独で国民投票法改正案・選挙制度改革案提出』(テレビ朝日 13年5月16日)http://bit.ly/1doQwCN

 

 この時の法案のポイントは、①国民投票の年齢規定を18歳以上とする②公務員の純粋な意見表明は認める(勧誘活動は認めない)というところでした。この内容は自民党の主張とほとんど同じなので、当時、維新と自民は前向きに協議を模索していました。その後、参院選を経て9月になると、自民党は方針を転換。参院選大勝によって野党への配慮はさほど必要ないという意見が大勢を占めるようになり、自公の与党で改正案を提出する方向に舵を切ります。

 

『自民、国民投票法改正案を公明と提出へ 維新重視から転換』(産経新聞 13年9月8日)http://on-msn.com/1doTirK

 

 この欄でも何度かお伝えしてきたように、維新としては自公の仲に割って入ろうというのが戦略でした。それゆえ、公明側の巻き返しに内心面白くなかったわけですが、年をまたいで2月初めにこの自公案への賛同を決めました。

 

『国民投票法改正案、維新も共同提出へ』(日本経済新聞 2月5日)http://s.nikkei.com/1doUj33

 

ここで、先ほど挙げたポイント①の年齢規定を20歳にすることを呑みました。ポイント②の公務員に関する規定は残っているので、維新としては何とか乗れるものだったからです。しかし、今月に入ってから急転直下、自公は民主党にも声をかけました。

 

『国民投票法:改正案、自公民が大筋合意 今国会で提出へ』(毎日新聞 3月14日)http://bit.ly/1doVAqR
<自民、公明、民主の3党は14日、憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案について実務者協議を行い、大筋合意した。公務員の政治的行為を巡り、公務員による組織的な賛否の勧誘や署名運動を禁じる規定を削除する民主の要求を与党側が受け入れた。>

 

 大阪で官公労と厳しく対峙することが立ち上げのきっかけにもなった維新の会にとっては、このポイント②まで否定されると、存在意義まで問われることになるわけです。当然、反発しました。

 

『国民投票法改正案、自公民合意に維新反発』(産経新聞 3月18日)http://on-msn.com/1eksLzr

 

民主党の案まで呑めば維新が反発するのは火を見るよりも明らかだったのに、なぜ自民党は民主党にまで声をかけたのか?憲法改正までつながる重要な法案なので、みんな、結い、生活などにも声を掛け、超党派で成立を期すというのが建前ですが、そこには維新の足元を見る自民党の姿勢も見えてきます。

 キーとなるのは、今週末に行われる出直し大阪市長選。これが盛り上がりに欠けるものであるというのが永田町にまで伝わってきているんですね。投票日の23日は、三連休の最終日。しかも、すでに春休みに入っていて行楽にはいい並びです。その上、当日大阪地方の天気予報は晴れ時々曇り。最高気温17度という絶好の行楽日和。投票率も低迷が避けられません。しかし、それと自民党の動きがどうリンクするのか?政界関係者はこう謎解きしてくれました。

「おそらく橋下氏は当選するだろうが、投票率も低迷し、得票率も前回の市長選以下ということになれば、これは維新の退潮が数字で出てしまう。こうなれば、橋下氏の求心力は大幅に低下するだろう。そうでなくても、大阪市議会はもとより、大阪府議会でも過半数を割っている。その上、選挙期間中にまた府議が一人、維新を離脱した。維新は橋下氏が再選されれば、府議会に法定協の委員を入れ替える議案を提出し、都構想を進める考え。しかし、可決には他会派から3人以上の賛同が必要。過半数確保ができなければ委員入れ替えは実現せず、橋下氏が出直し選に踏み切ったことに批判が高まる可能性もある」
 大阪維新としては、橋下氏の求心力・集票力を見せつけることで、離党した議員を引き戻し、離党を考えている議員をつなぎとめる戦略だったが、これが裏目にでる可能性があるということです。そうなれば、今度は自民・民主といった大阪市議会、府議会の野党が市長・府知事不信任を突き付ける可能性もあるとか。ここで不信任を受け入れれば解職され、仮に議会解散に打って出れば、集票力の落ちた維新は壊滅的敗北に...。結果、大阪都構想は行き詰まり、橋下・松井コンビは窮地に陥る...。

 

 自民党はそこまで見越して、維新と距離を置くように舵を切ったようです。また、もう一人、これを見越して動き出した人がいます。

 

『維新・石原代表が原子力協定に賛成表明 大阪系「出て行け」と反発』(産経新聞 3月6日)http://on-msn.com/1ekyRQp

 

 その後石原氏は党の方針に従うと矛を収めましたが、これも老獪な氏が党内の反応を見たジャブとみることもできます。特に橋下氏の集票力で選挙を勝って来た大阪系の一年生議員は、大阪市長選後に同じ反応が出来るのか?今度は石原氏の集票力に頼り、維新は割れるのか?いずれにせよ、野党再編はこのような消極的な形で動き出すのかもしれません。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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