2014年02月15日

ついに財務省も弱気!?消費増税を乗り切るには?

 今年2014年を占う上で、政治の面からも経済の面からも、あるいは外交の面でも忘れてならないのは、春に予定されている消費税増税。これで景気が悪くなるのか踏みとどまるのか専門家の中でも評価の分かれるところですが、ニュースを見ていると強気で鳴らした財務省でさえちょっと弱気になって来たかなという印象があります。
こんなニュースがありました。

『予算繰り越し促す...財務省が異例の行動 手続き簡略化も検討』(産経新聞 2月12日)http://bit.ly/1eAKiic

 財務省といえば、財政赤字が大嫌いなお役所。今までであれば、「年度内に予算を使い切れないような見積もりをするのなら、翌年以降は予算付けないぞ!」という姿勢だったんですが、今回ばかりは違うようです。記事によれば、<予算の単年度消化にこだわると公共事業の中止が増え、4月の消費税増税後の景気の落ち込みを防ぐために講じた経済対策の効果がそがれる>からだそうです。しかし、思い返してみれば財務省は「消費増税しても一時的な落ち込みはあっても、長期的に景気は落ち込まないことが、去年7~9月期のGDP成長率を見てわかった」として、総理に税率アップの決断を促したはずです。どうやら、見込み違いだったようですが、その理由が人件費の高騰や人手不足。これにより入札不調が繰り返されれば流し込んだ予算が景気回復に活きない、だから異例の予算繰り越しも許すんだというものですが、それで本当に景気を下支えできるのか?私は疑問に感じています。

 

 そもそもなぜ公共事業が景気の下支えになるのかというと、それは手っ取り早く雇用を生む(と言われていた)から。今まで失業していた人が工事現場で働くようになり給料をもらうようになれば、そのお金で買い物をするなど消費するようになり、幅広い業種が潤うようになる。バラマキだとメディアからは批判されていましたが、過去にはこれが一定の効果を生んでいたことは統計を見れば明らかです。

 

 問題は、これが今、どこまで効くのか?ということ。現在の土木工事の現場は、手っ取り早く雇用を生むものではなくなりつつあります。先日、帝国データバンクが発表した調査には、それがはっきりと数字で浮かび上がりました。

『人手不足に対する企業の意識調査』http://bit.ly/1eAM3Ml

 これによると、建設業で人手が不足している部門、役割の項目を見ると、現場が75%強で1位ですが、それに続いているのが「高度な技術を持つ従業員」が52.2%に上っています。建設業全体のほぼ半数の企業が技術職の不足を挙げていて、さらに分析記事の中でも、<「建築・土木とも技術者が圧倒的に不足しているが、職能工はさらに不足している」(建設、千葉県)>という現場の声を取り上げています。当然、技術職は一朝一夕で育成できるものではありません。ということは、いくら財務省が複数年予算を認めようが、来年いきなり高スキルの作業員が大量に生み出されるわけはなく、どこまで景気の下支えになるのか疑問符が付きます。また、技術職こそ必要というわけですから、冒頭で挙げた産経新聞の記事の結びのように、<外国人労働者の受け入れ拡充など公共工事の円滑な執行に向けた環境整備が急がれる。>というのも、処方箋にはなりえません。
話は多少逸れますが、これを端緒に外国人労働者の受け入れを一気呵成に進ようというのは問題です。

 

さて、その上で、何が処方箋になり得るか?ヒントは、前回の3%から5%へ消費税の増税が行われた直後の小渕内閣の政策にあるのではないでしょうか。先程も書きましたが、景気を下支えるために公共事業を使うのは、雇用を生むため。ひいては、個人消費を拡大させて経済を回すためだと書きました。

 結局、「景気の下支え=個人消費の刺激」と考えれば、4月に消費に使えるクーポン券を配るのはどうでしょう?それも、消費増税の影響が大きい4月~6月期に期間限定したものなら、貯蓄に回らず消費に回るでしょう。小渕政権の時に評判は悪かった『地域振興券』のような発想ですね。あの時も「バラマキだ!」とメディアから総スカンでしたが、データを見ると97年に消費増税があり、翌98年も落ち込んだGDPが、地域振興券を配った99年には反転しているんですね。この政策には持続性がない!一過性の物だったという批判が当時からありましたが、今回は「消費増税による駆け込み需要の反動減下支え」という一時的な下支えが目的ですから、効果と目的が一致しています。アベノミクスで経済は上向きなんですから、一過性で効いてくれればいいんです。

 いずれにせよ、消費増税のマイナスを、あらゆる政策を動員して避けなければならない。私はそう思います。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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