2014年01月09日

野党再編は可能か?

 遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。『ザ・ボイス』『ズーム』とともに、今年もお付き合いくださいますよう、宜しくお願いいたします。

 

 さて、新年一発目の今回は、今年の政界の見通しについて。とはいえ、与党の多数は揺るがないので、野党再編についてです。野党再編と言えば、去年末に立ち上がった『結いの党』。みんなの党と袂を分かった、江田憲司衆議院議員らの党です。野党勢力を結集する「触媒」として党の発展的解消も辞さないと綱領に盛り込むなど、野党再編の中心として存在感を示そうとしています。

 

 そもそも、江田氏とみんなの党の渡辺代表の不仲は「公然の秘密」でありました。それでも長年同じ党の中で代表と幹事長という立場でやって来たわけですが、今回離党を決断したきっかけは「党内ガバナンス」というのが大義名分でした。政党助成金や立法事務費などを渡辺代表が私的に差配していると江田氏は指摘をしたわけです。

 しかしながら、ホンネはもっと政策の根本に食い違いがありました。それが、今年の政界を賑わすであろう『集団的自衛権』でした。これについて、江田氏は結いの党の設立総会で、「現行憲法下で、まずは可能な自衛権行使のあり方を具体化」と慎重な姿勢を示しました。
『「結いの党」設立総会 集団的自衛権行使に慎重 みんなは江田氏除名を決定』(昨年12月18日 産経新聞)http://on-msn.com/1aIThgK

 一方の渡辺喜美氏は、積極的な立場です。
『集団的自衛権、棚上げ通用しない...みんな渡辺氏』(1月4日 読売新聞)http://bit.ly/1feJ1V4

 

 政界関係者の中には、自民党55年体制以来の「党人」と「官僚」の違いが袂を分かつ原因だと語る人もいます。
「通産官僚出身の江田からすれば、安保法制懇の4類型(※)も個別的自衛権の拡大解釈で何とかなるという主張なんだ。いちいち法律を通そうとすれば手間だし、自衛隊法など周辺の法律も合わせて変えなきゃならない。実務が煩雑になるのを官僚は嫌うんだな。それを考えると、「名」はそのままで運用を変えることで「実」を取る方が理にかなっているとなる。
一方、父親の秘書からたたき上げの党人の渡辺にはそうした霞が関文学めいた小手先の理論が我慢ならなかったのだろう。立法府の一員なんだから、ガタガタ言うより法律を作った方が筋が通っていると考えるのも無理はない」

 

 安全保障という、政治の根幹にかかわるところで意見が真っ二つに分かれていては、これは上手くいきません。その上今は我が国周辺が不安定で、政治の現場は常に安全保障上の問題を突きつけられます。冷戦時代の昔ならともかく、今はそんな股裂き状態では政党は成立できません。

 となると、野党再編も少なくとも安全保障政策では一致している物同士で行われるのかというと、これがどうも怪しい。来週15日に結いの党の幹部が日本維新の会の橋下共同代表、松井幹事長らと再編に向けた政策協議を行うことが明らかになりました。
『結いの党、15日に維新と政策協議』(1月7日 朝日新聞)http://bit.ly/1feKuL5
 維新は言うまでもなく、集団的自衛権容認の立場。となると、安全保障政策では結いと維新は真っ向から対立することになります。まさしく、同じ轍を踏むことになるわけで、野党再編には初めから暗雲が垂れ込めていると言わざるを得ません。そこを突くように、官邸側は維新やみんなに秋波を送ります。
『集団的自衛権、4月に提言受ける=維新・みんなとの連携期待-菅氏』(1月7日 時事通信)http://bit.ly/1aIV7y1
<日本維新の会の橋下徹共同代表やみんなの党の渡辺喜美代表が容認する考えを示していることについて「大歓迎だ。賛成する野党なら協議するのが政府の考えだ」と述べ、両党との連携に期待を示した。>
 ある政界関係者は今年の見通しについて、
「江田氏が野党再編だと頑張るが、集団的自衛権がネックとなって上手くいかない。一方で、公明党を抱える与党も同じく集団的自衛権で前に進まない。もともと維新は官邸の菅氏や総理と近いものがあるので、一気にシャッフルだってあり得る」
今年は『野党再編』ではなく、むしろ『与党再編』まであるかもしれません。

 

(※)安保法制懇の4類型
正式には「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(総理の私的諮問機関)
4類型とは、2008年6月に当時の福田総理に提出した報告書に盛り込まれた、集団的自衛権の行使に関わる4つの事例。
(1)公海における米艦防護
(2)弾道ミサイル防衛
(3)PKO活動等における自衛隊の武器使用
(4)PKO活動等における他国への後方支援

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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