2013年11月25日

特定秘密保護法案報道の誤り

 特定秘密保護法案の国会審議が続いています。新聞各社は賛否が分かれ、特に反対の立場のリベラル系の新聞社、通信社は有識者総動員で全面キャンペーンを行っている他、毎週のように行っている世論調査でもこの法案に紙幅を割いて調べています。そんな反対派メディアの一つ、東京新聞は共同通信の世論調査を引いてこう見出しを付けました。
『秘密保護法案成立なら 「知る権利」侵害62%』(11月25日 東京新聞)http://bit.ly/1ck0BkA
 見出しだけ見ると、「ん~、やっぱり反対の人が多いんだなぁ」という印象になりますが、これこそまさに印象操作。記事を少し見ていくと、
「法案への賛成は45・9%、反対は41・1%と割れた。」
としれっと書いてあります。仮にこれが見出しだと、
「賛否拮抗しているけど賛成のがちょっと多いのか...」
となって、印象がだいぶ違います。一体どうなっているのか?紙面には世論調査の詳報が載っていますので、そこから引くと、
<問8 機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案は、与野党間の修正協議を経て、今国会で成立する見通しとなりました。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか。
賛成 45.9%
反対 41.1%
分からない・無回答 13.0%

問9 あなたは、この法案が成立した場合、国民の「知る権利」が守られると思いますか。
守られると思う 26.3%
守られるとは思わない 62.9%
分からない・無回答 10.8%>

ちなみに、特定秘密保護法案の趣旨についてはその第1条に書かれていますが、
「(目的)
 第一条 この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。」
『特定秘密保護法案全文』(10月25日 東京新聞)http://bit.ly/1c2aEdL

 要するに、国家・国民の安全の確保のため、一部知る権利を制限すると書かれているわけです。法律案にそう書かれているんだから、問9の質問はそもそもナンセンス。その上、単純に賛成反対を問うた問8ではなく、法案にネガティブな印象を与える問9の方を見出しに取るというのは、ある種の意図を感じざるを得ません。

 

 リベラルメディアはこの法案を廃案にしようと主張しますが、それでは拭えないリスクがあります。最近ではこんなニュースが出ました。
『北朝鮮抑留事件 元機関長が初証言』(11月23日 NHK)http://bit.ly/1ck80An
これは、日本の貨物船の船長と機関長が北朝鮮で身に覚えのないスパイ容疑で逮捕され、7年間にわたって抑留された「第18富士山丸事件」について、元機関長が初めて証言したというニュース。この事件は、日朝間での交易のため往復していた第18富士山丸で、北朝鮮出航後船内で密航者が見つかり、日本の入管に引き渡したところ、その後再び交易で北朝鮮に入った際、船長と機関長が密航の幇助及び継続的なスパイ行為の容疑で拘束されたという事件です。
(参考)『第十八富士山丸事件』(ウィキペディア)http://bit.ly/1ckaWgm

 事件発生から7年で解放されましたが、2人は帰国してからも多くを語りませんでした。その理由は、北朝鮮の担当者から「帰国してよけいなことを話すと、子どもが交通事故に遭うこともありうる」などと、脅しとも取れる口止め工作を受けたからだとしています。それも、2人の家の場所や間取り、家族の構成や年齢などなど、詳細な個人情報を把握した上での脅しに、今まで逆らうことなどできなかったそうです。こうした情報をどこで手に入れたのか?北のスパイの暗躍、日本人協力者の存在...。この法律があれば、たとえ外国人であっても特定有害活動の防止に関する事項で逮捕し罰することが出来るわけです。

 問題の第一義は無法国家北朝鮮にあるわけですが、北に抗議するだけでなく国内法で犯罪を未然に防ぐのは主権国家として当然の振る舞いです。この法案に足らないところがあるのなら、それを足していくのが議論というものではないでしょうか?一足飛びに廃案を主張するのは、むしろこの法案の問題点をぼやかしているのかと穿ってみたくもなります。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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