2013年11月08日

日韓請求権協定の真実

 韓国で相次ぐ元徴用工への賠償裁判で、日韓請求権協定への関心が高まっています。
『財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定』(外務省)http://bit.ly/HEcc4B http://bit.ly/HEcpVt

『元挺身隊女性にも賠償命令 韓国、戦後補償で3件目 「請求権消滅」認めず』(11月1日 産経新聞)http://on-msn.com/HEacJB
 これに対し、日本政府は当然、上記日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決したという姿勢を崩してはいません。また、日本の財界もさすがに憂慮を示すようになりました。
『「徴用工賠償問題 日韓経済損なう」 経団連など共同声明』(11月7日 東京新聞)http://bit.ly/1c4iiUR

 一方、韓国国内や一部日本国内でも、日韓請求権協定において個人の請求権までは放棄していないという見方があります。そして、それを日本の外務省も認識していたという外交文書、あるいは国会答弁を証拠に、日本企業は賠償に応じるべきだという議論があります。
 彼らが根拠とするのは、たとえば1991年(平成3年)8月27日の参議院予算委員会における外務省条約局長(当時)柳井俊二氏の答弁。
「(前略)いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。
 その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。」
※全文は、国会会議録検索システム(http://bit.ly/1c4mZOw)参照

 たしかに、ここでは個人の請求権そのものを消滅させるものではないと明言しています。一方で、同じ答弁の中で請求権の問題は最終かつ完全に解決したとも述べています。
 これは一体どういうことか?
 問題となる請求権とは、財産を棄損された際に補償する請求権です。つまり、財産権の一部となります。財産権とは、特に法律に明文化されなくても自然に備わっているとされている権利。これに関しては、条約・協定であっても消滅させることはできません。さらに、条約・協定を結ぶ場合、お互いの国で条件を揃えることが必要ですから、もし仮に韓国で請求権を消滅させたら、日本でも財産請求権を消滅させなくてはなりません。財産権を消してしまうと、経済運営の根本を否定することになるのでこれはできません。そこで、個人の請求権そのものの存在は認めつつも、実際の運用として『外交保護権』を相互に放棄するとしたのです。

 

 では、外交保護権とはなにか?これは、国際間での損害賠償等で使う権利。
 たとえば、日本人である私飯田がA国によって違法な損害を受けた場合、日本は国としてA国に対して国家責任を追及することが出来るという権利です。なぜ、私個人で損害賠償請求するのではなく、日本という国を経由するかというと、国際法では権利を行使する主体は国でなくてはならないという原則があるから。とはいえ、損害は賠償されなければならず、そこで外交保護権という折衷案が採用されているのです。

 さて、その外交保護権を相互に放棄するとどうなるのか?今回のように訴訟を起こすことはもちろんできますが、その結果賠償判決が出たとして、実際に差し押さえようとしたところで外交保護権を行使することになります。つまり、差し押さえができないということです。今の韓国の国内世論の状況で、差し押さえが出来ないとなればどうなるでしょうか?協定を守ろうとすれば国内世論が沸騰しますし、差し押さえようとすれば協定破りとなります。そうなれば、日本側とすれば過去の戦時賠償も白紙に戻して考えなければなりません。要するに、「金返せ!」という話です。そこまでの覚悟がパク・クネ政権にはあるのか?私には、この一連の裁判、韓国にとって袋小路に陥っていると思うんですが...。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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