2013年11月01日

再生可能エネルギーは万能か?

 国会では、電気事業法改正案が衆議院を通過しようとしています。通常国会で時間切れ廃案となったこの改正案。今回もほぼ同じ内容での審議が続いている形で、核となる部分は、「広域的運営の推進」→「新規参入の自由化」→「発送電分離」という流れです。
『ようやく電気事業法を改正へ、3段階の改革が前進』(ITMedia)http://bit.ly/1agVPRO

 

 地域独占が緩和されればより安い電力会社と契約することができ、ユーザーの利益になるというのがその目的。円安で燃料費が高騰し、電気料金が上がっている昨今、これで電気料金が少しでも安くなれば万々歳と思うのですが、果たしてそんなに上手くいくのか?心配もあるんです。

 

 それが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度。(資源エネルギー庁ホームページ http://bit.ly/1h4J869
 再生可能エネルギーの普及促進を目指して、従来のエネルギー源(火力、原子力など)よりも高い値段で電力会社が買い取ることを義務付けるもの。
電力会社はそのコストを電気料金に上乗せするため、結局ユーザーがその分を負担することになります。それでも、福島第一原発事故を見て、安全なエネルギーが普及するためなら仕方がないと納得した消費者もいたと思うんですが、問題はその値段。
 もっともシェアの多い太陽光発電を例にとると、当初は1キロワット時42円。(10kW以上)現在は下がったとはいえ37.8円です。
 一方、既存のエネルギー源の火力、水力、原子力の発電コストはだいたい1キロワット時あたり10円前後。もちろん、原子力発電に関しては今後廃炉や放射性廃棄物処理のコストを考えなくてはいけないので単純に比較することはできませんが、少なくとも既存エネルギー源と比べると再生可能エネルギーはコスト負担が重い。
 それがどれだけ負担かと言えば、新電力大手・エネットの池辺社長は日本記者クラブでの記者会見で電力を買う側の立場として、
「固定価格買い取り制度は、(買い取り量の)変動で激しいリスクがある。なかなか手が出しづらい」
と話し、安定的に電力を調達するには火力・水力などを優先していると話していました。
 また、この分野で先行しているドイツで電気料金が上がり続けていることからもうかがえます。
『独、再生エネに曲がり角 電気料金抑制へ買い取り制度見直し』(サンケイビズ 10月11日)http://bit.ly/1agZOO9

 

 ドイツの例を見るまでもなく、固定価格買い取り制度が適用されている限り、発電業者からすれば、できるだけ再生可能エネルギー、その中でも割のいい太陽光発電を使った方が儲かるということになります。その上、再生可能エネルギーは買い取りが義務付けられていますから、発電業者からすると太陽光パネルを敷き詰めるだけでいい。
 そんな状況で発送電分離が行われるとどうなるか?
 発電会社は経済性を考えて太陽光発電が多くなるでしょう。そうすると、天候によって発電量にバラツキが出ることになります。そして、再生可能エネルギーは発電された全量を買い取る(=使う)義務がありますから、太陽光で大量に発電出来た日はそれだけで需要を満たせるかもしれませんが、曇りや雨の日は太陽光だけでは力不足で、火力、水力などを併用せざるを得ません。しかし、そんなに機動的に火力発電、水力発電ができるのか?出来なければ当然停電が頻発することになります。
 さらに、全量買い取り義務は送配電会社が負うとのことなので、電気の仕入れ料金が上がることになります。そもそも高コスト体質となる送配電会社が安く電気を供給するためには、送電線などのインフラコスト、メンテナンスコストを削るしかありません。そうなると、JR北海道の例を見る通り、長期的に見れば設備がボロボロになって停電が頻発するでしょう。ダブルで停電頻発のリスクとなると、自宅で酸素吸入などをしている方にとっては命にかかわる政策変更となります。

 

 結局、固定価格買い取り制度の太陽光発電への極端な傾斜が電力改革の様々なところに歪みを生み出している気がしてなりません。そして、この問題は政府が適正な買い取り価格に変更するだけであらかた片付くのです。消費者に様々な不便を強いてまで太陽光発電業者を儲けさせ続けるメリットは何なのか?政府はきちんと疑問に答えるべきなのではないでしょうか?

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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