東京五輪決定で、経営的に厳しい局面が続いている家電業界が「これでテレビが売れる!」と沸いています。政府も、新技術である4K、8Kテレビも実用化へ!と総務省を中心に企図していて、
『「2020年には8Kテレビ普及へ」と新藤総務相 東京五輪開催に向けて』
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130910/biz13091017450017-n1.htm
(産経新聞 9月10日)
新技術搭載モデルへの買い替え需要も追い風になっています。
さらに、地デジ化で多くの人がテレビを買い替えたのが2010年~11年。2020年の東京オリンピックはあれからちょうど10年に当たるので、循環的な買い替え需要も追い風になり、オリンピック景気は相当な風が吹くとも言われています。
と、思いきや!東京オリンピックの視聴率はさほど伸びないという不吉な読みをする向きもあるんです。というのも、思い出していただきたい、5年前の北京オリンピックを...。あの時、一部競技の決勝は午前中に行われませんでしたか...?今回同じことになれば、注目の決勝が行われるのは仕事中。せいぜいオフィスのパソコンでチラチラ見るか、営業途中に実況を流しているどこかの喫茶店にでも入って見るぐらい。家で、新しいテレビに買い替えてまで見たいと思わないかもしれないんです。
しかし、経済的にも千載一遇の大チャンス、オリンピック。せっかく自国開催を勝ち取ったというのに、なぜこんなことになってしまうのでしょうか?そもそも、1964年の東京オリンピックは10月10日に開会式を行ったわけですから、今回も気候のいい秋に行えばいいと思うんですが、現代ではそれも含めて決して許されません。
それは、アメリカの力。
84年のロサンゼルス五輪以降、放映権を売り出して五輪を運営するようになったIOC。この放映権料は年々上昇し、払う金が増える分だけTV局側の発言力が強まっています。日本の場合はジャパンコンソーシアムといって、NHKも民放もお金を出し合って放映権を買っているので一つの放送局の発言権というものは大して大きくないんですが、アメリカは違います。広大なアメリカの3億人を超える人口に向けて放送するすべてのオリンピックコンテンツの放映権を、3大ネットワークの内の一つ、NBCが莫大な金額で買っているわけです。それゆえ、NBCは自社の最も有利な時期にオリンピックを開催するよう要求します。
さて、ここでアメリカのテレビのシーズンをご紹介しましょう。アメリカは学校やスポーツ行事など、年度の始まりは9月。それゆえ、テレビも通常9月から始まり5月頃には1シーズンの放送が終わります。キラーコンテンツは、NFL(アメフトのプロリーグ)中継と、ドラマシリーズ。年を越して5月までは各局これで勝負します。そして、その後残りの半年は、前の半年の再放送でつなぐのです。
要するに、9月から翌年5月までがハイシーズン。
その後はシーズンオフとなって、人が余っているんですね。人が余っているうえに、再放送よりも視聴率が期待できるオリンピックはこの時期にぴったり。しかも、その高視聴率の流れを次のハイシーズンにつなげようと思えば...、私がNBCの編成局員でも、オリンピックは8月に開催してもらいたいと思います。
それゆえ、現代オリンピックは8月に開催するよりほか仕方がないんですね。そして、アメリカでもヒトもカネも集中している東海岸で仕事終わりにゆっくりリビングのテレビの前でビールでも片手にオリンピックを観戦できるようにするには...、アジア時間の午前中に決勝をやってもらうのがちょうどいい。ではコレ、日本の実行委員会の力で何とかなるのか?と言えば、どうやらそれも難しそうです。最終的な開催の責任は負うものの、それまでの枠組みを決めるのはIOC。やっぱりオリンピックはIOCのイベントで、開催地の権限というのは制限されてしまうようです。
ということで、決勝を日本のゴールデンタイムに実施しようとするには、オリンピックを東京に招致する以上のロビー活動が必要なのかもしれません。
ん~、何という不条理!
政治とスポーツは違うと言われていますが、国際政治のドロドロが垣間見える気がします。
1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。
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