2013年09月04日

それでも上げる?消費税

 消費税を来年4月に上げるかどうかについて、安倍総理が判断するであろう時期がどんどん後ろにずれています。といいますか、新聞が「ここで判断する!」「いや、ここで!」という予想(飛ばし記事)を乱発したんですが、予想をハズしまくっているわけですね。たとえば、7月半ばぐらいまでは、今、9月アタマの時点ですでに増税が決まっているという予想でした。

 

『消費増税、最終判断は9月=8月にも方針-麻生財務相』http://bit.ly/1aiC9Dx(時事通信 7月23日)
『消費増税2段階上げ 麻生財務相、G20で報告へ』http://s.nikkei.com/17sODjX(日本経済新聞 7月30日)

 

 9月のG20サミットに消費増税を持って行って報告するんだというのが趣旨でしたね。その後、予想が外れたと見ると、ちょっと後ろにずらして9月半ば説が出ました。

 

『消費増税、首相「経済指標など踏まえ秋に判断」』http://bit.ly/1aiD0Ef(読売新聞 8月26日)

 

 4~6月のGDP二次速報が出たら判断するだろうということですが、これも外れ。ついに、10月の声を聴くに至りました。

『消費税増税、首相の最終判断は10月1日 日銀短観「最後の指標に」』http://on-msn.com/1aiDzhu(産経新聞 9月4日)

 

 この一連の流れを見ていると、まるで総理が判断をズルズルと引き延ばしているように見えます。そうした見方を示して、「迷わずに決められる政治を!」と主張するような新聞まである始末です。本当に総理は引き伸ばし戦術をやっているのか?実は安倍総理、今年2月にはいつ決めるのかを参議院本会議で明言しているんですね。

『国会会議録検索(国立国会図書館)』http://bit.ly/1aiKqaK

 2月1日の参議院本会議の中でみんなの党の水野賢一議員の質問に答え、
「引上げ実施時期の半年前に、経済状況等を総合的に勘案して判断することとなります。」
と答弁しています。来年4月1日に引き上げを実施するので、その半年前が今年10月1日。何だ、前々から言っているじゃないの!ということで、各メディアが消費増税の判断時期について勝手にわあわあ言っていただけだったんですね。まさしく、メディアがニュースを作るという好例です。

 

 さらに、今さら言うまでもありませんが、消費増税に関してはすでに国会で法律が通っています。もし初めから来年4月に上がることが決まっているんなら、議論なく、波風立てずに静かに上げる決断をした方が賢い。それなのに、専門家を60人も官邸に呼んで、一週間もかけて議論をしています。

『消費税「予定通り増税を」7割超 政府の点検会合終了』http://s.nikkei.com/1aiLCuH(日本経済新聞 8月31日)

 専門家の7割が増税賛成だから、これで4月の消費税アップは決まったようなもんだという論調が目立ちますが、あえて実施した、予定になかったこの会合。その上、人選は政府側で自由に決められたのに、増税賛成派を多く呼んでいます。深読みすれば、増税賛成派へのガス抜き会合だったのでは?と疑ってしまいます。

 

 それに、仮に来年4月に8%に上げたとしてその後の経済がどうなるのか、各シンクタンクが予想を出していますが、これが厳しいもの。たとえば、大和総研の日本経済予測改訂版。http://bit.ly/1aiNVxI
 これに「改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+3.0%(前回:同+3.1%)、2014年度が同+1.2%(同:同+0.7%)である。」とあります。しかしこの数字も、「今回から前提条件として、3兆円規模(真水ベース)の2013年度補正予算編成を想定したことなどから、2014年度の経済見通しを上方修正した。」となっているわけです。補正を入れても1.2%の成長で、翌年に10%へのさらなる増税ができるでしょうか?
 増税一直線の日経系列の総合経済データバンク「NEEDS」はもっとひどい。
『13年度実質2.5%成長、14年度0.0% NEEDS予測  4~6月期速報織り込む』http://s.nikkei.com/17tfw7u
 14年度はゼロ成長。これで10%に増税をしようものなら、間違いなく経済は冷え込みます。結局、損して得とれではありませんが、増税至上主義者であっても来年4月の増税をいったん引っ込めた方が最終的に痛みも少なく増税増収が見込めるのではないでしょうか?それを見込んでか、読売新聞は来年4月の増税反対に社論が変わりました。

 

 さて、増税推進派の中には、
「増税しなければ日本国債の信認が揺らぐ。国債が売られて、暴落する~!!!」
と主張し続ける方がいます。では、日本国債がどれほど危ないのか?これを客観的に判断する指標がクレジットデフォルトスワップ(CDS)です。用語集で調べると「社債や国債、貸付債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たすデリバティブ契約のことをいう。」とあるんですが、要するに債務不履行になった時に元本・利息などを払ってくれる保険です。
 保険ですから、リスクが大きければ、その分保険料が高くなる。つまり、CDSの値が大きくなります。では、日本国債のCDSはいかほどか?
http://bit.ly/1avkFB9(ブルームバーグ)
 昨日3日の時点で、およそ66ベーシスポイント。1ベーシスポイント=0.01%なので、0.6%ほどしか保険料を取られない計算です。これは、ざっと200年に1度破たんするかどうかという予想。CDSを買っているのは世界中の市場関係者ですから、世界中が日本国債をハラハラしながら見守っているなんてのは「ウソ」とわかります。
 さらに、増税判断まで1か月を切りました。前々から言われていた通りなら、すでに増税を決めていなくてはいけない時期に決まっていないことになります。増税見送りの可能性があって、なおかつ見送れば国債破たんリスクがあるのなら、すでにCDSの数値が上がっていっていなくてはいけません。しかし、むしろピークの6月20日からゆるやかに下がっていますね。市場はリスクを織り込むものですから、やはり日本国債の信認は確固たるものがあるといえるのではないでしょうか?

 

 ここまで見てきて「上げない」リスクはほとんど見られません。むしろ、「上げた」ときのリスクばかりが見えてきます。それでも、政治家やメディアは増税賛成なんでしょうか?メリットがあれば教えていただきたいものです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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