2013年08月29日

それで汚染水は止まるのか?

 福島第一原発の汚染水問題に、世界中が注目しています。イギリスBBCやウォールストリートジャーナルが特集を組んだり、アメリカABCも西海岸・ロサンゼルスの海岸に記者を出し、「沢山の震災ガレキが流れてきている中で、放射能汚染された海流は来ないという保証はあるだろうか?」というような報道がされています。

 

 これに対し、政府が予備費から拠出し汚染水対策を本格的に進めるとしています。
『福島原発の汚染水対策、13年度から国費 予備費活用』http://s.nikkei.com/1cynwtd(日本経済新聞)
閣僚各氏もこの方針を支持しています。
『汚染水トラブル「予備費活用し対策を」』http://bit.ly/1adLj4e(NHK)
汚染水の流出は一刻も早く止めなきゃならないし、そのためには国費投入に国民も賛成するでしょう。しかし、その方法に疑問が拭えません。どのニュースを見ても、「凍土壁」「土を凍らせた壁」で水の浸入を止めようとしています。果たしてこれが、現状取りうる最良の手段なのでしょうか?


 事故当時の原発事故担当総理補佐官、馬淵澄夫民主党幹事長代行は5月にメルマガでこう指摘しています。

 

(引用ここから)
考えられるメリットはコストと工期。数百億円程度というこ
とから、かつて僕が総理補佐官として検討してきたベントナイ
トスラリーウォールに比べて安価かもしれない。また、凍土に
するための凍結管施工はベントナイトスラリーウォールよりも
簡易にできるだろう。
要は、早く安く出来るということ。

 一方、デメリットはどうか。
地下水流入の地中が、均一に熱が伝播され、均一に水が存在す
るという理想条件であれば効果があるかもしれない。
しかし、凍結させようとする土壌に異物や構造物があれば、そ
こを抜け道として水か進入する。理想的状態を前提としている
のは危険だ。
そして、この工法の方がスラリーなど物理的な壁よりも効果が
高い、と言っているが、これはあくまで理想状態であるとの前
提に過ぎない。

 更に、疑問が発生するのが、本当に凍るのかどうかだ。
400トン/日もの大量かつ温度が高い地下水が供給され続けてい
る中、一部の温度を低下させるだけで完全な遮水状態を生み出
すほどの凍結が起きるかも疑問だ。
例えて言うなら川の中に凍結管を入れて、流れが止まるのか?
ということだ。

 そして、30mという深さによる地下水圧の問題もある。
凍結した土壁が、流入する地下水圧に耐えられるかどうか。
水が浸透する力は非常に強く、すぐに水が浸入する恐れがある。
(引用終わり)
『まぶちすみおの「不易塾」日記 13年5月31日第1747号』

 

 このメルマガの中で「川の中に凍結管を入れて、流れが止まるのか?」というたとえ話がありますが、たとえどころか本当に川の中に凍結管を突っ込むことになるようです。
『福島第1原発の汚染水封じ込め、メルトダウン以来最大の試練』http://on.wsj.com/1adOKrF(ウォールストリートジャーナル)
 この記事にある通り、40年前に川の流れを変えて建設されたので、ジャブジャブと地下水が入り込んでくるわけです。流れている水を本当に凍らせることができるのか...?それを分かっていながら、ではなぜこの工法を採用するのか...?その答えは、馬淵氏のいうこの工法のメリットに表れています。

 要するに、カネ。

 無い袖は振れぬ東京電力は、この工法を選ぶより他なかった。政府も、一私企業である東京電力に税金を突っ込むにあたって、どんなに不景気でも増税しなきゃ財政が立ちいかないと触れて回っている手前、あまりジャブジャブ税金を入れるわけにもいかない。どちらがイニシアチブをとるにせよ、今のままの状況では効果は定かでなくてもこの工法を取るしかなかったわけですね。

 

 しかしこのままでは、税金の逐次投入をやっていたずらに状況が悪化していきます。なぜ、税金の逐次投入になってしまうかといえば、東京電力が一私企業だから。私はやはり、東京電力をいったん法的整理して株主や銀行団に応分の責任を負ってもらった後、具体的には資産を整理して、そののち原発事故対応の部分は国家管理にするより仕方がないと思うんです。貧すれば鈍すと言いますが、カネがないのを言い訳に悪手を許していはいけません。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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