2013年08月01日

それでも歴史は繰り返す?

 消費増税に関しては、秋に判断されるということなので、議論をするにはまだ早いんじゃないかとも思うんですが、現在、様々な経済指標が出てきていて、それをもとに消費増税を決めてしまおうという勢力も様々あるようです。
 たとえば、4月~6月のGDP成長率。政府発表は8月12日の予定なんですが、民間シンクタンク予想を並べて消費増税が可能という相場観を作ろうとしたり...
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013080100691
 11社が揃って消費増税問題ないっていうのもおかしな話で、それならばシンクタンクは数社あれば十分です。政策を提言するのが仕事なら、様々な角度から意見を出すのがシンクタンクのはずなんですが、それとも消費増税はそんなに理想的な政策なんでしょうか?増税が理想の政策だなんて、まるで民主党政権の二の舞ですね。

 

 続いて、失業率。0.2ポイントマイナスの3.9%になり、リーマンショック前の水準となりました。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/
(総務省統計局)
 もちろんいい数字であり、喜ぶべきものなんですが、気を付けなければならないのが、就職をあきらめた人はそもそも母数に入らないということ。たとえば、夫の給与が上がって妻がパート探しをしなくなったという例もあります。その給与については、同じタイミングで厚生労働省が毎月勤労統計調査を出しています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/25/2506p/2506p.html
 現金給与総額は0.1%のプラスではあったんですが、内訳を見ると、上がっているのは所定外給与、いわゆるボーナス。月給にあたる所定内給与はマイナス0.2%で、基本給はまだ上がっていないことになります。これで増税となれば、生活は当然苦しくなりますよね。ボーナスをあてにして生活してはいけないって、新入社員研修でも習うことです。

 

 そして、消費者物価指数。先週このブログで指摘した通り、コアコアCPIはマイナスでも、総合指数や生鮮食料品を除いたコア指数がプラスだったので、もうデフレから脱却したような書きぶりです。

『消費者物価指数、1年2か月ぶりプラスに』(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130726-OYT1T00249.htm?from=ylist
『6月の消費者物価指数、1年2か月ぶりプラス』(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0726/TKY201307260025.html

 なんと、読売も朝日も見出しがほとんど一緒!この両社、部数争いで鎬を削っているんじゃなかったんでしたっけ?ちなみに、コアコアCPIも含めた数値は...
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
(総務省統計局)

 経済部記者がご執心のコアCPIにしても、前年同月比でみると0.4ポイントのプラスですが、実は指数そのものは5月と一緒。これでデフレ脱却といえるのか?
 さらに、コアコアCPIのグラフを見ると、上がり下がりがあっても震災前から一貫して右肩下がり。アベノミクスが始まったとされる今年1月以降で見ても、アベノミクスへの期待で株価が上がりだした去年11月以降で見ても、数値はほとんど変わっていません。この数字をどう読めば、デフレから脱却したと言えるのでしょうか?私にはわかりません。

 

 歴史に学べば、この時期の消費増税はリスクが高いとはっきり出ています。前回消費税を3%から5%に上げたのは、1997年4月。今、目の前にあるデータと条件が同じ、増税前年の6月の各数値を並べると、
・CPIは、コアコアでプラス0.6%(2013年6月はマイナス0.2%)。(※1)
・GDPは、4月~6月の数値を年率換算した名目GDP季節調整済みでプラス4.3%(同3.4%予想)。(※2)
・完全失業率は、季節調整済みで3.4%(同3.9%)。(※3)
 ご覧の通り、主要な数値は1997年の増税直前の方が良かったわけです。では、景気はその後どうなったのか?GDPはその増税の年、1997年の523兆1983億円をピークに、その後15年間一度もその額を超えられずにいます。当時も好景気だと判断して増税してみたものの、見事に景気を冷やしてしまってその後立ち直れていないわけです。これをアジア通貨危機のせいだという人もいますが、アジア通貨危機は全世界的に影響がありました。ところが、15年も立ち直れていないのはさすがに日本だけ。それでも、歴史を繰り返すのか?安倍総理の懸命なご判断を願うばかりです。

 

※1 http://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.htmの中の『全国(品目別価格指数)・月次 (1970年1月~最新月)』参照
※2 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2013/qe131_2/gdemenuja.htmlの中の、『年率換算の名目季節調整系列(前期比)』参照
※3 http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htmの中の完全失業率【年齢階級別】参照

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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