2013年07月18日

岩盤は選挙後にあり

 安倍官邸のアグレッシブな人事が続いています。
 事務次官人事では、厚労次官に村木厚子さんを起用しました。
『村木厚子厚労次官を正式発表 女性登用は2人目』(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/476265.html

 厚労省の文書偽造事件で逮捕された後、検察による証拠の改ざんが発覚し無罪判決となった方。旧労働省出身なんですが、実は前任の次官も労働省出身。2代続けて労働省出身というのは、バランスを重んじる官僚の世界では異例の人事で、女性の活力を重視する安倍官邸としては目玉の人事の一つです。

 

 さらに、外務次官人事。任期途中の河相次官を事実上更迭し、斎木外務審議官を次官に昇格させました。
『外務省、斎木次官を発表』(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2704Z_Y3A620C1EB2000/
 斎木氏は安倍総理が小泉内閣の官房副長官を務めていたときから北朝鮮の拉致問題に取り組んできた間柄。前政権で次官に就任した河相外務次官は、民主党色の払拭という意味もあり、一年足らずでの退任となりました。

 

 この、一連の官邸主導の人事。選挙中は政治休戦ともいわれる中、総理の得意な防衛の分野で着々と進められています。

 まず、海上保安庁長官に初めて現場の制服組が起用されました。
『海上保安庁:長官に佐藤雄二氏昇格へ 現場出身で初』(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130718k0000e010164000c.html
 現場の士気向上を狙い、総理主導で行われた人事のようです。

 さらに、
『自衛隊運用、制服組に移管 来年度にも、文官部局は廃止』(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0718/TKY201307171014.html
 自衛隊の運用、つまり作戦企画立案に関して、現場を知らない官僚(背広組)ではなく、現場の幹部自衛官(制服組)が仕切るようになるということです。これが『文民統制』に悖るという意見もありますが、選挙で選ばれた政治家が大臣としてグリップするということが本当の文民統制であって、選挙を経て民意の裏付けがあるわけではない、「文官」たる官僚がグリップするのは「文民」統制ではありません。第一次安倍政権当時からこの構想があったそうで、ようやく真っ当な人事が行われたということですが、官僚機構そのものをいじるというのはなかなか思い切った決断です。

 

 さて、近づいてきた参院選で自民党が大勝すれば、この流れに拍車がかかり、官邸としてはさらに動きやすくなりそうですが、すでに巻き戻しの動きも起きています。
『規制改革会議、農業など作業部会を5つに再編』(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57423350X10C13A7PP8000/
 先の通常国会の終了直前、発送電分離の一里塚になると言われた電気事業法改正案が廃案となってしまい、エネルギーや環境といった分野はこれから仕事が増えるはずなんですが、作業部会は休止...。発送電分離をされると厄介な電力会社や、そこから支持を受ける政治家、官僚が動いたのでは...?と勘繰りたくもなる決定。選挙の前後という目立たないタイミングというのも、何やら怪しいにおいがします。
 先日番組でご一緒した、産業競争力会議の有識者委員、竹中平蔵さんは、
「参院選で自民党が大勝すれば、受かってくるのは業界団体に推された人や業界団体出身者が多数入ってくる。そうなれば、党内世論が改革を拒否するようになって、安倍さんはむしろ動きづらくなるんではないだろうか?」
と心配していました。
 一時は維新の会やみんなの党といった野党とも改革の分野で手を組むことも考えていたという官邸サイド。橋下発言などで今となってはそれも望めず、政権の正念場はむしろ、選挙が終わった後に訪れるようです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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