2013年06月21日

日本は破たんする?

 G8サミット、主要国首脳会議が終わりました。今回は、日本の経済政策アベノミクスが各国で評価されましたが、一方で日本政府の財政赤字についてクギを刺される格好になり、それをメディアは大きく報じています。
『独首相、円安の進行をけん制...安倍首相と会談』(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130618-OYT1T00284.htm?from=top

 

 さて、この財政赤字。

「一刻も早く解消しないと日本は破たんする!破滅の淵へ追いやられる!」
 なんともおどろおどろしい言葉で読む者を脅迫するわけですが、はたして本当にそんなことがあるんでしょうか?言葉のイメージだけで語っているとあっという間にミスリードされてしまいます。よくあるのが、話を分かりやすくするためか煙に巻くためか、よく家計や企業の会計になぞらえて話をすすめる手法。実は、これが大きな間違いなのです。
 たとえば、「税収47兆に対して支出が92兆。毎年45兆もの新たな借金を生み出している。これは、月40万稼ぐ家で、毎月79万浪費して39万借金している自転車操業。で、さらにそんな家に7631万円の借金残高が残っている。こんなデタラメなことをやっていたら、どんな家でも破産でしょう?今、この国はこんな状態なんです!」
というもの。
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014_25_04.pdf

 

 これに対しては、「国と家計では同じ借金でも質が違う」というのをまず押さえておかなくてはいけません。家計の場合の借金は一代限り。そりゃそうです。死んでしまったら返せませんからね。だから、住宅ローンでは団体信用生命保険に入ったりして、債務者がなくなった場合は借金がチャラになるように設計されている(債権者が取っぱぐれないようにしてある)わけです。
 ですが、国(政府)は未来永劫続くという前提で存在しています。これ、小さな違いのようで、実は非常に大きな違いなんです。すなわち、借金を繰り延べようと思えば永遠に繰り延べられる。一応、10年、20年といった区切りがありますので、その都度新しい国債と交換していけばいいんですね。とはいえ、借金というものは信用がなければできませんから、そんな自転車操業を繰り返していけばそのうち借金できなくなりますよね。しかし、先ほどのたとえ話がこう変わったらどうでしょう?
「月40万稼ぐ家で79万の支出、39万の借金。ローン残高は7631万だが、土地と持ち家を合わせると1億円相当の資産がある」
さらに、
「今は不景気なので月40万しか稼げないが、景気が良くなれば50万、60万と稼げるようになる。また、80万の内訳はローンの借り換えが15万ほどある」
こうなると、自分が貸す側だとして、ちょっと目先が変わってきませんか?すなわち、

「借り換え分を除いて、実際必要な経費を5万~10万詰めて、景気が良くなって60万も稼げば、ちょっとずつ借金を返してくれそうだ。
しっかりとした収入アップの道筋と、経費節減方法を示してくれたらもうちょっとなら貸せるかな。」

 

 現在の国の借金を家計に例えるなら、ここまで説明しなくては不親切。ミスリードになってしまいます。ちなみに、現在の国有財産がいくらあるかというと、102兆円あまり。
http://www.mof.go.jp/budget/report/46_report/fy2013/h25w.htm#02
 しかし、これも正確な数字とは到底言えません。なぜなら、資産は取得価額で発表されているからです。たしかに、この表の土地の部分だけでも、価格を面積で割ると1平方mあたり196円(!?)という金額が出てきます。一方で、国税庁が発表している路線価、霞が関周辺は軒並み1平方mあたり300万、400万という数字です。いかに全国に870億平米の土地を持っていようとも、平均するとそんなに安くなるか?というものです。

 

 ところで、家計や企業は基本的に利益を出すことを目的にしています。黒字を出さなくちゃ給料も出ないし、ローンも返せませんからね。ところが、国(政府)の目的は利益を出すことではありません。国の存在目的は、公共の福祉のため。あまねく国民が健康で豊かで平和に暮らすことが目的です。自由競争の中で脱落してしまった人にも手を差し伸べるために存在しているとも言えます。ですので、今のようなデフレ下で、企業も家計もお金を使わない、リスクを取らない状況では、政府が借金を多少膨らませてでも積極的に支出することがむしろ求められるわけです。
 もちろん、このまま毎年借金を野放図に重ねるのもそろそろ限界を迎えるのも確か。せめて、借り換え分は除いて、入るお金と出るお金をトントンにしようというのが、プライマリーバランス黒字化というものです。出る金と入る金をトントンにすれば、少なくともこれから先借金が増えることはない。で、景気が良くなれば入るお金は自然と増えますから、今の内から少しずつ出るお金を減らしていく。急激に公共事業を減らしたり、社会保障費を大幅に削るのではなく、少しずつ手を打って、景気が上向くのを待つのが得策なのではないでしょうか?
 急激な歳出削減と増税でますます景気が悪くなり、失業率が急上昇し社会不安まで起こったのがギリシャでした。ドイツのような性急な財政均衡を志向するのは我が国の行く道ではないと、私は思います。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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