2013年06月05日

やはり見えてくる成長戦略の影...

 安倍政権第3の矢、成長戦略の第3弾が発表されました。今回は、「民間活力の爆発」をキーワードに、薬のネット販売の解禁をはじめとする規制改革や国家戦略特区の活用、さらに電力の発送電分離にも言及するという内容でしたが、見出しはわかりやすい数値目標でした。

 

『【首相が成長戦略第3弾】10年で所得150万円増、国家戦略特区新設』(産経新聞)http://on-msn.com/19I6GHM
『所得、10年後150万円増=特区で容積率緩和-成長戦略、安倍首相が第3弾発表』(時事通信)http://bit.ly/11kgP71
『首相 成長戦略で国民総所得150万円増』(NHK)http://bit.ly/19I9hS5

 

 成長戦略の第2弾が出た時にこのブログで、官僚などの漸進的改革派が主導権を握りつつあると書きました。では、第3弾でその流れはどうなったのか?それは、この見出しが物語っています。

 一見、目覚ましい目標を掲げているように見える今回の発表。「10年で150万円増!」というと、池田内閣時代の「所得倍増計画」を思い起こさせ、「やっぱりアベノミクスは違う。具体的だ」と思ってしまいます。
 私も最初はそう思いました。
 しかしながら、今までは「物価上昇率目標年2%」とか、「農業・農村全体の所得の倍増」といった、パーセンテージや割合で示していたものが、今回急に150万円という金額での提示。それも、今までは仮に金額を明示しても「インフラ輸出2020年までに3倍の30兆」など、国全体としてどのくらいという目標だったものが、今回は個々人の手元に残る具体的な数字を提示してきたわけです。
 これは怪しい...。

 で、調べてみるとこれはもともとあった古い成長戦略の焼き直しに過ぎないことがわかってきました。

 過去、幾多の政権が「成長戦略」を作ってきたわけですが、直近の成長戦略は民主党・菅政権当時に策定された「新成長戦略」(http://bit.ly/11kpKFz)。

 その中では、2020年度までの平均で、名目3%、実質2%の成長を目指すとしています。

 次に、直近の平均給与を調べてみると、平成23年度実績で409万円。(国税庁調べ http://bit.ly/11kq9HW
 そこで、409万円を名目の伸び率3%で複利計算してみると、10年後には...、5,49万6,618円。およそ550万円。ざっと、伸びた分が140万円!10年で150万円増という数字とほぼ一致します。
 ということは、議論を進めたように見せながら、結論は3年前・2010年の成長戦略とほぼ一緒。ただし、看板だけは架け替えているという、目くらまし。官僚仕事を見て取ることができるわけです。そして、その新しい看板がそのまま、正式発表の前日や前々日から新聞の見出しを飾ったわけで、官僚側の意図的なリークまで感じることができます。

 

 安倍総理は今回の発表で、
「成長のために必要であれば、どのような『岩盤』にも、ひるむことなく立ち向かっていく覚悟です」
とスピーチしていました。問われているのはその「覚悟」。来週の閣議決定の時に、国民が納得するだけの全体像が描けるのか?悪い予感がするのは、私だけでしょうか...?

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
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