2013年05月27日

カレンダーから推理する衆参ダブル選挙

 衆参ダブル選挙という言葉がチラホラと新聞紙上、雑誌の広告などで見かけるようになってきました。私自身は、3月に東京地裁が先の衆院選を「違憲」と判断した時にこのブログに、「改憲を主張する以上は、解散総選挙をすべきだ。そうなればダブル選挙だ」と書きました。(http://bit.ly/123bwiG
 その後96条改憲の議論が盛り上がりかけ、今回の橋下発言などがあり急速に下火になりましたが、さりとて現在の衆議院議員が違憲状態の選挙の下で選ばれたという批判は甘んじて受けなければなりません。参院選後の改憲論議を考えると、障害は一つでも取り除いておかなければならない。そう考える安倍官邸が衆参ダブル選挙を考えても理論上おかしくはないわけです。3月の時点では、衆院選の記憶生々しく、また選挙となると厭戦ムードにありましたが、さらに3か月がたって永田町も空気も変わってきました。ダブル選も、あながち冗談や妄想ではないわけです。

 

 さて、ダブル選挙をするにも、様々な条件が整わないことには行えません。順に整理していきましょう。
 まず、大前提として、このダブル選挙で衆議院選挙は「合憲」の下で行わなくてはなりません。すなわち、一票の格差を是正した上での選挙でなくてはいけないわけです。そのためには、衆議院を通ったあと参議院でいまだに審議に入っていない定数是正法案、いわゆる「0増5減」法案を成立させなくてはなりません。この法律改正は選挙の区割りを変更するもので、成立後すぐに施行し選挙というわけにはいきません。選挙区の線引きを変更したり、合併させたりするものなので、慣例としては成立後1か月ほどの「周知期間」を置く必要があります。つまり、公示日前日に施行するとしても、改正案成立から選挙の公示まで最低1か月必要ということですね。
 ちなみに、「周知期間」は、官報による公布をもって期間入りとなります。公布には閣議決定が必要となりますので、成立→閣議決定→官報公布のタイムラグも頭に入れておく必要があります。さらに、衆議院選挙の場合、公示から投票日までの選挙運動期間は12日と決められていますから、投票日の1か月+12日+公布までのプラスアルファを考えて区割り法を成立させなければなりません。

 

 ここで、カレンダーを持ってきましょう。今言われている参院選の投票日、7月21日から逆算して、どこが法案審議のデッドラインとなるのか計算します。7月21日の12日前の7月9日(火)が公示日。公示日の前日までに区割りが施行されていなければならないので、施行が7月8日(月)。となると、周知期間の一か月を考えると官報の公布は6月8日(土)。しかし、土・休日は官報は出されないため、6月7日(金)の官報で公布と考えると、それに先立つ閣議決定は、定例閣議なら火・金なので6月4日(火)。ここまでには法案が成立していなくてはならないわけですね。
 今週アタマに審議入りをしたとして、採決までの審議期間は1週間強。与党は、ねじれの参院で否決されても、多数の衆院で3分の2以上をもって再可決して成立させるつもりですから、早く審議を始めてもらいたい。一方、野党はそれを見透かし、いまだ審議入りをせず、審議入りをしてもある程度きちんとした審議時間を要求しています。それにより衆参ダブルの時間切れを狙っているわけです。

 となれば、スケジュールがかなりタイトになっているので、普通ならばこれで『ダブルはない。』となるわけですが、実はもう一つ裏ワザを使えばだいぶ時間を稼げます。それが、公職選挙法第32条。

 

(通常選挙)第32条 参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う。
2 前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から23日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から24日以後30日以内に行う。
3 通常選挙の期日は、少なくとも17日前に公示しなければならない。

 

 改選の参院議員の任期は7月28日までですから、最大そこまでの国会延長が可能。そして、そこから計算すると、「閉会の日から24日以上30日以内」ですから、8月25日(日)投票日となります。仮に0増5減法案がこのまま宙ぶらりんになっていたとしても、「会期延長」の声が聞こえ始めると、ダブル選挙が近づいてきたというサインとなりそうです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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