2013年05月20日

成長戦略を主導するのは...?

 安倍政権の「3本の矢」のうちの第3の矢、成長戦略の第2弾が、今月17日(金)、日本アカデメイアの交流会で発表されました。
『農業改革やインフラ輸出で「世界に勝つ」、首相が成長戦略第2弾発表』http://on-msn.com/16uiQ8c(産経新聞)
 キーワードは「世界で勝って、家計が潤う」。前回は再生医療や女性などに関する成長戦略でしたが、今回は農業改革やインフラ輸出などが主なテーマでした。

 

 そもそも、安倍政権の成長戦略を議論する場は、経済再生本部の下にある産業競争力会議や、内閣府に設置された経済財政諮問会議、規制改革会議などなど。このところ、様々な会議で議題に上った様々な施策が新聞紙面をにぎわしています。その中には、解雇の金銭解決のように華々しく登場した割に、その後各方面から批判されて撤回したものもありました。多くの新聞の論調で期待されているのは、いわゆる『岩盤規制』をぶち破ること。たとえば、混合診療の解禁、株式会社の農地所有の自由化などということになります。

 一方で、産業競争力会議では、民間議員同士の不協和音が聞こえてきます。巷間言われているのが、竹中・三木谷(楽天)・新浪(ローソン)VS岡(住友商事)・佐藤(みずほFG)という顔ぶれでの綱引き。とにかく規制をなくしていこう、岩盤規制を打ち破ろうという前者・構造改革派に対し、漸進的に変革していこうという後者。官僚としてはどちらが組みしやすいかといえば、それは後者。さらに、与党・自民党側の日本経済再生本部も、参院選を前に各支持団体の陳情を受け、後者のような漸進的な改革にとどめておきたいという思惑が見え隠れします。四面楚歌状態の前者・構造改革派は、野党・日本維新の会にも助けを求めました。ある維新国会議員は、構造改革派の民間議員から「外野からどんどん援護射撃をしてくれ」と頼まれたといいます。

 

 そんな綱引きがだんだんと熱を帯びてきていますが、最終的にどのような形で表に出すか決断するのは、安倍総理の意向です。では、発表された今回の成長戦略第2弾は、どちら寄りなんでしょうか?それは、成長戦略をスピーチした交流会後の懇親会での挨拶にヒントがあります。

 

安倍総理「今日は当初は30分でスピーチを終える要求だったんですが、45分喋ってしまいました。なぜ長くなったかといえば、弾を籠めている最中ですから、その弾籠めが各省庁と調整しなくてはなりませんが、厚生労働省なんか一番抵抗する勢力なんですが、その抵抗によって弾として籠められない場合もありますので、その歩留まりを見て30分行くかなと思ったら、おかげさまでほぼすべて、今日申し上げたことは調整がだいたいできましたので述べさせていただいて、今日は時間が長くなったと」

 

少なくとも今回発表された成長戦略第2弾に関しては、すべて各省庁のお墨付きがついているものであることがわかります。今回の成長戦略第2弾は、いわば中間報告。当然、各省庁の既得権である岩盤規制を崩そうとするもの、紛糾しそうなものに関しては、このような中途半端なタイミングでの発表に入ってくるはずはありません。というか、各省庁が許さないでしょう。むしろ、官僚がやりやすいトピックを並べておくことで、それが翌日の新聞紙面を賑わし、相場観が形成されていく...。今までのところ、そうした漸進的改革派有利でゲームが進んでいるようです。では、そうした改革の本丸、岩盤規制の改革については「いつやるの?」ということですが、今回の交流会に参加したある企業経営者は総理のこんな発言を紹介してくれました。

 

「政治が政策実行能力を最も備えられるのは、選挙に勝った直後だ。成長戦略に絡む法案を選びながら行っていきたい。そして、だんだんと岩盤の硬いところとぶつかるような法案に当たっていく」

 

 本格的に改革に着手するのは、やはり参院選後が濃厚のようです。今、「構造改革の夢を再び」と期待している新聞、テレビなどの大手メディアが、それまで待てますでしょうか?「やっぱり自民党は先祖返りした!バラマキばっかりじゃないか!」そんな見出しが踊らないよう、こうして出せる部分を小出しにしているようにも思えます。とはいえ、安倍総理が常々おっしゃるように、「政治は結果」なんですよね。中間報告に一喜一憂せずに、本決まりの成長戦略を待ちたいと思います。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
「飯田浩司そこまで言うか!ONLINE」

最新の記事
アーカイブ

トップページ