2013年04月17日

TPPで議論すべきこと

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の事前交渉で、アメリカと合意に達したとのことです。
『TPP参加で日米合意、米国の自動車関税撤廃は最大限後ろ倒し』(ロイター) http://bit.ly/17nfBKU

 

 TPPに関しては、国内でも賛否が入り乱れていて、さらにその議論を見ているとイマイチかみ合っていないような気がします。賛成派はメリットのみを言い募り、反対派はデメリットのみを言い募る。たしかにTPPは関税撤廃のみでなく様々な分野にわたっているので、一言TPPという看板で議論しようとすると、各々の得意ジャンルでの持論をぶつけ合うだけに終わってしまいます。さらに、この議論では、本来TPPの是非を考える議論ではするべきでない議論までごちゃまぜになっているので不毛な水掛け論が続くようなのです。

 

 そもそも、国際交渉でのメリットというのは、相手国の制度や関税をどう自国有利に変えるのかに尽きます。したがって、日米交渉であれば、日本の国益とは、『日本側をいかに変えずに、アメリカ側を変えるのか?』ということ。こちら側の変更というのは、最終的に消費者のメリットになることでも、外交交渉の成果とは言えないわけです。

 となると、事前交渉でアメリカ側の自動車関税撤廃を最大限後ろ倒しするというのは、すでに交渉で負けているということになります。ここで譲った分だけのメリットは、今のところ『交渉参加』だけとなると、これは今後の交渉にも不安が募ります。

 

 一方、よくメリットとして主張される関税の撤廃。賛成派の中には、「関税がなくなれば輸入商品が安くなるので、我々消費者にはメリットが大きいんです!」と主張する人がいます。「TPPに入ると安く買えるんなら、たしかにメリットだ。TPP、いいもんじゃないか?」と思ってしまいがちですが、実は関税をかけるかけないというのは国内事情。日本政府の正当な権利、関税自主権です。海外からモノを安く輸入したければ、日本国政府の判断で関税を下げればよろしい。これがメリットと考えるのであれば、TPPの議論で言い募るのではなく、日本政府に関税を引き下げるように運動すればいいのです。別にTPPのメリットでもなんでもありません。

 

 また、TPPのメリットとして強調されている混合診療も疑似メリットの一つです。医療制度は、これまた日本国政府の判断であって、混合診療を導入したければ、法改正なり何なりを日本政府に運動すべき話。TPPのメリットではありません。

 

 どうも、TPP議論の中にはこうした「紛れ込み」トピックが多いので議論の焦点が合わないのかもしれません。TPPは従来の貿易交渉と比べると格段にカバーする範囲の広い協定なので、規制緩和を目指す人たちにとっては「使える」協定なのかもしれませんが、政府には産業競争力会議や規制改革会議といった議論の場があるわけです。同じトピックを2つ3つの場でやるのもムダな議論だし、異なる結論が出て混乱すればもう目も当てられません。国内制度の問題はこういった場で議論していただいて、TPPに関するメリット・デメリットは焦点を絞って深い議論をすべきではないでしょうか。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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