2013年02月19日

ネット選挙のリスクとメリット

ネット選挙解禁!という流れが盛り上がっています。今日、3回目の与野党の実務者会合が行われ、党公式ホームページへ誘導するバナー広告は認めることで一致。一方、メールに関しては折り合わず、再協議となりました。(http://bit.ly/Y1ocBh

 

 ネット選挙に関しては、濃淡の違いこそあれ、与野党各党とも基本的には賛成です。選挙にあたって、今まではホームページの更新など、ネットを使って議員の選挙活動をすることが公職選挙法で禁止されていました。したがって、ネット上で誹謗中傷された場合でも、そしてそれが事実と異なる場合でも、ホームページの更新ができない以上、一切の反論が許されませんでした。それが許されるのみならず、様々な方法で立候補者の政策を知らせることができるようになります。たとえば、政見放送。TVやラジオでの政見放送は、早朝深夜や平日昼間など、誰でも見られるような時間帯にはめったに放送されませんでした。時間を合わせて見ようとしても、政党順で放送されますから、自分の選挙区の候補をすべて見られずに終わることもあります。ネットで候補者を指定して見られるようになれば自由にみられるようになりますから、立候補者を理解するのに資することになります。これは、候補者側に要求される負担はありません。今までどおりでいいわけですから、今までむしろなぜやってこなかったのか?ということになります。

 

 が、物事には光があれば影がある。ネットの双方向性に思いを致せば、発信側のチャンネルが増えるメリットとともに、飛躍的に受信が増えるということも認識しておかなくてはなりません。今日の放送でジャーナリストの角谷浩一さんは、
「たとえば、有権者から大量の質問が来た時に、候補者たちは対応できるのか?毎日何千、何万という質問メールが来たときに、昼間選挙活動でクタクタになった候補者たちがこの負担に耐えられるかどうか?」
と指摘しました。
 自民党の石破幹事長も会見で、
「拙速な決め方はよくない。それぞれ候補者に差があってはならない。」
と語り、特にネットに弱いと言われるベテラン議員に配慮を見せました。確かに、もし専任のスタッフを雇うということになると、カネのあるなしで対応が分かれます。これでは、カネのかからない選挙のためにネットを利用するはずが、本末転倒です。

 

 さて、リスクとメリットを勘案してもなお、多くの政治家がネット解禁に希望を見ています。というのも、これが政治改革へつながる可能性があるからです。たとえば、ネット投票。これは「なりすまし」対策などまだまだ乗り越えなければならない問題がたくさんありますが、これをやれば投票率が大きく上がります。それも、若者の投票率が上がれば高齢者重視の政策が変わるかもしれません。あるいは、特定の業界・団体への利益誘導の政治から、政策本位の政治が実現するかもしれません。

 

 また、問題の多いネット投票まで行かずとも、ネット献金によって政治改革のきっかけにしようという動きもあります。ネット選挙解禁を進めるある議員は、
「今現在は、個人の小口献金があっても、身元の確認をしなくちゃいけない。前原さんの韓国国籍の方からの献金問題以来、世の中の風当たりも厳しくなったからね。で、スタッフ使って調査すると、正直千円二千円じゃ赤字なんだよ...。ネットで、チェックボックスにチェック入れる様な形で手軽に献金が出来るようになれば、こっちも調査しなくてよくなるから、世界が変わると思うよ」
この議員は、ネットを通じた個人の小口献金が一般的になれば、特定の団体に左右されずに政治ができる。そうなれば、政治資金規正法を改正して、企業団体献金の廃止も視野に入ってくると話していました。


これから様々なリスクが顕在化してくるでしょう。おそらく、参院選で様々な問題が浮上し、ネット選挙の是非が問われてくると思うんですが、そこで止めてしまうのではなく、その都度手直ししつつ有用なものにしてもらいたいものです。むしろ、参院選後のネット選挙への動きの方にこそ、注目すべきでしょう。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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