2013年01月22日

麻生発言をめぐって...

 アルジェリアの人質事件が悲劇的な結末を迎えた昨日21日、その間隙を縫うように、社会保障制度改革国民会議が開かれました。去年8月に行われた消費増税法案を通すのに、その引き換えとして開かれることが決まったこの会議。安倍内閣が発足して初めての会議だったんですが、ここでの麻生副総理の発言がちょっと物議をかもしました。誤解を恐れずに言えば、「揚げ足取りが始まった」ということです。

見出しだけをみれば、

「麻生副総理「さっさと死ねるようにして」終末期医療巡り」(日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2101P_R20C13A1PP8000/

「さっさと死ねるよう...麻生氏、終末医療巡り発言」(読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130121-OYT1T01077.htm
「「さっさと死ねるように」 終末医療で麻生氏失言」(東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013012202000109.html
 刺激的な言葉が並んでいます。東京新聞に至っては、見出しで明確に「失言」と書いていて、各新聞がこの発言を大きな問題だと考えていることが見て取れるわけです。

 

 まず、どんな発言があったのか?麻生副総理はその後発言を撤回し、議事録からも削除するとのことなので、一言一句正確にこういう発言があったという公式なものはありませんが、時事通信に発言要旨がありました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013012100565

 

 もちろん、その表現自体のデリカシーのなさは問題ですが、発言全体を見ると、終末期医療全体の問題点を指摘しただけとも言えます。もっと言えば、「命」そのものへの問いでもある。日本では「尊厳死」というものは認められていません。人は、自分の意志で精いっぱい生きることができる。生きなければならない。精いっぱい生きようと思っても経済的にままならない人には、国がバックアップしてくれる。これが社会保障。
 では、自分の意志が表現できなくなったらどうなる...?社会保障という公的制度への負担もさることながら、身内への負担を考えると「どこまで生きようか」とか、考えませんか?私のやぶにらみかもしれませんが、ここまでの問題提起も含んでいた発言であるような気がします。というのも、この会議はインターネットで生中継されていたのです。すべての発言がオープンである中で、ここまでのぶっちゃけトークはなかなかできないと思います。

 

 ただ、マスコミ各社はこの発言の一部分を切り取って「失言だ!」と報道しました。が、ここから、官邸サイドの対応も早かった。今回のアルジェリア人質事件の対応でも評価が高い安倍官邸ですが、この麻生発言でも危機管理力の高さを見せつけました。この発言が出たのが、11時から始まった会議の席上。速報されたのが、2時前でしたが、午後の官房長官会見でこの件を質問されたときにはすでにケリがついていました。菅官房長官は、
「報道を受けて本人に事実関係の確認をし、本人から、「個人の人生観を発言し、誤解を受けた。撤回する」と報告を受けた」と発言。即座に撤回させて幕引きを図りました。
 閣僚の失言から内閣が瓦解というのがここ3年、民主党政権の定番でしたが、安倍政権はそうではない。国土強靭化の前に、内閣強靭化は達成されているようです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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