2013年01月09日

江の島のネコから日本警察を思う

 去年の年末に大きな話題となった事件といえば、インターネット上のプログラムで乗っ取られたパソコンから犯罪を予告する書き込みが相次いだ、PC遠隔操作事件。年が明けてから新展開がありました。いくつかの謎解きをすると、江の島に住んでいる猫が答えとして出てきて、その首輪に記憶媒体(マイクロSDカード)がくくりつけられていて、それに犯人を割り出すヒントが入っているというものです。そして、そのマイクロSDの中のファイルには、「自分は以前、事件に巻き込まれたせいで、無実にもかかわらず、人生の大幅な軌道修正をさせられた」という、犯行の動機と読めるものが書き込まれていたようです。


 それにしても、この謎解きメールが送られてきてからの捜査関係者の動きを見てると、陽動メールに踊らされて山狩りを行ったり、その後江の島で猫を追いかけたりと、いいように犯人に踊らされている気がします。サイバー犯罪の捜査がいかに難しいものか、犯人側と捜査側の技術の追いかけっこが続いているというものを実感するわけですが、こういった捜査で最先端なのは京都府警だそうです。専門家を民間からスカウトするなどして、積極的に捜査を行っているようで、他都道府県の事件であっても京都府警がまず動くということもしばしばあるそうです。
 ウィニー事件などで早くからこの手の犯罪と対峙してきた京都府警だけに、その努力には頭が下がる思いなんですが、一方で疑問に思うのは、なぜ各自治体警察単位での対応になっているのかという点。敵はネット上を勇躍しているわけで、この世界はまさしくボーダーレス。国境すらも軽々と飛び越えて行きます。そこにリアルの都道府県境なんてものは屁のツッパリにもなりません。今回のPC遠隔操作事件のような劇場型犯罪で警察の信頼が失墜すれば、治安への影響、海外が日本を見る目など、悪影響は計り知れません。いわば日本国警察そのものが問われているのです。それなのになぜ、都道府県警という枠、殻にいまだに閉じこもるのか?


 歴史を紐解くと、戦前の内務省が中央集権で警察組織を指揮したことで言論の弾圧などが行われたとして、その反省で今の縦割りが続いているようですが、それこそ60年以上前の常識にいまだに捕らわれている証拠です。戦後レジームからの脱却を掲げる安倍政権。ネット犯罪対応でも戦後レジームを脱却できるのか?PC遠隔操作事件が投げかける波紋は、警察組織そのものへの疑問も投げかけています。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
「飯田浩司そこまで言うか!ONLINE」

最新の記事
アーカイブ

トップページ