2012年11月30日

各党の経済政策の裏で...

 各種世論調査で、いま取り組んでほしいこと、衆院選で争点にすることの第一位は「景気」。それゆえ、ほぼ出揃った各党の政権公約も、経済政策に紙幅を割いているところが多いですね。自民党の安倍総裁がその代表のようなもので、解散前後から積極的な金融緩和を中心とした自民党の経済政策を街頭演説や講演で発言し、それが市場に影響を与えています。中にはかなり刺激的な内容もあって、たとえば「輪転機をフル回転させてお札を刷りまくる」「インフレターゲットを設定して、その水準までは無制限に金融緩和を継続する」「建設国債を発行し、それを日銀に全額買い取ってもらう。」などなど...。これにより、衆議員が解散した16日から株価は上昇、円は安値に振れ、市場はこの発言を好感しているように見えます。野田総理が党首討論で解散を明言した14日の8664円73銭から、今日の終値、9446円01銭まで、2週間ちょっとで800円近く上昇。円は79円台から、一時は83円をうかがうまでに円安へ。安倍総裁は自身の経済政策に自信を深めているようです。

 一方、野田総理を含め、政府与党、新聞各紙、日銀総裁や経済界からも非難囂々。「お金を刷れば、お金の価値が下がって止められないハイパーインフレになる!」「戦時中に国債を日銀に引き受けさせて、戦費が拡大した!軍靴の音が聞こえる!」と、インフレになる!と大合唱です。

 たしかに、土曜のズームで辛坊治郎さんが言っていた通り、インタゲの水準まで無制限緩和し、そこからインフレ率を安定させるというのはナローパス(狭い道=実現が難しい解決策)かもしれません。これについては今後議論していけばいいでしょう。

 しかしながら、そんな金融政策議論のもっと前に、実は、それこそ「軍靴の音が聞こえる」ような出来事が起こったことはあまり知られていません。これ、昨日のネット党首討論で、新党日本の田中康夫代表が指摘していました。(大した記事になっていませんでしたが...)発言をニコニコ動画が文字に起こしてくれていたので、それを引用します。
(全文は、http://news.nicovideo.jp/watch/nw445357から)

 

田中:(総理は)「財政規律を守るために消費税を上げる」と、おっしゃった。しかし、今(臨時)国会において、民主党は財政規律を破る赤字国債、特例国債を国会の審議なしで、3年間、青天井で出せるということを決められた。これはまさに、戦前戦中に軍部の予算を、国会も政府も審議をすることができずに、戦時国債を発行してきたことと同じです。

 

 あの解散の騒ぎの中で、いわばどさくさに紛れて民・自・公の3党で合意し、成立したものです。正確には、年度の予算案を通す時に特例公債法案もセットで通すよう合意したというもの。ねじれ国会で、参院で特例公債法案が与党を揺さぶる材料となっていたのを是正するためのもので、これこそが「決められる政治」だ!と総理周辺が言っていました。ではなぜ、毎年毎年国会の議決が必要なルールになっていたのか?その原点を見ると、「決められる政治」とやらがいかに詭弁か分かります。

 1975年度、第一次石油危機によるインフレと戦後初のマイナス成長で、財政が急激に悪化しました。このため財政法では禁じられている赤字国債の発行に踏み切るのですが、時の蔵相、大平正芳の主張で、1年ごとの特例法扱いになりました。というのも、「毎年苦労して法案を通すことで、赤字国債を減らそうという思いを新たにする必要がある」と、あえて恒久法にしなかったそうです。回りくどい手続きには、理由があったんですね。

 しかし、大平の思いに反して、政府は赤字国債を発行し続けます。今や、年間40兆に迫る額となった赤字国債。この発行に関する心理的なリミットとなっていた特例公債法を、予算案とセットで自動的に成立させるようにしてしまいました。これは、クレジットカードの限度額をなくして、無尽蔵に借金できるようにしてしまったも同然です。そう考えると「決められる政治」という言葉の何と軽いことか!いかに増税しても、財政規律を訴えても、こういった財政に対するポリシーでは、やすやすと借金を増やしてしまいそうです。そして、借金が増えたからまた増税する。増税スパイラルの入り口に、我々は立っているのかもしれません。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
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