2012年11月21日

日本維新の会の綱領

 太陽の党と合併する前の日本維新の会の規約には、重要案件は最終的に党首が判断する。党首に拒否権があるという一文があり、国会議員団と対立した際も、最後の断は党首が下すという規約がありました。それが、こちら。

党規約第6条三の6
執行役員会の議事は代表及びその他の構成員の双方の意見を含む出席者の過半数の意見をもって決する。

http://j-ishin.jp/about/principles.html

「代表と、その他の構成員の双方の意見を含む」と書いてありますので、逆に読めば、代表の意見が入っていない意見はそれを党の方針として決することができないと読むことができ、それゆえ代表が最後の断を下すということになります。

 さて、一方で、国会は国権の最高機関です。国民の投票で選ばれた国会議員が議決します。これが主権を行使するということ。この判断に影響するのは、国民(有権者)の意志のみのはずが...、一地方自治体の首長に過ぎない橋下氏の意向が優先するとなると、システムとしておかしい。と、私は思っていました。

 もちろん、維新側もこういった批判には反論を用意していて、
「現在は中央集権だから気になるだけで、地方分権が進めばどこが偉いというのはなくなる。したがって、国会議員を指揮命令できる首長がいてもいい」
 また、橋下大阪市長もこういった発言をしていました。
「それはもう、マネジメントですよ。一般の企業組織の場合には、人事権というものがすべてトップにある。その人事権に基づいて組織マネジメントをするが、この議員集団というものは、それぞれのメンバーが有権者から選ばれた代表。本来の人事権は有権者にあり、それぞれの議員は、基本的には有権者の顔を見る。それが原則であって然るべきだと思う。でもそれだと、政治家組織としてマネジメントができない。だから、トップにもある程度マネジメントの権限を渡さなけりゃいけない」
 お説ごもっともという感じですが...。

 ただし、仮に彼らの言う地方分権が成就して国と地方の役割分担ができたとしても、国会の機能は残ります。その際の国会の機能は、国全体として判断すべき、外交や防衛に関する問題、法律などを議決すること。その時に、一構成員(代表)の意向が大きく影響するようでは、システムとしてやはりおかしい。これは、中央集権とか地方分権とかいう問題ではなく、一般企業のような契約に基づく関係と、おのおの主権の束をもとに選出される国会議員との立場の違いです。主権の束を手にしているんですから、それぞれに事情が違うのが当たり前。その違いを議論によって、いわば最大公約数に磨き上げていくのが民主主義のプロセスなのではないでしょうか。やはり、一連の意思決定のプロセスとしてトップダウンというのはおかしい。民主主義のシステムで進めようとしながら、党規約で民主主義を否定するという自己矛盾があるのではないでしょうか。

 百歩譲って、そこに目をつぶってでも橋下氏の突破力が魅力だから維新を支持するんだと言われればそれは個人の判断ですが、仮に橋下氏が党首を降りたとき、怪物のような後継党首がこの党規約を振りかざして国政を私することになっても、もう文句もつけられません。何とかは細部に宿るといいますが、システム的な欠陥は早いうちに修正すべきだと思うんですが...。

 

 と、ここまでは10月の時点で原稿案として書き進めて寝かせておいたんです。
そうしたら、その後、あれよあれよという間に石原慎太郎さんの太陽の党が日本維新の会と合併し、石原さんが代表に就きました。政策については太陽の党サイドが維新の政策を丸呑みする形での合併となりましたが、ここでこの規約がモノを言うわけです。いかに政策合意ができて、消費税は地方税化、TPPも参加すべしとなっても、代表の意見が100%通るシステムになっているわけですから、実際の国会での採決となった時に、石原さんがいわば「代表大権」を持ち出せば、反対できる人は維新の中にはいないのです。オリーブの木が成就して、いざ「国民の生活が第一」と連携しようとしても、代表の「俺は小沢が大嫌いなんだ!」という一言で話がちゃぶ台返しされたら、反対できる人はいないのです。今後維新が規約を改正して、代表代行に就いた橋下さんにも同じような拒否権を付与するかもしれませんが、今度は意見が割れた場合、決められないという致命的な対決となる可能性もあります。

 ま、企業・団体献金禁止という旗印も、合併で事情が変わったと撤廃したわけですから、今後規約も様々に変わるのでしょう。選挙を前に、こういった動きも注意深く見ていきたいと思いますが、このままではかなりいびつな形の政党であるということが言えそうです。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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