2012年11月16日

外から見ると気づくこと

 木曜ボイスのコメンテーターの青山繁晴さんは、海外に行くことを常に勧められます。行って、現地の人間と語り合うことで、自分の祖国、日本を見つめなおすことができる。中にいるとわからないことが見えてくる。世界の中での日本の立場が見えてくるとおっしゃいます。それを受けて、私ごとなんですが、先日お休みをいただいてささやかながら旅行に行き、現地の人々と語り合う機会がありました。

 

 私が行ったのは、スイスです。知り合いのスイス人とランチを食べながら話をしました。その彼は、もともとメーカーに勤めていて、すでにリタイアしている方です。開口一番、彼は

「日本は景気いいのか?最近持ち直してきたらしいじゃないか」

ん?日本が景気いい?誰がそんなこと言っているの?と聞き返すと、

「証券会社の人が言っているんで、日本株の投資信託を考えてるんだよ」

ですって。ん~、日本に暮らしていると、お世辞でも景気がいいなんて言えないわけなんですが、ハタと気づきました。変わっていないのは日本だけかもしれない。ヨーロッパはギリシャ危機で火がついていますし、アメリカはリーマンショック以降パッとしない。中国だって、高成長が曲がり角に来ています。そこへ行くと、日本はGDPが下がっているとはいえ、いまだに世界第3位。その上現状円高なので、ドルベースやユーロベースで見ると、日本企業は放っておけば企業価値が上がっているように見えるのです!周りが地盤沈下を起こしている、さらに円高というネガティブな理由ではありますが、結果的に日本は今、世界を支えているのかもしれません。彼との話で、そんなことを思い、日本を見直しました。あ、彼には一応日本の現状を説明し、どうしても買いたいなら止めないけど、おすすめはしないと言っておきましたがね。

 

 そしてもう一人、今度は同世代の金融マンと夕飯をともにしました。結構な額のお金をその指先で動かすらしい彼が今一番気になっているのは、日中関係。

「一体全体どうなっているんだ?どういう経緯で揉めて、日本はどんな主張をしていて、そしてこれからどうしていきたいんだ?」

と、質問攻めに遭いました。というのも、彼が言うには、「中国の主張は新聞を開けば分かるんだけど、お前たち日本の主張はどこにも出てこないんだよ。」NYタイムズに1ページすべて使っての広告をガンガン打っているというのが日本で話題になっていますが、中国の国際PRはそんなもんじゃありません。ドイツの新聞やスイスの新聞にも、全面広告や広告記事をガンガン載せているようなのです。国際機関というと、ニューヨークの国際連合本部が思い浮かびますが、本当はヨーロッパの方が国際機関がたくさんあるんですね。オランダ・ハーグの国際司法裁判所、ジュネーブの世界貿易機関や国際赤十字などなど...。これらを狙って中国政府は広告を打ちまくっているんですね。
 で、そこに感心するやら怒りを覚えるやらした上で彼に、

「日本政府は尖閣は歴史的にも今現在も実効支配しているんだから、なんの問題も存在しない。問題が存在しないからそれ以上言うこともないのだ。」

と、政府公式見解を紹介すると、「それはおかしい。なぜ言い返さない。それは問題のあるなしとは別問題だ」と、ど真ん中から正論をぶつけられました。彼は何度も来日している親日家だから中国の全面広告ごときに踊らされたりはしませんが、一般のスイス人、ドイツ人は材料が中国の広告しかなければ信じてしまうでしょう。実際、彼の友人にもそういう人がいると言っていました。
 これは、現在進行中の危機です。こうやってじわじわと拡散していく国際プロパガンダが、結局国際世論になってしまうかもしれません。スイス人相手に、下手な英語で汗をかきかき説明しながら、途方もない焦りを感じました。ん~、青山さんの言うとおり、海外の人と話すといろいろな気づきができますね。あまり後味がよくない気づきでしたが...。

書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
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