今年の6月、番組で「一球の記憶」(宇都宮ミゲル著)という本を紹介しました。
「村田兆治、山田久志、東尾修、江川卓、掛布雅之、高橋慶彦、石毛宏典など、昭和のプロ野球で活躍したあの名選手37人が、絶対に忘れない1球を告白する。それは誰もが記憶するあの名場面だったり、球史にも残らない小さなワンプレーだったり……。」という内容の本で、読みたいというメールや読んだ方からの面白かったという感想メールが多数届きました。
朝日新聞出版の斎藤さんという編集者の方が、高校生の頃に私のラジオを聴いていたというご縁で本を送っていただいたのでした。
先日、斎藤さんから「完全版 袴田事件を裁いた男」という本が送られてきました。
サブタイトルや帯には「無罪を確信しながら死刑判決文を書いた元エリート裁判官・熊本典道の転落」「裁判官を辞め、酒におぼれ、家族崩壊、自殺未遂、失踪。そしてマスコミの前に現れて」等々、かなり刺激的な文言が書かれています。
そういえばかなり前に(2007年でした)「報道ステーション」にいわゆる「袴田事件」で袴田さんは無罪であると謝罪した元裁判官が出演して話題になったことを思い出しました。
その番組を見ていたこの本の著者、尾形誠規さんは元裁判官の熊本氏に合って取材を始めたところ「あのね、僕の話を美談にしないでくださいね」と帰り際にポツンと言われたところから物語が始まります。
九州大学法学部(すいません!番組では東大法学部と言ってしまいました)在学中にトップの成績で司法試験に合格した熊本氏が静岡地裁に赴任中に自らは無罪と信じた「袴田事件」。しかし3人の裁判官の合議の末2対1で死刑の判決となり、年齢的に一番下であった熊本氏が苦渋の末に死刑の判決文を書いたところから彼の人生が波乱の渦の中に巻き込まれていきます。
それと同時に「袴田事件」の捜査や裁判の過程も描かれており、国の権力は間違いを絶対に認めない恐ろしさと、検察や警察のリークにそのまま乗って、「ボクサー崩れの男が犯した極悪非道の犯罪」と決めつけた報道をするマスコミの姿に、自分も同じ穴の狢(むじな)であることを忘れ憤りを感じながら読み進めることになりました。
また獄中で書かれた拘禁症状が出る前の袴田さんの手紙の文章の格調の高さに驚き、また袴田さんを支える姉の秀子さん(90才)の前向きで明るい性格には唯一救われた気持ちになりました。
捜査当局が捏造などするわけがないという思い込みや、先輩の下した判断を覆すわけにはいかないという司法の世界のあり方、また再審開始決定が確定するまでに57年もかかるという制度の欠陥など様々なことを考えさせられました。
本を読んでからしばらく時間が空いてしまいましたが、27日金曜日の朝刊に載った袴田さんの「再審が今日開始」という記事を読みながら本の紹介をしました。
1966年6月、30才の時に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で逮捕された袴田さんは今87才。うち47年は獄中で過ごしています。
なぜそのようなことになってしまったのか、そしてそれを裁いた裁判官のその後の人生は…多くの方に読んで頂きたい力作でした。
「完全版 袴田事件を裁いた男」(尾形誠規著 朝日新聞出版 本体1960円+税)
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