上柳昌彦 ラジオの人

2021.06.04

短歌集

徳光和夫さんは大学とサークルの大先輩です。私が学生時代、長屋と呼ばれた木造のオンボロ部室でグダグダしていたら、
いきなり徳光さんが訪ねてこられたことがありました。

日本テレビの深夜番組「11PM」で池袋を紹介するロケの途中で立ち寄ってみたとのことでした。

部室が徳光さんの学生時代と同じであることに驚いていましたねぇ。

この翌年から名番組「ズームイン朝」が始まるという、私が大学2年のころの思い出です。

そういう訳で日頃は徳光先輩と呼ばせていただいています。

徳光先輩と言えば曲に乗せた七五調の華麗なイントロ紹介の素晴らしさです。

番組にゲストでいらした際に「〇〇と〇〇の曲紹介をしていただけますか?」というと「いいよ。チョット待ってね」といい胸元から取り出したペンで進行表の空白にサラサラと書いて紹介文をあっという間に完成させました。

そして流れた曲に乗せた言葉は、その場の今の雰囲気を取り入れた見事な七五調の名文で、これこそアナウンサーが身に着けていなければならない教養なのだと深く感銘を受けたものです。

しかしながらに私はこの方面の才能が一切ないのです。俳句、短歌、川柳という類のものがまったく思い浮かばない情けないしゃべり手なのです。

おまけに川柳に関しては読むのもヘタときています。

そのような私の元に一冊の短歌集が届きました。

若いがんサバイバーの女性が入院、治療、手術、退院の過程でその思いを詠んだ「黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える」(左右社刊 1700円+税)という歌集です。

「26人のがんサバイバー あの風プロジェクト」の皆さんによる作品なのですが、私も検査入院、手術、術後の経過が芳しくなく再入院という経験があるので、短歌に疎い私でも光景が思い浮かぶ短歌が多く掲載されていました。

手術前の慌ただしさ、手術の跡、待ち時間の長さなどなどを26人の女性が詠みました。

「その気持ち、わかるなぁ」と番組で紹介したところ、同じような経験をした方々からメールも頂いた歌は、病院のベッドで迎える夜明けを詠んだこの一首でありました。

今朝もまた入院先で夜明けを迎えた方は多いと思います。

どうかゆっくりじっくり養生をされてくださいませ。