すったもんだがありまして「橋本氏 新会長に就任」と相成ったオリンピック・パラリンピック組織委員会の会長。
小学1年だった当方、1964年の東京オリンピックを白黒テレビで観て、父親が買ってくれた大会を記録した本のカラー写真を何度も眺め、市川崑監督のドキュメンタリー映画「東京オリンピック」を授業の一環で観に行った世代です。
特に、きちっと隊列を組んで入場してきた日本人選手団の列が、はしゃぎまわる外国人選手に巻き込まれていつの間にやら国も性別も関係なく誰かれなく手を組み合って、みんなが笑顔を爆発させた閉会式にとにかく感動したものです(今これを書いているだけで鼻の奥がツーンとなります。それぐらのインパクトだったのです)。
頭の中が「お花畑」と言われようが何だろうが、あのシーンが私のオリンピックの原点です。
国立競技場のデザインやロゴのトラブルから始まった今回の東京オリンピックは、経費の膨張、都と組織委員会と政府のどこに最終的な責任があるのかわからないままのコロナ禍に巻き込まれての延期、そして会長の辞任と就任騒動と、もう散々の状態であります。
「もうこれ以上、私のイメージの中のオリンピックをボロボロにしないでおくれよぉ…」と言いたくもなります。
橋本新会長就任に関して「火中の栗を拾う」という言葉が新聞各紙で使われていました。
「火中の栗」。私は今まで着物姿の昔の人が囲炉裏か焚火の中で焼けている熱々の栗を取り出そうとする様を勝手にイメージしていましたが、19日の産経抄を読んで驚きました。
なんとこの成句、17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌが『イソップ物語』を基にした寓話で、ずる賢い猿におだてられた猫が、囲炉裏の中で焼けている栗を拾ったけれども、栗は猿に食べられてしまい、猫はやけどをしただけだったという話から生まれたフランスのことわざだとあるではないですか。
そして驚くとともにフランスでもやはり猿がずる賢さの象徴なのだと思いました。
しかし放送ではそれが何の物語に由来しているのかが瞬間的に出てきませんでした。
放送が終わった途端に「あぁ『さるかに合戦』かぁ…」となる訳ですがまぁ年を重ねるとこんなものです。
場合によっては「『カチカチ山』でも猿が悪者だったですよねぇ」と言ってしまい、大量の「違うよ!『カチカチ山』はタヌキとウサギだよ!」というメールが番組に届くことが避けられた事だけでも良しとしましょう。
とにもかくにも今回、火中の熱々の栗は結局誰が食べることになるのでしょう。
「IOCの一部の役員様とアメリカのテレビ局NBC様と大手広告代理店の皆様がおいしくいただきましたとサ。めでたしめでたし」とならない事を願うばかりであります。

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