女川で被災した老舗蒲鉾店のご主人の「被災地はストーリーの素材ではない」という記事を読みました。
この8年で500回以上の取材を受けたこの方は「無理やりネガティブな物語を探そうとする」「作られたストーリーを演じる人を探している」と答えていました。
最後には「地元の放送局ではまだ伝えきれていない側面を継続的に取材しているところもあって感謝しています」とも仰っています。
より悲しくより悲惨な状況を探し出しそれを都合よく切り取って伝えたことはないかと自分に問えば、ありますと答えるしかない私がいます。
一方で阪神淡路大震災の5日後に、地震による地滑りで13戸34人の命が奪われた仁川百合野町の現場にたどり着いた時に、生放送担当のディレクターから「暗い話が多いので、なにか前向きになるような明るい話はありませんか」と中継前に電話があったことを思い出しました。
私の目の前には泥にまみれた表札や三輪車やタンスや家の柱が散乱する大量の土砂が見えるのみです。
東京のスタジオと災害の現場との激しい温度差に怒りとともに伝えきれない空しさを感じました。
(ちなみにそのディレクターは遥か昔に退社しています)
結局は限られた取材時間で出会えた方々に話を伺って、それをスタジオに持って帰って伝えることしか私には出来ないのです。
それはある時は希望の光であり、ある時は深い闇であり、そしてある時は何でもない日常なのかもしれません。
そしてそれらをオロオロとスタジオに持ち帰る事をただただ繰り返してきましたし、これからもそうなのだと思います。
今回は気仙沼、大船渡、陸前高田に伺いました。
考えてみると、陸前高田の奇跡の一本松を除いてこれまで被災地の写真をほとんど撮っていないことに気づきます。
物見遊山で災害現場を見に来て、悲惨な状況を写真に撮って帰るだけと思われることを恐れていたのです。
今回、2年ぶりに訪れた場所があまりにも整備されていたので自然とスマホのレンズを向けて、ツィッターにもアップしていました。
そして巨大な防潮堤の内側にかさ上げされた広大な土地と、その一部にオープンした商業施設が今後どのように有効活用されるのかを、深く深く考えてしまいました。

大船渡の沿岸部、大船渡町にオープンしているワイナリー「スリーピークス」
この3月下旬に大船渡のブドウで造られたワインがいよいよ完成!
応援したいです。

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