ここ数年使っているスマートフォンのケースが壊れてしまい困っていました。
生身のスマホは妙にスベスベツルツルしていて、油っけのない還暦オジサンが持つと手から滑り落ちそうになってなんとも心もとないのです。
ケースを買いなおそうと有楽町駅前の家電量販店をはじめ様々足を運んでみたのですが、なにせ型が古いのでまったく扱っていません。
あったとしても手帳型なので、これだとチノパンなどのポケットには入れにくいのです。
さて困ったなとあきらめかけたのですが、ネット通販サイトをちょっと覗いてみたところあるはあるはザクザクヒットしました。
700円ほどの商品なのですが送料は400円です。2000円以上お買い上げいただくと送料も無料になりますとあるので、他に何かとネットショッピングモードに入ってしまいました。
しかしさして今欲しい物もないことに気が付き、なるほどそういう事かと思い直し結局ケースだけを購入しました。
私のオーダーがネットで送られ、巨大な倉庫の中から小さなスマホのケースを探し出し梱包してトラックに載せて配達されるという訳です。
こちらはキーボードをカタカタと打ったりスマホにササッとタッチするだけで届くのですから、まぁなんと便利な世の中でありましょう。
と普通ならここまでで終わるのですが、「ネット通販」と「宅配便」と「非正規労働」を題材にした楡周平さんの新作小説「バルス」を読んだばかりだったので、この小さな商品があっという間に私の手元に届くまでに、どれだけの手間がかかったのであろうとも考えました。
巨大倉庫の中でいかに短時間のうちに商品を探し出し梱包するか、過酷なノルマを課せられるネット通販の非正規社員の苦悩と、結局は物流のシステムが完璧であるがゆえに消費者はすぐに希望の商品を手に入れることが可能という事に気が付いたテロリストが……
というイントロダクションの小説なので、なるほどそういうシステムなのかと気づかされることが多かったです。
とはいえやはり私の場合は、店頭で手に取ってみて、また別の店に行ってみて悩んで結局は買わない的な人なので、今後もネット通販のお世話になることはあまりないと思います。
しかし近隣に店などない場合や、身体的に簡単に外に出られない状況にある人にとっては、こんな便利な方法はないですねぇ。
ちなみに車も上がれないほどの山奥に大きな荷物を配達する場合は、ドライバーが背中に背負って山道を登り、留守ならばまた荷物を抱えて下りるしかないのだという記述が非常に印象深かったです。

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