テリー伊藤さんと「のってけラジオ」を担当していた2000年10月28日、背番号3を背負った長嶋茂雄監督率いるジャイアンツが、ダイエーとの戦いに勝利して日本一になりました。
狂気乱舞したテリーさんは東京ドームから1000人のリスナーとともに提灯行列をし「田園調布のミスターのご自宅前で鏡割りをするんだぁ!」と番組で吠えました。ホントに吠えていたんです。
番組のチーフディレクターT氏とともに、「あれって本気ですよねぇ」「本気だよ、あれは」「どうします?」「どうしようかねぇ」という会話を交わしたことをよーく覚えています。
そのT氏はその後出世をし今やニッポン放送の局長。セクションが違うので仕事を一緒にということは減ってしまいましたが、あの「提灯行列」に共に立ち向かった「戦友」的な感情を今でも一方的に持っています。
そのT氏が珍しく私の席に来て「こんなものを書いたんです」と文庫本を手渡すのです。
「これもしかして!」「そうなんです」「いつ書いたの?」「まぁちょっとずつ」「読む読む!」「是非是非」こんな感じで受け取りました。
麻美という長い黒髪の女性の彼氏がスマホをタクシーに忘れ、それを拾った男がいわゆる「ハッカー」で異常にネット、パソコン、スマホに詳しいことから事態は厄介な方向にどんどん進み、その男の影が身辺に忍び寄り、周囲では妙なことが次々に起こります。
一方でヤマビルだらけの丹沢山系で身元不明の女性の死体が次々に発見される事件が起こりますが、さてこの二つの物語がどのように絡み合ってゆくのかという展開を、途中で読むことをやめられますか?いややめられません!というものですよ。
読み進めながら、自分のスマホのセキュリティーの設定がどうなっているんだっけと思い、なんだかんだで中途半端に安易に使っているSNSに対する考え方を根本的に見直さなければなどとも考えてしまう。
考えてしまうのだがページをめくる手を止めることができず、一気に読み終えてしまいました。
本当はスマホばかりをいじっている子どもたちにも反面教師として読んで欲しいのですが、物語の終盤には映画だったら「R15指定」になるかなというシーンも登場します。
T氏がどのような表情でこれを書いていたのだろう、などということもちょっと思ってしまいましたが……
T氏によると2017年の「このミステリーがすごい」に応募したところ大賞は取れなかったけれど、「このミス」大賞の「隠し玉」作品として文庫化が決まったそうです。
大体のプロットを考えてから書き出したそうですが、いやはや見事なものです。忙しいポジションのT氏ですが、結局時間の有効な使い方なんだよなぁと、関心するやら反省するやらでありました。
志駕晃著「スマホを落としただけなのに」宝島文庫 本体650円+税です。
ちなみに提灯行列は、結局警視庁まで巻き込んで駒沢公園から多摩川の河川敷まで提灯行列を敢行するにいたりました。
夕暮れの多摩川河川敷、1000人のリスナーの皆さんの前で本当に嬉しそうに鏡割りをする長嶋茂雄さんとそれを見つめるテリー伊藤さんの目に夕日でキラリと光る涙はT氏にとっても私にとっても忘れられない仕事の一つになったのでした。
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