松本秀夫アナウンサーが本を出版しました。松本さんはこれまでもガラケーで全編原稿を書くという脅威的な方法で本を数冊書いています。
ご存知のように松本さんはプロ野球シーズン中はもちろん、オフシーズンも夜の生放送を担当し続けています。そんな激務の中でいつの間に書いていたのだと感心してしまいます。
タイトルは「熱闘!介護実況 私とオフクロの7年間」です。そうです、「今夜もオトパラ!」の中でも時折語っていた松本さんのお母様の介護の話をまとめた本なのです。
残念ながらお母様は2013年春に亡くなられました。実は私の母はその年の夏ごろに体調を崩しました。そして2014年秋から松本さんとの「今夜もオトパラ!」が始まり、2015年冬に母は転んで大腿骨を骨折し治療とリハビリが春まで続きました。
松本さんのお母様も様々な症状で入退院と転院を経験されていたので「お母様の具合はいかがですか」という松本さんが母を気遣ってくれることをきっかけに「先輩!僕のオフクロもねぇ、大変だったんですよあの時……」「そうかぁ。それは凄い経験だったよねぇ」と幾度となく介護の体験談を聞いたものでした。
しかしこの本を読むと、それ以上の壮絶とも言える母上との長い年月であったことを改めて知りました。
薬との相性、リハビリ、検査を繰り返してもなかなかわからない脳の中、あのしっかりとした親がなぜこうなっているのかと言う苛立ち、そこからくるきつい言い方、そうした感情が湧いてしまう自分への呵責など介護を経験した方なら直面する問題を松本さんはどう受け止めたのか、そして受け止められなかったのかが克明に描かれています。
ですからこの本は、今まさに介護を経験されている方々、またこれか経験するであろう方々、そして介護の勉強をされている方にも読んでいただきたい作品です。
もちろん人にはそれぞれ個性があるように、介護も人によって適した方法や考え方は様々で、すべての人に合う介護の方法がある訳ではないのですが、それでもこの本には介護の何が不安なのか、何に安心するのか、何が出来て何が出来ないのか、何をすべきで何をすべきでないのか、その多くが書かれています。
また一方で完璧な介護などありはしないこと、しかし介護に悩むあなたは決して一人ではないということも知ることが出来ます。そうです、自分だけを責めてはいけないのです。必ずあなたに手を差し伸べてくれる人はいるということもこの本は教えてくれるのです。
松本さんの母上は本当によい人だったと松本さんは書きます。そしていい人ゆえにすべてを背負い込んでしまい、それを50年続けて壊れてしまったとも書いています。
松本秀夫という人も、万人が認めるよい人であります。だから彼が背負っているものも私たちが思っている以上に大きなものなのではないかと考えてしまいます。
少しずつ背負ったものをおろし、松本さんが穏やかな酒が飲める日が来ることを願うばかりです。と書きながらまた二人で記憶をなくすまで……となってしまうのかもしれませんが。
最期に介護はあまり関係ないなぁという方へ。
「熱闘!介護実況」はノンフィクション作品ですが、もし私小説という形式をとっていたら、この作品は文学の賞をとることも出来ると私は思います。それだけ人を引き込む作品なのです。
この本をガラケーのみで書いてしまう男松本秀夫。やはりただものではありません。
「熱闘!介護実況 私とオフクロの7年間」バジリコ株式会社
定価 本体1300円+税
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