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6/29の1本目は、現代社会の恐ろしさを描く
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
原作は、福田ますみ氏の著書『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』。2003年、「教師による児童への虐め」が、日本で初めて認定された事件を扱ったルポタージュです。
小学校教諭の薮下誠一は、ある日、担任している児童の母親・氷室律子から息子への体罰で告発されます。その内容は、聞くに耐えない酷い虐めでした。
やがてそれを週刊誌が実名報道し、薮下と家族は激しい誹謗中傷にさらされます。
一方、律子は世間と“550人もの大弁護団”を味方につけ、前代未聞の民事訴訟へと発展。誰もが律子側の勝利を確信していましたが、薮下は法廷で、「すべてが事実無根のでっちあげだ」と完全否認するのです。
果たして真実は?
教育現場での差別や体罰の問題、モンスターペアレント化する保護者、保身と事なかれ主義に走る学校組織、ヒートアップするマスコミの報道、身内にまで及ぶ第三者からの攻撃など、これが実話なのかと恐ろしくなるテーマをスリリングに描き出したのは、三池崇史監督。
三池監督らしい演出で、最初は何が本当なのか誰が正しいのか、まさしく“薮の中”に放り込まれてしまったような、いてもたってもいられないような気分になりました。
薮下役の綾野剛さんの良くも悪くも見える幅のある演技がこの作品の肝だと思いました。追い詰められ、正気と狂気の境を彷徨う凄まじい葛藤が見ていて痛いほどでした。
薮下を訴える律子には、柴咲コウさん。恐ろしいほどの存在感に圧倒されました。
他に、週刊誌の記者に亀梨和也さん、薮下を支える妻に木村文乃さん、小学校の校長に光石研さん、律子側の大弁護団の長は北村一輝さん、そして、薮下の弁護を引き受け一緒に戦う弁護士には小林薫さんなど、豪華俳優陣が演技合戦の火花を散らします。
ひと時も目が離せない展開に、観ている間中、ずっと辛くて痛くて心がヒリヒリしました。最後は大泣き。
そして、誰の身にも起きる可能性のあることだと気づき、恐ろしくなりました。思いもよらないことで糾弾される側にも、間違った世論を形成し糾弾する側にもなってしまうという両方の可能性があるのです。
しかし、もっと恐ろしいのは、でっちあげに同調して誰かを標的にしておきながら、それに気づかず、また同じことを繰り返してしまうこと。そうならない為にはどうしたらいいのでしょうか?
スクープ記事やSNSで簡単に世論が一方向に行きがちな今だからこそ、
1人でも多くの方にこの作品をご覧頂き、一緒に考えていきたいです。手遅れになる前に…。
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
6月27日(金)公開
公式サイト:映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』|絶賛上映中
出演者:綾野剛 柴咲コウ
亀梨和也 / 大倉孝二 小澤征悦 髙嶋政宏 迫田孝也
安藤玉恵 美村里江 峯村リエ 東野絢香 飯田基祐 三浦綺羅
木村文乃 光石研 北村一輝 / 小林薫
監督:三池崇史
原作:福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)
配給:東映
©2007 福田ますみ/新潮社
©2025「でっちあげ」製作委員会
◆予告編リンク:https://www.youtube.com/watch?v=KN88qgWMlgs
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