おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
6/15の1本目は、子供はいつ大人になるのか……不完全な大人たちの孤独や痛みにふれる11歳の少女のひと夏の物語
『ルノワール』
このコーナーでもご紹介した前作『PLAN75』が、カンヌ国際映画祭ある視点部門でカメラドール特別賞を受賞した早川千絵監督の最新作です。
舞台は日本がバブル経済絶頂期にあった1980年代のある夏。
両親と3 人、郊外で暮らす11歳の少女フキは、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままな夏休みを過ごしていました。
ときどき垣間見る大人の世界は、複雑な事情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的。
しかし、入退院を繰り返す闘病中の父と、仕事や家事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれ、フキの日常も否応なしに揺らいでいくのです。
フキ役は、当時役柄と同じ11歳だった鈴木唯さん。多数の候補者の中からオーディションで選ばれました。空想と現実、大人と子供の狭間で揺れ動く感情を見事に表現した瑞々しい演技に目が離せません。
フキの母・詩子を演じるのは、石田ひかりさん。夫の介護、子育て、仕事と奔走するなかで徐々に心の余裕をなくしていくという難しい役どころを見事に演じています。
自分なりの方法で娘を思いやりながら孤独に病と向き合う父・圭司役は、今や日本映画界に欠かせない名優リリー・フランキーさん。
また、中島歩さん、河合優実さん、坂東龍汰さんなど、演技派が脇を固めています。
早川監督が子供の頃に抱いていた感情を膨らませて作り上げたということですが、とても共感できました。特に女性なら、フキちゃんと同じ小学生の頃の自分を思い出すのではないでしょうか?
死への好奇心と生きることのどうしようもない寂しさ、誰かの温もりを求める気持ち…私たちが過去に置いてきた、遠い日の宝石のような記憶を呼び覚ませてくれます。
フキちゃんを見ていると、今思えば危なっかしいことが沢山あったのだなと冷や冷やしました。同時に、悪気のない子どもの無邪気さと残酷さは背中合わせなのだなぁとも思いました。
そして、大人になった今は、お母さんの気持ちもわかります。
油断しているといろんなことに巻き込まれちゃう…心が弱っているときは余計にそうですよね。
フキちゃんのお母さんの幸せを祈らずにはいられません。
これは、かつて子供だった私たちのための、そして大人になった私たちのための映画です。
『ルノワール』
6月20日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
公式サイト:映画『ルノワール』公式サイト|6/20(金)全国公開
鈴木唯
石田ひかり 中島歩 河合優実 坂東龍汰
リリー・フランキー
脚本・監督:早川千絵
製作年:2025年/製作国:日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタール/上映時間:122分
スクリーンサイズ:ヨーロピアンビスタ/音声:5.1ch/言語:日本語、英語/英題:RENOIR/映倫:G
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners
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