ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2023.01.29

サンデー早起キネマ『イニシェリン島の精霊』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
1/29は、過去も現在も第一線の監督・俳優・作品を取り上げた3本をご紹介。

1本目は、5年前『スリー・ビルボード』で世界中を熱狂させた鬼才マーティン・マクドナー監督の心震わす待望の最新作
『イニシェリン島の精霊』

先週発表されたアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演男優賞など8部門に、9つノミネートされました。

舞台は1923年、アイルランド西海岸沖の架空の島・イニシェリン島。砲撃の音が聞こえてくる内戦真っ只中の本土とは対照的に、のどかな平和が保たれています。
みんなが知り合いの狭い島で誰からも愛される素朴でお人好しの男パードリックは、ある日、長年の飲み友達、親友のコルムから「お前が嫌いになった」と突然絶交されてしまいます。
理由もわからず困惑したパードリックは、賢い妹のシボーン、若い隣人ドミニクの力を借りて関係修復を図りますが、コルムは頑なにパードリックを拒絶。
やがてコルムは、「これ以上俺を煩わせるなら、自分の指を切り落とす」と宣言し、2人の対決は想像を絶する事態へと突き進んでいくのです。

自らのルーツであるアイルランドの精神に回帰したマクドナー監督が描くのは、人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた長年の友情が壊れた男たちの世にも奇妙な葛藤の物語。
美しいアイルランドの島の景色…青い海と空、白い雲、丘の緑、そして牧歌的な村の建物を背景に繰り広げられる男たちの諍い。俳優たちの見事な演技に酔いしれる会話劇です。

パードリック役は、これ以上、困った顔が似合う人はいる?と思ってしまうコリン・ファレル。
頑なに親友を拒否するコルム役は、ブレンダン・グリーソン。
コリンとブレンダンは『ヒットマンズ・レクイエム』で、マクドナー監督とタッグを組んでいます。
他に、妹のシボーン役にケリー・コンドン、ドミニク役はバリー・コーガン。

彼らの卓越した演技で進められる物語は、環境は特殊でも、人々の心持はどこにでもあるものです。
人が何を大切にしているのか、それを守るためにどこまでの犠牲を他人に強いることができるのか、裏切り、悲しみ、怒り…少しずつかみ合わなくなった歯車は、いつの間にか島の人たちを巻き込み、思いもよらない方向に進んでしまいます。内戦や戦争もこうやって進んでいくのかもしれませんね。ブラックユーモアで描きだされる人間の愚かさ…未来永劫続くものなのかもしれません。

『イニシェリン島の精霊』
1月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公式サイト:イニシェリン島の精霊|サーチライト・ピクチャーズ公式 (searchlightpictures.jp)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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    • ひろたみゆ紀
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      ひろたみゆ紀

      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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