おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
4/3は、ハラハラドキドキ、公開されたばかりの3本をご紹介。

1本目は、社会に渦巻く歪んだ正義と不条理を、現代に生きる私たちに突きつける極上のヒューマンサスペンス
『英雄の証明』

2度のアカデミー賞外国語映画賞を制したイランのアスガー・ファルハディ監督作品です。
あなたも私も、いつ陥るかわからない現代社会の闇、人間の倫理観を問うこのサスペンス劇は、2021年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しました。

主人公は、借金を返せなかった罪で訴えられ、服役中の元看板職人ラヒム。
ある日、彼の婚約者が、金貨が17枚入ったバッグを偶然拾います。
借金を返済すればすぐに出所できるヒラムは、その金貨を元手にして訴訟を取り下げてもらおうと奔走しますが、示談交渉に失敗。
やがて人のお金で借金を返済することに罪悪感を持ち始めた彼は、落とし主を探して金貨を返します。そのささやかな善行はメディアで大々的に報じられ大反響！あれよあれよという間に“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられます。吃音症の息子もそんな父の姿を誇らしく感じていました。
表彰され、インタビューも放送され、借金返済のため寄付金まで集まります。出所後の就職先も斡旋されたヒラムの前途には、明るい光が差しこんでいました。
しかし、SNSで広まった噂をきっかけに状況は一変！ヒラムは英雄から一気に疑惑の人に！
汚名を返上しようと焦ったヒラムは、思わず悪意のない嘘をついてしまい、それがまた大切な息子を巻き込む新たな火種となっていくのです。さあ、どうするヒラム？！

ほんの一瞬の出来心がいつしか罪悪感に変わり、持ち主に返すという当たり前のことをしたら、マスコミに祭り上げられ美談になってしまった…どこにでもありそうな話ですよね。
そして頂点に上り詰めたところで、SNSでドカンと叩かれ、大炎上！これまたよくある話です。
だから本当に怖いですよね。今までならきっと問題にならなかったであろう“ささやかな善行”と“小さな愚行”は、SNSを通すと途端に大事になってしまう、そんな恐ろしい世の中に生きていることを実感します。

英雄ヒラムを巡って、彼の行いを褒め称える者、利用しようとする者、疑惑の目を向ける者、いろんな人が出てきます。そして、正義とは一体何なのか？改めて考えさせられます。自分の正義が世の中の正義とは限らないですし、行き過ぎた正義は歪んでいきます。世界中同じことが問題なんですね。
美談の英雄に祭り上げられた男。彼は果たして本物の英雄？それともペテン師？映画館で確かめてください！

『英雄の証明』

 4月1日（金）Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国順次公開

公式サイト：映画『英雄の証明』公式サイト (synca.jp)

監督・脚本・製作：アスガー・ファルハディ
出演：アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディ
2021年／イラン・フランス／ペルシア語／2.39:1／5.1ch／127分／原題：GHAHREMAN／英題：A HERO／日本語字幕：金井厚樹／字幕監修：ショーレ・ゴルパリアン／後援：イラン・イスラム共和国大使館イラン文化センター、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給：シンカ／提供：シンカ、スカーレット、シャ・ラ・ラ・カンパニー、Filmarks　
文部科学省選定 一般劇映画（青年・成人向き）
©2021 Memento Production – Asghar Farhadi Production – ARTE France Cinéma