須田慎一郎のニュースアウトサイダー

2017.06.05

安倍総理に訊く 加計学園問題のこと

天皇陛下への特例法案は静謐な雰囲気の中で可決された

須田) 天皇の退位等に関する皇室典範、特例法案に関しては与野党で共同歩調といったらいいのでしょうかね。合意が静かな環境の中で結ばれました。これについての評価はどんなふうに考えておられますか?

安倍総理) 日本の歴史は、国民によって綿々と織りなされてきたひとつのタペストリー、つづれ織りのようなものだと思います。中心の一本の糸は間違いなく天皇、皇室の存在だろうと。この問題は国家の基本であって、長い歴史とこれからの未来にとって極めて重い課題であると思います。天皇陛下のお気持ちに国民が共感していることを踏まえまして、衆参両院の議長、副議長が取りまとめて抱いたこの案を、各政党各会派の議論の内容を反映した法案を提出したところでありますが、そう意味においては静かでしっかりとした形で法案を提出することができたと思います。

須田) 何とかまとめ上げたというお気持ちでしょうか?

安倍総理) そうですね。なるべく多くの政党に賛成していただきたいと思っていましたが、結果として衆議院議長や副議長にもご苦労をいただいて、静謐な雰囲気の中で議論が行われて可決されました。政府としては引き続き、参議院におけるご審議にも真摯に取り組みたいと思っております。

サミットでは、北朝鮮問題はグローバルな脅威である認識で一致

東島) 今日、お顔を拝見していたらラジオなのに強い目力で真摯に答えて下さり、お疲れを感じませんが。
サミットでの手応え、いかがでしたか?

安倍総理) 今回のサミットは新たなメンバーが4名加わりました。特に米国のトランプ大統領が参加をされた。ですから相当白熱した議論になりました。ハッキリと申し上げて、激しい議論も確かにありました。最終的に北朝鮮の問題を北東アジアの問題ではなく、グローバルな脅威であるという認識で一致をすることができたと思います。そういう意味においては成果を出すことができたサミットだったと思います。

そもそも獣医学部の必要性を認めていたのは民主党政権

須田) 高尚な質問をしておきながら、下世話な質問をするのもどうかと思いますけど。加計学園について、やっぱり理事長とは仲が良いのですか?

安倍総理) 昔からの友人ですね。友人であるということと、それを政策に対して影響を与えるということは別の話ですから。“たまたま”私と加計学園の理事長が友人だったから、政策に何か影響を与えたのではないか。先程印象操作という話がありましたが、まさに印象操作だと思いますよね。今回の事案は岩盤規制改革を進めていかなければいけないと。
安倍内閣としては岩盤規制改革を全体でスピード感を持って進めるよう常に支持をしています。獣医学部の新設は50年以上実現できなかった。まさに岩盤です。医学部の新設も行いました。これも大変な反対も抵抗もありましたが、国際的なニーズに対応できる医学部をつくるということで最終的には認められて新設となりました。国家戦略特区ではありませんが、東北にも新たな医学部をということで、これも我々は実現しました。
常に岩盤規制には抵抗勢力もありますし、既得権を持っている人々もいますし、そこに権限を持つ官庁もいます。こういう人たちは当然、最初から反対です。そこにどうやってドリルで穴を空けていくか、我々はそこに全力をあげてきました。
この獣医学部について言えば、申し上げているように50年間反対が強くてできなかった。ただ今、鳥インフルエンザ、口蹄疫、狂牛病にしても、動物から動物、あるいは動物から人間に移っているかもしれないという伝染病があります。こういうものの専門家を育成していく、獣医師の公務員をしっかりと確保していく上において、新たな獣医学部が必要だというのは当然のこと。基本的に国家戦略特区の諮問会議で議論します。民間議員の皆さんが議論する。民間議員の皆さんはほぼ一致してつくるべきだとおっしゃっておりました。医学部と歯学部や薬学部、医師や薬剤師や歯科医師が増えていくと保険診療ですから保険の負担に跳ね返っていきますし、国の財政支出にも関わってきますが、獣医師の皆様においては、全部自由診療ですから。国家財政にも保険料にも関わりがないので「完全自由にすべきだ」という議論をされる方もおられた。
しかしその中で何とかスムーズに着地点を見出すために関係者の皆様と話し合っていかなければならない。獣医師会の皆様が一校だったらということで最終的に同意をしていただいたわけであります。プロセスは問題ないわけでありますし、そもそも獣医学部の新設を特区で認めるということについては、自民党政権下においては対応不可としてきた。しかし、民主党政権時代に獣医学部の誘致を速やかにと前向きに格上げしました。格上げしたのは民主党政権だった。その必要性を当時は民主党も認めていたし、さらには民主党政権下の文部科学副大臣も獣医師は不足していると懸念を表明していた。であるのに今になってこんなふうに抵抗勢力の人たちと手を組んで反対するというのは、もう目的は政権批判のために政策を捻じ曲げていると言ってもいいのだろうと思います。

総理の意向ではなく、民間議員の皆さんが“今治市”と認めた

須田) 今日インタビューする直前に、たまたま内閣府にあってこの獣医学部開設の議論をゴリゴリ文科省と交渉していた元役人さんから話を聞くことができました。そしたら加計学園が、安倍さんの友達の学長だと知らなかったと。どういう素性の人か知らずに内閣府がやっている。とそこに影響知力を行使するとは難しかったと思います。

安倍総理) 有りえないですよね。前次官が私の意向かどうかということは、確かめようと思えば確かめられる。「確かめられない」と言っていましたが。課長だったら確かめようがありませんが。次官であれば「どうなんですか?」と大臣と一緒に私のところに来ればいいじゃないですか。

須田) その間、何回か会っているのですよね? 文科大臣と一緒に。

安倍総理) 大臣とは会っていますが、次官と会ったかどうかは覚えておりませんが、他の省ではよくありますよ。霞ヶ関、永田町にしろ「総理の意向ではないか?」という言葉は飛び交います。その中で「どうなのですか?」と大抵は皆さん聞きに来ます。こちらも話を聞きます。相手の議論が正しければ「そうですね」と申し上げることがありますし、「そんなことはないでしょう」と申し上げることもあります。大切なことはしっかり議論していくこと。当然内閣府と文部科学省が激しい議論をしたと思います。国家戦略特区という岩盤規制に穴を空けることにおいては、そういう特区をつくっていくか、どの地域を認めるか。今治市を認めるということは民間議員の皆さんが認めました。この民間議員の皆さんは怒っていますよね。まるで『総理の意向』で決めたかの如く言われるのは、極めて失礼な話。民間議員の皆さん全員に、私は「獣医学部を認める」だと一言もいっていない。まさにその皆さんが真剣に議論をして、今治市にも足を運んで“ここ”と決めた。そう決めたからには関係の省庁に内閣府の皆さんが根回しをして、議論をして。最終的には三省の大臣が認めた。そこには事務次官もいる。そこで認めておいて、どういうことかなあと。
なぜそこで反対しなかったのか不思議でしょうがないです。

各大臣が集まって決定した加計学園

須田) 総理ってもっといろんなことができるかなと。変な例えをしちゃいますけど、暴力団組長みたいに「やっとけ」と言ったらすぐにやるみたいな。そうではないのですね。

安倍総理) まったくそんなことはないですよ。

東島) 変な例えです(笑)

安倍総理) まったくそんなことはなくて、特に国家戦略特区のように民間議員の皆さんが入っていただいて議論をしてもらうことについてはお任せをして、私は「岩盤規制に穴を空けろ、しかもスピード感を持ってやれ」という指示は常にしていますが、「どれをやれ」というのはまさに民間議員の皆さんが決定をし、どのように認めていくかは省庁間で白熱の議論をして最終的に決着をしていくと。この問題は最終的に各大臣が集まって決着をした。

須田) 「今さら何だ」ということですよね。

安倍総理) 私は大変驚いておりますが、常に改革を進めようとすると強い抵抗がある。抵抗勢力が政局目当てで妥協したり、利用してはならないと思います。

須田) 構造改革規制緩和というのは第一次安倍政権からずっと進めてきた話ですよね。話を伺っていて、総理大臣と友達になったらあまり得をしないのですね。

安倍総理) かえってこのような批判を受けますね。

須田) そうです。可哀想ですよね。

安倍総理) むしろこの学校はずっと真面目にコツコツやっていて、何回も穴を空けようと努力を重ねてきたと思います。

東島) 今週のゲストは安倍晋三・第97代内閣総理大臣でした。

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      須田慎一郎

      経済誌の記者を経て、フリーのジャーナリストに。週刊誌や新聞などで執筆活動を続けるかたわら、ラジオ、TVの報道番組で活躍中。政界、経済界での豊富な人脈を元に数々のスクープを連発。

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      東島衣里
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      東島衣里
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      1991年1月4日生まれ。
      長崎県出身。
      趣味は読書、料理。
      特技はバレエ、ぱぱっと料理。
      Facebook:東島衣里

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