1月16日のゲストは、一般社団法人「リヴオン」代表理事の尾角光美(おかく・てるみ)さんでした

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【スタッフMの番組の報告】

コロナ禍、と呼ばれるようになって早3年だそうです・・・。たしかに、マスクも飲食時のパーテーション、アルコール消毒、検温も、当たり前な光景になりましたよね。でも、これだけ長期に渡り、私たちの生活を脅かすこの
ウィルスによって、大切な家族や友人を失くされた方にとっては、耐えがたい時間だったと思います。

喪失感、孤独、そうした言葉では置き換えられない、心の在り様、大切な人を失ったことによって生じる、その人なりの自然な反応のことを、【グリーフ】と言うのを、みなさんはご存知でしょうか・・・。
身近な大切な人を失ったショックで何も感じられなくなったり、自分や他人に対して怒りの感情が沸いてきたり、
時にはうつ状態に陥る方もいるそうです。そうした方々をサポートすることを「グリーフケア」と呼ぶんです。

今回の「阿部亮のNGO世界一周!」は、そうした「グリーフケア」が当たり前の社会を目指して、2009年から
活動を続ける、一般社団法人「リヴオン」代表理事の尾角光美(おかく・てるみ)さんをゲストにお迎えしました。

左:一般社団法人「リヴオン」代表理事 尾角光美(おかくてるみ)さん

冒頭にも書きましたが、コロナ禍で悲しい別れを経験された方はもちろん、人生ではたくさんの別れの場面がありますよね・・・。この「失う」という経験をしたときに生まれる感情、プロセスのことを「グリーフ」と呼ぶそうで、なので死別だけではなく、友人の引っ越しや失恋などで大切な存在を失った時に、何も感じられないほどのショックを受ける、そういうことも「グリーフ」ということなのだそうです。

そう考えると、長い人生、「グリーフ」を経験することは誰にでもありますよね・・・。

実は私も5年ほど前に身内をなくして、その時には、自分がしっかりしないと、という思いから、ものすごい悲しみの中にあるのに、心にあいた大きな穴だけがずーっとある状態で、悲しみも含めた感情のすべてが自分から消えていたのを今でも鮮明に覚えています。

私の場合は、当時小学生だった息子が、落ち込む私の背中をさすってくれたことで、ハッと我に返り、悲しい、嬉しい、ありがとう、のような、たくさんの感情を取り戻すことができました。
ただ、当時「リヴオン」のような団体の存在を知っていたら、どれだけもっと救われたかな・・・と思います。
もし、今回の放送を聴いている方の中で、一人でその苦しみと闘っている方がいらしたら、ぜひ、「リヴオン」の存在は助けになるかもしれません。

尾角さんご本人も、19歳の時にお母様をなくされ、「グリーフ」を経験したそうです。
うつ病を患っていたお母様が、死にたいという言葉を口にする日々の中で、最終的に自殺を選択してしまったとき、尾角さんには安堵の気持ちも芽生えたと言います。でも大切なお母さんが亡くなって安堵なんて・・・、と自分を責めたりしていたとき、「安心するのも自然なんだ」と気づいて、自分のように喪失感からうまく立ち直れない人たちをサポートできないか、と、今の「リヴオン」の立ち上げにいたったのです。

尾角さんのお話で、とても心に沁みたのが、「お母さんが亡くなって、感情がなくなったある日、洗濯物をたたんでいたら、この洗濯物をたたんでくれていた人はもういないんだ・・・と思ったら、悲しいという気持ちが湧いてきた」という言葉でした。

あたりまえの光景がある日突然失われたとき、存在の大きさに気づかされて、やっと、感情が芽生えてくるものなのかもしれませんね。

グリーフを抱えた人に、尾角さんたちが寄り添い、ありのままを受け入れて、その人たちが回復し、自立と成長していく姿を見届けてくれているんです。

身近な人の死を実感できない状況を、「あいまいな喪失」として、「リヴオン」ではなくした実感がわかない感情にきちんと名前をつけてあげる活動もしています。喪失を大事にするために、亡くなった人に改めて手紙を書いたり、その人に関係する記念日を自分なりに大事に過ごしたり、さまざまな行動を勧めているそうです。
「つどいば」という名前で、大切な人をなくされた方々が語り合う場も設けているんです。

コロナ禍の昨年4月には、クラウドファンディングで資金を募り、冊子「コロナで死別したあなたへ」を1万冊制作したといいますから、活動の裾野がどんどん広がっているのがよくわかります。

新型コロナで大切な人を失った方にとっては、失う悲しみに加えて、最期を十分に一緒に過ごせなかったり、葬儀にも参列できなかったりと、やるせない気持ちでいっぱいだと思います。そんな方々はなおさら、この「あいまいな喪失」に苦しんでいる、そこで、尾角さんはこの冊子を遺族の方へ無料配布したり、医療従事者の方などにも
1000円で販売してきました。

コロナ患者さんのケアをされていた医療従事者さんからの問い合わせも多いということで、コロナと闘うすべての方の心に響く冊子なことがよくわかりました。

今もなお、コロナウィルスという未知の病に振り回されている私たち人間。医学が進歩して、病気そのものの治癒はできたとしても、病で大切な人を失ったときの心の大きな喪失感を治癒する薬はありません。
だからこそ、尾角さんたち「リヴオン」のような団体の、人の心に寄り添う活動が、明日を生きる誰かの助けになっているのでしょうね・・・。

尾角さんは最後に大切な方をなくされた方へのメッセージとして「自分なりの形で、なくした人にもう一度思いを伝えられるなら、どう伝えるか、思い出を訪ねてみようという気持ちを希望に持って・・・」とおっしゃていました。

大切な人への大切な気持ちを、ゆっくりじっくり思い出せるように、失った感情が戻ってくるその日まで、一緒に寄り添ってくれる素敵な団体、一般社団法人「リヴオン」。こんな混沌とした社会だからこそ大切な活動です。
ご興味のある方は、ぜひ、ホームページをご覧ください。

https://www.live-on.me/


次回の放送もお楽しみに・・・。