6月20日のゲストは前回に引き続きNPO法人「ユース・ガーディアン」代表の阿部泰尚さんでした

  • LINEで送る

【スタッフMの番組報告】

前回6月6日の放送、みなさんいかがだったでしょうか…。
「いじめ」と一言で語るには、あまりにもその内容の複雑さ、巧妙さに、聴いた方の立場でいろいろな思いが込み上げてきたのではないでしょうか。

もはや凶悪犯罪ともいえる悪質ないじめが、今この日本で起きているということを、私も親として、自分事として聴いた20分でした。

今回も前回に引き続き、いじめ問題の解決に取り組むNPO法人「ユース・ガーディアン」代表の阿部泰尚(ひろたか)さんをゲストにお迎えしました。

前回、探偵業をメインとする阿部さんが、無償でこの「いじめ」という問題に向き合ってきたお話を伺いましたが、今回は2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」がいじめの現場でどう役に立ち、何が変わったのかまた、我が子がいじめを受けている…そう悩んでいる親御さんの助けになるような、親としての心がけもたくさん
教えていただきました。

左:NPO法人「ユース・ガーディアン」代表の阿部泰尚(ひろたか)さん

     

ところで、みなさんは「いじめ防止対策推進法」というものをご存知でしょうか…。
お恥ずかしながら、私はこういう法があることを放送を聴くまで知りませんでした。
どういったものかと言いますと、学校にいじめの防止のための取り組みや早期発見、いじめ対処へのあり方などを
定めるもので、いじめを許さない環境づくりを目指した基本方針が記されているのです。

しかし阿部さんによりますと、この「いじめ防止対策推進法」は実際のところいじめの現場であまり役に立っていないのだそうです。せっかく法まで施行したのに実に残念な話ですよね。

問題なのは、国がこうしたガイドラインを定めても、我が市では・・・とか我が校では・・・と、勝手な法の解釈をするところがほとんどだということです。

例えば、重大ないじめを目撃したら各都道府県の首長に報告する義務があると定められていても、2019年ではいじめの認知件数50~60万件のうち、重大事態として報告されたのは500~600件でした。これはいじめ全体の0,001%にしか当たらず、どう考えても少なすぎる、つまり、実際には色々な理由がつけられて、重大事態という認定はほぼされていないのでは…という話でした。

私も息子が幼稚園、小学校、中学校、高校と成長していく中で、様々な問題に対応する学校側の対応を見てきましたが、総じて、「できるかぎり問題は隠したい」という姿勢が根底に強くあるのを感じてきました。
対応はするけれど、責任は学校側にはない、という考えだけ明確にしておきたいのでしょうか…。

阿部さんも「個々の先生と話すと親身になって理解してもらえても、集団になると隠蔽体質になっていき、対応してもらえなくなる」とおっしゃていましたが、いじめられて傷ついて、さらに学校側に理解してもらう闘いも待っているのが現実だとすると、何のための誰のための「いじめ防止対策推進法」なのか、疑問が残ります。

番組の後半で阿部さんから、「自分の子供がいじめられているのでは…」ということを親が早期に気づくために
必要なこととして、『とにかく子どもの様子をよく見てあげて、普段との差がないか気をつける』とありました。

この話は私自身も背筋がピーンと伸びました。
なんでも手を貸さねばいけなかった幼少期と比べて、自分でなんでもできてしまう小学校高学年くらいから、子供の話を聞くとき、きちんと膝をつきあわせてじっくり・・・という聞き方なんて全然してこなかったと思います…
夕飯の支度をしながら、テレビを見ながら、スマホをいじりながら・・・、そんな聞き方ばかりでした。

子どもからのSOSを一番最初に見つけられるはずの親がこれではダメですよねー。猛省です。
日頃からきちんと子どもの話に耳を傾けることから、いじめの早期解決のスタートなんだと気づかされました。

そして悲しくも、自分の子どもがいじめに悩んでいることを知ったら、まず、そのいじめに関しての≪いつ、どこで、誰と、何を≫の4つのWを、親がきちんと整理してから学校へ相談するということが大切なんだそうです。
ここでも親がきちんと子どもの話に耳を傾け、情報を整理できているかが問われるのですね。

いじめにあったことで、深い心の傷を負ってしまう子どもたちもたくさんいます。親として、世間体とか周囲の目を気にする以前に、専門家の手を借りたりして、治療的アプローチを取り入れたケアをしていくことも大切なんだとわかりました。

「多数が個をいじめる」それが、日本のいじめの現状です。
その理論で行くと、私も含め多くの親御さんにとって、我が子がいじめの被害者になる確率よりも、加害者になってしまう確率の方が多いのです…。

そのことを肝に銘じたうえで、いくつになっても子供とはきちんとコミュニケーションをとって、悪いことをしたら謝るという当たり前のことを、まずは親が態度で見せられるようになっていないとですね…。

「いじめ問題のプロを育てたい」というのが阿部さんの今後の目標。
探偵業で忙しい阿部さんも、いじめ問題に関しては無償で、日夜取り組んでいます。
日本も海外のように、ボランティアではなく職業としていじめ問題を解決する人たちが増えてくれば、いじめの数も対応のあり方も大きく変わっていくかもしれませんよね。

2週に渡って伺った、現代日本に根強く残る「いじめ」の問題。
阿部さんのお話から、大人も子どもも、私たちひとりひとりの行動が少し変わるだけで、その勇気が少し持てるだけで、明日は変えられる、そんな気持ちになりました。

阿部さんが書いた「いじめを本気でなくすには」という書籍も角川書店より発売中です。是非手に取ってみてください。

阿部さん率いるNPO法人「ユース・ガーディアン」の詳しい活動をお知りになりたい方は
http://ijime-sos.com/

来週の放送もお楽しみに!