5月23日のゲストは五常・アンド・カンパニー株式会社 創設者で代表執行役の慎泰俊(シン・テジュン)さんでした

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【スタッフMの番組報告】

先日、高校3年生の息子が18歳の誕生日を迎えたのですが、みなさんもご存じの通り、今年度から18歳はもう「成人」なんですよね…。飲酒、喫煙などは従来通り20歳からですが、クレジットカードを持ったり、自分で口座を開いたり、ローンを組んだりできちゃうんだそうです。

まだ毎月のお小遣いですら、きちんと管理できていない浪費癖のひどい(ここに書ききれないほどひどいことだらけです(泣))息子が、制度的には成人だなんて…。そう思っている親御さんも多いのではないでしょうか。

こんな風に18歳になっただけで、社会の色々な権利を得られる仕組みの日本みたいな国もあれば、世界には10億人を越える人々が、銀行口座を持つことができず、ビジネスに必要な金融サービスを受けられていないという現実もまた存在するのです。

今回のNGO世界一周!は、そうした途上国の低所得者層に向けて、小口の金融サービス「マイクロファイナンス」を提供し、貧困から抜け出すためのサポートをしている企業、五常・アンド・カンパニー株式会社の創設者で、代表執行役の慎泰俊(シン・テジュン)さんをゲストにお迎えし、様々な取り組みについて伺いました。

右:五常・アンド・カンパニー株式会社 代表執行役 慎泰俊(シン・テジュンさん)

      

マイクロファイナンス、というのは文字通り、マイクロ=小口の、ファイナンス=金融、という意味で、慎さんがこれに関わるようになったきっかけはご自身の経験からくるものでした。

慎さんは日本生まれ、日本育ちなのですが、朝鮮籍で日本国籍を持たないため、パスポートがないという理由で出入国時、いつも空港で不条理な思いをしてきました。
自分のような、生い立ちや自分にはどうすることも出来ない環境下で社会的に不利益を被る人を救いたいという思いから、すべての人に金融アクセスを届け、機会の平等を実現しようと行動を起こしたのです。

この番組にゲストでお越しくださる方のエネルギーには毎回驚かされますが、慎さんの自分の経験値からの教訓と社会へ還元していくアイデアというものにも脱帽でした。

慎さんは、はじめは人権弁護士になろうと思っていたそうですが、人権も大切だけれども、資本主義をちゃんと学んでいないと社会変革できないと大学時代に感じ、外資系金融機関「モルガン・スタンレー」に就職し、働きながらマイクロファイナンスファンドを企画するNPO法人を立ち上げて、いまの五常・アンド・カンパニーへと歩んできました。

慎さんのお話の中で、発展途上国で金融機関に口座がない人は4割(16、17億人)、口座はあるけど金融サービスを満足に受けられない人は8割とありました。そんなにも多くの人が…とビックリしました。

そんななか、五常・アンド・カンパニーは2030年までに50か国、1億人に金融サービスを届けることを目指しているそうです。こういった取り組みは途上国だけでなく、世界中に幸せが届きますよね。

五常・アンド・カンパニーが融資する主なターゲットというのも面白くて、お客さんのほとんどは女性なんだそうです。というのも、途上国の農村に暮らす女性は移動が難しいので、お母さんがそこでお金を稼いで、共働きになることで、家庭の意思決定もバランスがとれて、子供たちの教育にもお金が回るようになるんだそうです。

ただやみくもに融資するのではなく、貧困に苦しむ家庭の全員にお金が回るための効率的な融資の仕方を考え抜いているところが凄いです!

これも、新しく仕事をする貧しい村で一緒に暮らしてみてから、どういう融資をするかを決めているという慎さんのスタイルから生まれたものなのでしょう。なかなか誰も思いつかないアイデアですよね!

わかりやすい例として慎さんがあげていたのが、ニワトリは500円くらいで買えて、卵を200個産むので、100羽買えば20万円くらいの収益になる、そのお金でミシンを買って手工業をさせていくというものでした。

ニワトリから手工業へつながっていくとは…、自分でお金を稼ぐ大変さ、喜びを体感できることで、途上国の人々の生活の質だけでなく、心も豊かになっていくんでしょうね。慎さんの温かさが垣間見られました。

五常・アンド・カンパニーのお客さんのほとんどが日本円で1日200円から600円で暮らす人たちなんだそうです。日本のサラリーマンのランチ代の平均が、ワンコイン=500円と言いますから、そのお金で1日暮らさねばならない人たちがこんなにいると思ったら、日本人がいかに恵まれているかわかります。

慎さんから見た日本という国は、「人は親切で、暮らしやすいけれど、制度としてはマイノリティがやんわりと排除されていく国」というものでした。
この言葉、とても重いですよね。

生い立ちなどから不条理さを感じた慎さんだからこそ見えた日本の景色、そしてその思いが世界の貧困層でビジネスを続けていこうという今の活動につながったことがよくわかりました。

五常・アンド・カンパニーという企業名の由来は、二宮金次郎の「五常講」からきているそうです。
五常講とは、お金の貸し借りの過程で「仁」の心を持って分度を守り、「義」の心を持って正しく返済し、「礼」の心を持って恩に報い、「智」の心を持って借りた金を運転し、「信」の心を持って約束を守る、という【仁義礼智信】という、二宮金次郎の教えです。

慎さんが海外で事業をするにあたり大切にしていること、それがこの企業名からもよく伝わってきました。
古き日本の教えを私たちも忘れてはいけませんね。

来週も引き続き、慎泰俊(シン・テジュン)さんにたっぷりお話を伺います。どうぞお楽しみに!