• 2023年07月11日

    魅力溢れる甲斐荘楠音の全貌

    東京ステーションギャラリーで開催中の 「甲斐荘楠音の全貌」を観てきました。

    甲斐荘楠音は、大正期から活躍した日本画家であり、
    戦後は、映画界で数々の作品を手掛けた人物です。


    1997年に初めての回顧展が行われて以来の回顧展。
    2021年に東京国立近代美術館で行われた「あやしい絵展」で
    甲斐荘楠音への注目が高まる中での開催です!

    01_haru.jpg 《春》1929年、メトロポリタン美術館、ニューヨーク
    Purchase, Brooke Russell Astor Bequest and Mary Livingston Griggs and Mary Griggs Burke Foundation Fund, 2019 / 2019.366


    前回、回顧展が行われたときは、
    甲斐荘の日本画家としての展覧会になったそうです。

    映画界でも大きな活躍をしたことが分かっていても、
    簡単にしか紹介できなかったとのこと。

    当時は、データベースなどもなく、
    映画などの資料を渉猟するのが難しかったそうです。

    1997年を思い返すと納得ですが、
    インターネットやデータベースの発展が、
    美術に関する研究の進展や、展覧会の充実にも繋がっているんですね。

    PSX_20230704_202600.jpg

    今回の展覧会は、企画が進む中で、
    ご親族から、甲斐荘が世に出たきっかけになった「横櫛」を含め、
    大量の作品の寄贈があったこと、

    PSX_20230704_203528.jpg また、東映から甲斐荘が手がけた衣裳が出てきたこともあって、
    まさしく全貌というにふさわしい展覧会になったそうです。

    いろいろなタイミングが重なった奇跡の展覧会。

    一人の人物が、興味と情熱を絵、そして映画に注いでいく様を、じっくり追える空間です。

    PSX_20230704_202431.jpg ご家族からの資料も大量で、
    作品の下絵やスケッチなどを並べて観ることができます。

    PSX_20230704_202123.jpg 完成した作品では、髪型が変わっています!

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    梅蘭芳の絵葉書や、スクラップブックなどは、
    画家の手によるデータベース。

    PSX_20230708_143213.jpg これも、インターネットのない時代に、力を発揮したそうです。


    そして、圧巻なのが、2018年に発掘された、甲斐荘楠音が携わった映画の衣裳の数々。
    現在、およそ250作に携わったことが分かっています。

    l0dpxf.jpg
    昭和33年に、観客動員数は11億人を超えたそうで、
    そんな映画黄金期時代劇の衣裳は、
    前半は時代劇東映の甲斐荘、
    後半は、日活の森英恵という傑出した才能によって彩られていたんだとか。

    PSX_20230704_203038.jpg 雨月物語では、アカデミー賞にノミネートもされています。

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    まさに甲斐荘楠音の全貌、多彩な仕事ぶりをじっくり味わえる
    「甲斐荘楠音の全貌」は、
    東京ステーションギャラリーで、8月27日(日)まで開催中です。

    02_nijinokakehashi.jpg 《虹のかけ橋(七妍)》1915-76年、京都国立近代美術館


    ※写真は、主催者の許可を得て掲載しています。

  • 2023年06月25日

    今だからこそ観られる風景画

    泉屋博古館東京で開催中の「特別展 木島櫻谷―山水夢中」。

    近代の京都画壇を代表する存在として再評価されている日本画家、
    木島櫻谷(このしまおうこく)の山水画がたっぷり味わえる展覧会です。


    PSX_20230624_175711.jpg
    木島櫻谷は、戦後、忘れられた時期もあったものの、再評価が進んでいます。
    これまでは、動物画が注目されてきたそうですが、
    山水画も独特の魅力に溢れています。

    PSX_20230624_175823.jpg
    木島櫻谷は、20代半ばから30代半ばにかけて、毎年国内各地へ写生旅行に出かけていて、
    そこで、観たものを、写生帖に描いていました。

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    感動すると、漢詩を詠むなど、メモや感想、驚いたことも書きつけられた旅日記です。

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    木島櫻谷の死後、長持に保管されてきた約600冊の写生帖の中から、
    40冊を修理し、データベース化する事業が行われ、今回の特別展にも繋がったそうです。

    PSX_20230625_132407.jpg 櫻谷の写生帖は、自ら紙を継ぎ足して作られていることなどもあって劣化が進み、
    ページがくっついてしまい、開くことすらできないものもあった中、
    根気強く修復作業が行われました。

    その成果は、https://okoku-shaseichou.com/sketchbook/ で、観ることができます。


    こうした写生を基に作り上げられた、木島櫻谷の山水画。

    PSX_20230624_175923.jpg 屏風や壁画など、大きなものも多く、見応えがあります。

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    私のお気に入りは、「飛瀑」という滝を描いた一枚。

    PSX_20230624_180143.jpg 解説を読んで気付いたのですが、滝自体を描くことなく、
    周囲を描くことで、白い水しぶきの飛ぶ滝の様子を表現しています。

    あまりに自然に滝が描かれていますが、
    よく見ると、滝自体は描かれていない、不思議さの虜になりました。


    また、木島櫻谷が幼馴染に宛てた絵葉書もありました。
    受け取った幼馴染が、大事にアルバムに仕立てていたそうです。

    PSX_20230625_132506.jpg 1枚ずつ丁寧に扱われていて、とても大切にしていたことが分かり、
    温かい気持ちになりました。


    ちなみに、図録にも、写生帖が付録としてついていて、
    木島櫻谷の世界を手に取って感じることができます。


    木島櫻谷の山水画を堪能できる「特別展 木島櫻谷―山水夢中」は、
    泉屋博古館東京で、7月23日(日)までです。


    ※写真は、主催者の許可を得て掲載しています。

  • 2023年06月19日

    恐竜図鑑で太古の世界へタイムスリップ

    上野の森美術館で開催中の
    特別展「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」を観てきました!

    PSX_20230603_165249.jpg 我が家の3歳の息子は恐竜が大好き。
    私も、小さい頃に恐竜が好きだったことを思い出して、再び恐竜熱が高まっているので、
    とても楽しみにしていました。

    PSX_20230603_165502.jpg 特大の図鑑が並ぶようにデザインされた入口から、ワクワクした気分が高まります。

    PSX_20230603_170406.jpg 恐竜の展示というと、化石を思い浮かべる方も多いと思います。

    この展覧会を企画した神戸芸術工科大学教授の岡本弘毅先生は、
    この特別展「恐竜図鑑」では、生体復元図、
    発掘された恐竜の化石を、想像で補いながら絵にしたものに敢えて着目したと言います。

    PSX_20230603_170002.jpg レオン・ベッケル
    「1882年、ナッサウ宮殿の聖ゲオルギウス礼拝堂で行われた
     ベルニサール最初のイグアノドンの復元」
    1884年、ベルギー王⽴⾃然史博物館、ブリュッセル


    先生によると、恐竜が発見されたのは、今から約200年前。

    恐竜が発掘されたのとほぼ同じ時期に始まった古生物復元画(パレオアート)の歴史を辿ることで、
    恐竜のイメージがどう変わってきたのかが分かります。


    史上初めて描かれた古生物の絵と言われているのが、
    「太古のドーセット」という、1830年の作品です。

    PSX_20230603_172333.jpg ジョージ・シャーフ(ヘンリー・デ・ラ・ビーチによる) 「ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)」

    魚竜によって、首長竜が嚙みつかれた瞬間を描いています。


    PSX_20230603_165610.jpg 恐竜の姿が変わっていったことが象徴的に分かるのが、イグアノドン。

    PSX_20230603_172445.jpg ジョン・マーティン「イグアノドンの国」
    1837年、ニュージーランド国⽴博物館テ・パパ・トンガレワ、ウェリントン


    初期のイグアノドンは、地べたを這い回る姿で描かれ、鼻の上にツノがあります。

    DSC_4049~2.JPG (向かって左側がイグアノドンの絵です。)

    その後、ツノだと思われていた骨が、指のスパイクだとされるなど、形が変わって今の姿に至ります。



    特別展「恐竜図鑑」では、展覧会オリジナルキャラクターの
    「イグアノドン3きょうだい」になって、
    時代によって姿が大きく変わってきたことなどを説明してくれます。

    お子さんにも、親しみやすく分かりやすい展覧会ですので、
    夏休みの自由研究にもおすすめです!

    さらに、南沙良さんが担当する音声ガイドも、
    スマートフォンがあれば無料で聴くことができ、
    理解をより深めることができます。


    現代のパレオアートは、研究との密接な連携で、緻密に描かれています。

    PSX_20230603_174031.jpg


    PSX_20230603_174143.jpg 小田隆「篠山層群産動植物の生態環境復元画」


    最新の研究成果が、分かりやすく、格好良く楽しめるパレオアート。
    その時代の研究を映す鏡でもあります。

    パレオアートの歴史を余すことなく知ることができる特別展「恐竜図鑑」は、
    上野の森美術館で、7月22日までです。

  • 2023年05月09日

    東京駅で華やかな大阪の日本画を

    先日お送りした特別番組「まだ間に合う! ゴールデンウィーク」でもお話しした、
    東京ステーションギャラリーで開催中の「大阪の日本画」。

    IMG_0815.jpg 近代大阪の日本画が勢揃いする初めての展覧会。
    これは、美術史を書き換えるかもしれない、画期的な催しなんです!

    明治以降の日本画というと、東京や京都が知られてきたのですが、
    今回の展覧会は、タイトル通り、
    大阪で独自に育まれた、華やかな日本画が一堂に集結しています。

    IMG_0789.jpg 北野恒富「護花鈴」 大正前期 大阪中之島美術館 ※5/14まで展示

    IMG_0797.jpg 山口草平「人形の楽屋」 大正後期~昭和初期 大阪中之島美術館 ※5/14まで展示

    大阪にはパトロンが多く、展覧会に出展する必要がなかったため、
    画壇からすると、知られざる名品が多いのだそう。

    その代わりに、パトロンと楽しむ教養、
    そして、求めに応じてその場で絵を描く速写力が求められたと聞き、
    文化の違いに驚きました。

    大阪では、美術史と異なる評価軸の中で、豊かな美術が作られていたんですね。


    お稽古で絵を習う女性も多く、女流画家が多いのも特徴です。
    今回は、出展されている画家66人の内、13名が女性なんですって。


    IMG_0785.jpg 生田花朝「四天王寺聖霊会図」 1927年 大阪城天守閣 ※5/14まで展示


    IMG_0801.jpg 木谷千種「浄瑠璃船」 1926年 大阪中之島美術館 ※5/14まで展示


    お話を伺うと、準備してきた学芸員の方々の熱量がものすごく、
    より多くの作品を見てもらおうと、展示替えもたっぷりで、
    前期と後期で7割の作品が変わるそう。

    このブログでご紹介している写真も、すべて展示替えの対象です。

    IMG_0796.jpg 菅楯彦「舞楽青海波」 1917年 倉吉博物館 ※5/14まで展示


    展覧会オリジナルグッズも素敵で、担当学芸員の方も自腹で買ったとか。
    カラーページが204ページに及ぶ、分厚い図録も必携です。


    個人的には、吉川英治『三國志』の挿絵を描いた
    矢野橋村の大作が見られるのも嬉しくて!

    私は、挿絵でしか矢野橋村を知らなかったのですが、
    実は、大きい画面の絵が多く、
    日本的要素を含んだ文人画、新南画を提唱するなど、
    「大阪の日本画」を引っ張っていた一人だったそうです。


    IMG_0783.jpg 矢野橋村「湖山清暁」 1913年 個人蔵(愛媛県美術館寄託) ※5/14まで展示

    その他、三国志関連で言うと、竹林の七賢の絵がありました。

    IMG_0790.jpg 姫島竹外「竹林七賢」 1899年 泉屋博古館東京 ※5/14まで展示

    評価が定まっていない作品が多いため、先入観なく楽しむことができる「大阪の日本画」。

    大阪中之島美術館で行われた際も大盛況で、
    アンケートを見ると、好きな絵がバラけているそうです。

    ぜひあなたも、お気に入りの一枚を見つけてみてくださいね。

    「大阪の日本画」は、東京ステーションギャラリーで6月11日(日)まで開催中です!

  • 2023年05月06日

    GWおすすめお出かけスポット

    5月4日12時からお送りした特別番組
    「まだ間に合う!ゴールデンウィーク」をお聴きいただき、ありがとうございました。

    荘口彰久アナウンサーとお互いにご紹介したのは、

    ・ホテルW大阪

    ラストマン・イン・ザ・ダーク

    FUJI GATEWAY


    ・東京ステーションギャラリー「大阪の日本画」

    IMG_0809.jpg ・新国立美術館「ルーヴル美術館展 愛を描く」

    PSX_20230309_160802.jpg東京ミステリーサーカス

    DSC_3377~2.JPG そして、トラベルライターで編集者の星裕水さんに教えていただいたのは、

    HAKONATURE BASE

    銚子電鉄

    SEASIDE CINEMA 2023 でした!

    気になるものがあった方、radikoタイムフリーで、4月11日までお聴きいただけますので、
    ぜひチェックしてみてください。

    https://radiko.jp/#!/ts/LFR/20230504120000



    また、昨日5月5日 こどもの日に配信したオンラインイベント
    「こどもたちにつなごう! 豊かな未来」。

    こちらのURLから、YouTube Liveでご覧いただけます。
    https://www.youtube.com/watch?v=w4VaUL1Cog8

    第70回 産経児童出版文化賞 大賞受賞作
    あまんきみこさん『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』を生で朗読しましたので、
    ぜひ聴いてみてください。


    また、ニッポン放送賞を受賞した、
    村上しい子さん『なりたいわたし』の朗読番組も放送されました。

    「久間田琳加 よみきかせのせかい」
    https://radiko.jp/#!/ts/LFR/20230505120000

    お子さまと一緒にお楽しみいただけたら幸いです。



    また、5月4日に放送された「井出智 命の声~HPV・子宮頸がんを伝えたい~」

    Podcastでもお聴きいただけます

    井出さんが、伝えたいと願い、力を振り絞ってくださった声、ぜひお聴きください。

    子宮頸がんの予防のために、予防接種と検診の大切さをお話しされています。

    男性にもワクチンがあること、
    HPVウイルスは男性のがんにも関係があると言われていることを、
    私もこの番組で初めて知りました。

    忙しい方も多いと思いますが、健康が第一、ぜひ検診を受けてください。

    井出智さんのご冥福をお祈り申し上げます。

プロフィール

箱崎みどり

東京都生まれ。2011年ニッポン放送入社。 東京大学大学院修士課程修了(修士論文のテーマは「日中戦争期における「三国志」ブーム」) 趣味は、読書、プロ野球観戦、お笑いを見ること。特技は遠泳。


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